質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第七九号
  令和四年十二月二十三日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員小西洋之君提出寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務等に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「これらの事項に係る事態であれば個人に対する権利侵害が生じていると考えられるものを類型化等したもの」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(令和四年法律第百五号。以下「本法」という。)第三条は、社会通念上不当な寄附の勧誘によって個人の利益が害されるおそれがあることを踏まえ、法人等が寄附の勧誘を行うに当たって特に問題となる事項を類型的に掲げ、当該事項に十分に配慮しなければならないことを規定するものである。

二から四までについて

 一についてで述べたとおり、本法第三条は配慮義務を定めたものであるところ、同条各号に掲げる事項を遵守しない寄附の勧誘により寄附が行われた場合については、当該勧誘の態様や当該寄附に関するその他の事情を理由として、民法(明治二十九年法律第八十九号)上の不法行為が成立することがあり得るものと考えられる。

 他方で、個々の事案において、本法第三条各号に掲げる事項を遵守しない寄附の勧誘により寄附が行われた場合について民法上の不法行為が成立するか否かは、様々な事情を考慮して個別具体的に判断されるものであることから、一概にお答えすることは困難である。

五について

 御指摘の「前記二で問題としているケースでは、それぞれの「状態」が生じたことについて、法人等が、そうならないように配慮する義務を果たせていないことになる」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、寄附の勧誘を行うに当たって本法第三条の配慮義務の不遵守があった場合において民法上の不法行為の要件である過失が認められるか否かについては、様々な事情を考慮して個別具体的に判断されるものであることから、一概にお答えすることは困難である。

六について

 本法において法人等が寄附の勧誘を行うに当たって配慮すべき事項が明文で定められていることや本法第三条の規定の内容は、個々の事案において民法上の不法行為が成立するか否かを判断するに当たり参考になるものと考えている。

七について

 本法第三条の規定(第一号に掲げる部分に限る。)を遵守しない寄附の勧誘によりされた寄附の意思表示が民法第九十条の公の秩序又は善良の風俗に反するものとして無効になるか否かについては、様々な事情を考慮して個別具体的に判断されるものであることから、一概にお答えすることは困難である。

八について

 一についてで述べたとおり、本法第三条は、社会通念上不当な寄附の勧誘によって個人の利益が害されるおそれがあることを踏まえ、法人等が寄附の勧誘を行うに当たって特に問題となる事項を類型的に掲げ、当該事項に十分に配慮しなければならないことを規定するものである。また、お尋ねの「行政法上「違法」と評価され、例えば、その是正のために第六条に定める勧告以外の行政指導についてもこれを行い得るのか」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、本法第六条第一項においては、内閣総理大臣は、法人等が本法第三条の規定を遵守していないため、当該法人等から寄附の勧誘を受ける個人の権利の保護に著しい支障が生じていると明らかに認められる場合において、更に同様の支障が生ずるおそれが著しいと認めるときは、当該法人等に対し、遵守すべき事項を示して、これに従うべき旨を勧告することができることとされている。

九について

 お尋ねの「第三条は、「違反」を問うような性質のものではないのか」の具体的に意味するところが明らかではないことから、お答えすることが困難である。なお、令和四年の第二百十回国会における法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案の審議において、同法律案第六条として配慮義務の遵守に係る勧告等の規定を設ける修正をした修正案の提案者(十一についてにおいて「修正案の提案者」という。)からは、修正後の同条について、修正後の同条の要件を満たした場合に勧告、公表及び報告徴収の対象とすることによって、配慮義務が遵守されないことによる支障が拡大することを防止するとともに、勧告をした旨を公表することによって被害を未然に防止することの実効性を図ることができるものと考えている旨の説明がされている。

十について

 お尋ねの「第三条の配慮義務が「遵守」されていなければ、自ずと「当該法人等から寄附の勧誘を受ける個人の権利の保護に著しい支障が生じていると明らかに認められる場合」に該当する」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、法人等による本法第三条の配慮義務の不遵守があった場合において、本法第六条第一項の要件を満たすか否かは、様々な事情を考慮して個別具体的に判断されるものであることから、一概にお答えすることは困難である。

十一について

 お尋ねの「当該勧告を行うことは、その基となった事案や、同様の手法で行われる寄附の勧誘について、不法行為が認定されるべきものであるとの政府の認識を明らかにし、事実上、当該個人の救済を助けることにつながると考えられる」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、九についてで述べたとおり、修正案の提案者からは、修正後の本法第六条について、修正後の同条の要件を満たした場合に勧告、公表及び報告徴収の対象とすることによって、配慮義務が遵守されないことによる支障が拡大することを防止するとともに、勧告をした旨を公表することによって被害を未然に防止することの実効性を図ることができるものと考えている旨の説明がされている。