質問主意書

第211回国会(常会)

質問主意書

質問第三号

国家防衛戦略に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和五年一月三十日

石垣 のりこ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   国家防衛戦略に関する質問主意書

 令和四年十二月十六日に国家安全保障会議及び閣議において決定された国家防衛戦略について、以下質問する。

一 国家防衛戦略においては、「国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を負う国連安保理常任理事国であり、核兵器国でもあるロシアが、ウクライナを公然と侵略し、核兵器による威嚇ともとれる言動を繰り返す、前代未聞といえる事態が生起している。これは戦後国際社会が築いてきた国際秩序の根幹を揺るがすものであり、こうした欧州で起きている力による一方的な現状変更は、インド太平洋地域でも生起し得る。」と記述されているが、ここでいう「インド太平洋地域」の地理的範囲を明示されたい。答弁に当たっては、日米安全保障条約にいう「極東」の政府統一見解(昭和三十五年二月二十六日衆議院日米安全保障条約等特別委員会における岸信介内閣総理大臣答弁)において、「「極東」でありますが、一般的な用語としては、別に地理学上正確に画定されたものではありません。」とした上で、「実際問題として両国共通の関心の的となる極東の区域は、この条約に関する限り、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して、武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域ということになるわけであります。こういう区域としては、大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれるということであります。」と明確にその地理的範囲を明示していることを踏まえ、「インド太平洋地域」の地理的範囲についても具体的に明示されたい。

二 前記一で挙げた国家防衛戦略の記述において「インド太平洋地域でも生起し得る」とされている「力による一方的な現状変更」とは、具体的にどのような行為を念頭に置いたものか。国際連合憲章(昭和三十一年条約第二十六号)第二条4が禁ずる国際関係における武力による威嚇又は武力の行使や、国際連合総会決議二九/三三一四(侵略の定義に関する決議)第三条に掲げる行為を念頭に置いたものか。明確に示されたい。

三 政府は、前記一で挙げた国家防衛戦略の記述において「インド太平洋地域でも生起し得る」とされている「力による一方的な現状変更」を実施する主体として、国際連合安全保障理事会常任理事国であり、かつ、核兵器の不拡散に関する条約(昭和五十一年条約第六号)上の「核兵器国」である国家を念頭に置いているのか。同記述は、国際連合安全保障理事会常任理事国であり、かつ、核兵器の不拡散に関する条約上の「核兵器国」である中華人民共和国を念頭に置いたものとも受け止められるところ、政府の見解如何。

四 国家防衛戦略においては、「ロシアがウクライナを侵略するに至った軍事的な背景としては、ウクライナのロシアに対する防衛力が十分ではなく、ロシアによる侵略を思いとどまらせ、抑止できなかった、つまり、十分な能力を保有していなかったことにある。」と断定している。これは、政府として、ロシアがウクライナへの侵略を開始した時点でウクライナが保有していた防衛力を定量的に把握した上で、当該防衛力が、ロシアによる侵略を思いとどまらせ、抑止することのできる水準に達していなかったと判断したことを踏まえた記述か。そうであれば、定量的に把握した結果を示されたい。また、政府として、ウクライナがロシアによる侵略を思いとどまらせ、抑止するためには、どの程度の防衛力であれば「十分な能力」であったと考えているのか。明確に示されたい。

  右質問する。