質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第七七号
  令和四年十二月二十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出親の懲戒権の見直しと体罰の禁止に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出親の懲戒権の見直しと体罰の禁止に関する質問に対する答弁書

一について

 児童虐待の相談対応件数の増加の背景には様々な要因が影響すると考えられることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、児童虐待に対する国民の意識の向上、関係機関からの通告の増加等の要因があるものと考えられる。

二について

 平成二十三年の民法改正の際に、民法等の一部を改正する法律(令和四年法律第百二号)による改正前の民法(明治二十九年法律第八十九号。以下「改正前民法」という。)第八百二十二条の規定が削除されなかった理由は、当該規定を削除することによる社会的な影響に対する懸念等を総合的に勘案したことによるものであると認識している。

 御指摘の判断については、当時の社会情勢等を踏まえた妥当なものであったと認識している。

三について

 いかなる行為が、御指摘の民法等の一部を改正する法律による改正後の民法(以下「新民法」という。)第八百二十一条に定める「子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動」に該当するかは、個別の事案における具体的な事情を踏まえて判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である。

 また、お尋ねの「許される「しつけ」と許されない「体罰」との区別」については、当該行為の態様のほか、子の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的、時間的状況等を総合的に考慮して個別具体的に判断する必要があることから、一概にお答えすることは困難であるが、例えば、子を殴るといった行為は、「許されない「体罰」」に該当するものと考えられる。

四について

 親権を行う者が御指摘の新民法第八百二十一条に定める「体罰」に該当する行為をしたときは、当該親権を行う者に係る親権喪失又は親権停止の審判において考慮される事情の一つになり得るほか、当該親権を行う者が子に対し、不法行為に基づく損害賠償責任を負う場合がある。

 また、お尋ねの「支援・保護の施策」については、児童相談所等において、子どもや保護者等に対する養育に関する相談援助を行うほか、子どもの安全確保のため必要と認められる場合には子どもの一時保護を行うことや、児童養護施設への入所措置をとること等により、保護者やその子どもへの支援を行うこととしているところである。

五について

 懲戒権に関する改正前民法第八百二十二条の規定の削除及び子の人格の尊重等に関する新民法第八百二十一条の規定の新設については、法改正の内容や趣旨を広く国民に周知するため、例えば、パンフレットを作成するなどして、分かりやすい広報に努めてまいりたい。

 また、体罰等によらない子育てを推進するため、令和二年に厚生労働省が取りまとめた「体罰等によらない子育てのために」の内容についても、引き続き周知啓発を行ってまいりたい。