質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第七八号
  令和四年十二月二十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出事実に反する認知が行われた子の日本国籍喪失に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出事実に反する認知が行われた子の日本国籍喪失に関する質問に対する答弁書

一について

 民法等の一部を改正する法律(令和四年法律第百二号。以下「改正法」という。)による改正後の民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百八十六条は、同条第一項各号に規定する時から七年以内に限り、認知について反対の事実があることを理由として、認知の無効の訴えを提起することができるものとするものであるところ、事実に反する認知により我が国の国籍を取得することがあってはならないことを踏まえ、事実に反する認知がされた場合には国籍の取得は認められないとの従前からの確立した規律を維持することを明らかにするため、改正法による改正後の国籍法(昭和二十五年法律第百四十七号)第三条第三項は、認知について反対の事実があるときは同条第一項を適用しないこととしたものである。

二について

 お尋ねについては、例えば、血縁上の親子関係にない者が認知したなどの理由により、国籍法第三条第一項に規定する要件を備えていないときは、同項に規定する国籍取得の届出は不適法なものとして「不受理」と扱われる。

三について

 お尋ねの罰則の適用状況については把握していないため、お答えすることは困難である。

四について

 御指摘の「偽装認知が増加、悪質化しているという立法事実の提示もない中で、しかも本人に帰責性がない場合も含めて人生の基盤を土台からひっくり返す処分を行う」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国籍法第三条第一項に規定する要件を備えていないときに、我が国の国籍が不正に取得されることはあってはならないものであることから、反対の事実がある認知に基づく国籍取得の届出は効力を生じないとすることは、適切な措置である。

 なお、御指摘の「日本国籍を失うこと」となった者について、法務局においては、日本の国籍を取得するための手続や在京大使館等における所要の手続に係る案内を、その者の身分関係や意向等を踏まえて行う等の取組を行っている。また、その者が退去強制手続を執られることとなった場合でも、個別の事案に応じ、法務大臣の裁量により在留特別許可を与えることがある。

五について

 お尋ねの事例については、反対の事実がある認知により子は日本国籍を取得することはないことから、子の戸籍の記載を全部消す旨の訂正をすることになる。また、父については、認知無効の訴えにより認知が無効とされた場合等には父の戸籍に記載した認知に関する事項の記載を消す旨の訂正をすることになる。