質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第八一号
  令和四年十二月二十三日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員小西洋之君提出国葬儀の法的本質及び法的効果並びに法的根拠等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出国葬儀の法的本質及び法的効果並びに法的根拠等に関する質問に対する答弁書

一について

 故安倍晋三国葬儀を実施したことのみをもって、御指摘の「国民や国会などの国家機関などは安倍元総理に敬意や弔意を表したこと」又は「これら国民等が敬意や弔意を表していると擬制したこと」にはならないと考えている。

二について

 お尋ねについては、国の儀式として国の名において行う葬儀を実施したことが、直ちに国民一人一人や国会が弔意を表したことを意味することにはならないという趣旨である。

三について

 御指摘の岸田内閣総理大臣の発言及び答弁については、故安倍晋三国葬儀が、国の儀式として国の名において行う葬儀であり、我が国として故人に対する敬意と弔意を表す儀式であることを踏まえ、「国全体」という表現を用いたものである。

 後段のお尋ねについては、お尋ねのとおりである。

四について

 御指摘の答弁における「国の儀式」は、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四条第三項第三十三号に規定する国の儀式を指すものである。

 また、故安倍晋三国葬儀は、国の儀式であり、国が主催する葬儀であることを踏まえ、御指摘の答弁においては「国の名において」又は「国として」と述べているところである。

五について

 故安倍晋三国葬儀は、国の儀式であり、国が主催する葬儀であることを踏まえ、御指摘の答弁においては「国として故人に対する敬意と弔意を表す儀式である」と述べているところである。

六について

 国葬儀は、国の儀式として行う葬儀であり、その内容については、その時々の内閣において、様々な事情を総合的に勘案し、その都度ふさわしい内容となるよう検討されることとなると考えている。その上で、故安倍晋三国葬儀については、「国の名において行う葬儀」等と説明しているところであり、御指摘のような「日本国というクレジット」又は「日本国という名義」により行われた葬儀と表現することも可能であると考えている。

七について

 故安倍晋三国葬儀の実施と国民の弔意等の関係については、一についてで述べたとおりであり、また、故安倍晋三国葬儀においては、国民一人一人に喪に服することを求めていないことから、「憲法第十三条が保障する国を構成する国民一人一人の個人の尊厳の尊重及び憲法第十九条が定める思想、良心の自由に抵触する」との御指摘は当たらないと考えている。

八について

 お尋ねのとおりである。

九について

 御指摘の「これら弔意等を表したことになる、または、擬制される法的効果やその法的根拠」はなく、故安倍晋三国葬儀を実施したことのみをもって、「国会や裁判所が安倍元総理に対して弔意等を表したことになる、または、国会や裁判所の弔意等が擬制される」ことにはならないと考えており、また、故安倍晋三国葬儀においては、国会及び裁判所に対して「弔意等を表」すことを求めていないことから、「憲法の定める三権分立に抵触することになる」との御指摘は当たらないと考えている。

十について

 お尋ねの「国葬儀を実施できる直接の法的根拠」の意味するところが必ずしも明らかではないが、閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うこととしたことは、憲法第六十五条及び内閣法(昭和二十二年法律第五号)第四条の趣旨を踏まえたものである。

十一について

 前段のお尋ねについては、お尋ねの「国葬儀を実施できる直接の法的根拠」の意味するところが必ずしも明らかではないが、内閣府設置法第四条第三項第三十三号において内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記されており、国葬儀を含む国の儀式を行うことが行政権の作用に含まれることが法律上明確となっていることから、「国葬儀の実施が行政権に属することの根拠」であると考えている。

 また、後段のお尋ねについては、御指摘の岸田内閣総理大臣の答弁は、御指摘の「一つの根拠」及び「等」という語を含め、憲法第六十五条及び内閣法第四条の趣旨を踏まえ、内閣府設置法第四条第三項第三十三号において同府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記されており、国葬儀を含む国の儀式を行うことが行政権の作用に含まれることが法律上明確となっているという趣旨を述べたものである。

十二について

 閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことは、国の儀式を行うことは立法権及び司法権の作用に含まれるものではなく行政権の作用に含まれること、内閣府設置法第四条第三項第三十三号において内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記されており、国葬儀を含む国の儀式を行うことが行政権の作用に含まれることが法律上明確となっていること等から可能であると考えており、「国民主権や議院内閣制の趣旨に反する」との御指摘は当たらないと考えている。

十三について

 お尋ねについては、国の儀式を行うことは立法権及び司法権の作用に含まれるものではなく行政権の作用に含まれること等からすれば、国葬儀を含む国の儀式について、その実施や内容を決定し、その事務を執行することについては、一義的には行政権がその主体となるものと考えている。

十四について

 政府としては、一般的には、行政権の作用に含まれる事項について、国民の権利を制限したり、国民に義務を課することのない限りは、法律の根拠を必ずしも必要とするものではないと考えている。その上で、閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことが可能であることについては、十二についてで述べたとおりである。

十五について

 閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことが可能であることについては、十二についてで述べたとおりであり、「内閣法第一条に定める行政権の行使と国民主権及び国会への連帯責任の趣旨に反する違憲、違法の行為」との御指摘は当たらないと考えている。

 また、政府としては、故安倍晋三国葬儀の実施について国民や国会の理解が得られるよう、令和四年九月八日の衆議院議院運営委員会及び参議院議院運営委員会、記者会見等の場で故安倍晋三国葬儀の実施の考え方等について説明を行ったところである。

十六について

 お尋ねの趣旨が明らかではなく、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、故安倍晋三国葬儀の実施と内閣法第一条の関係に関する考え方については、十五についてでお答えしたとおりである。

十七について

 お尋ねの件については、令和四年十一月十五日の参議院外交防衛委員会において、政府参考人が「各教育委員会におきまして教職員や児童生徒に黙祷を求めた事実については、調査しておらず把握してございません。・・・今般の国葬儀に際して、教育委員会等が教職員や児童生徒にその意に反して黙祷を強制する法的根拠はなく、そのことにより不利益処分を行うことは違法になると考えてございます。また、山口県で行った職務命令につきましては、弔旗掲揚に関しましては、特定の職務命令が違法かどうかは個別具体の状況によりますために一概には申せませんが、今般の国葬儀に際して、命令に従わなければ処分することを前提として半旗の掲揚を命令することは、法的には裁量権の逸脱と評価されかねないと考えてございます。なお、山口県教育委員会は、今回、一般論として、命令であれば従わなければ処分することがあり得ると述べたにすぎず、今回の命令に関しては元々処分することは想定していないと承知してございます。」と答弁したとおりである。

十八について

 お尋ねについては、「事前の準備によって具体的な新しい外交案件が成果として得られたもの」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の国葬儀の際に参列国との会談において新たに署名した文書や実質的に合意した協定は、アラブ首長国連邦との間におけるもののみである。