質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第七六号
  令和四年十二月二十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出嫡出否認制度の規律の見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出嫡出否認制度の規律の見直しに関する質問に対する答弁書

一について

 民法等の一部を改正する法律(令和四年法律第百二号。以下「改正法」という。)による改正前の民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百七十四条の規定において、同法第七百七十二条の規定により、妻が婚姻中に懐胎した子が夫の子と推定される場合に、子に自ら嫡出であることを否認することが認められていなかったのは、当該規定が制定された当時、子に嫡出否認権の行使を認める場合に母の貞操義務違反が証明されなければならず、それが適切でない等とされたためであると承知している。

 他方で、改正法による改正後の民法(以下「新民法」という。)第七百七十四条第一項の改正により、新民法第七百七十二条の規定により子の父が定められる場合において、子も、当該子が当該父の嫡出であることを否認することができることとなることには、戸籍上、子が夫の子と記載されることを避けるために出生届が提出されないとの事態の発生を防止する意義があると考えている。

二について

 新民法第七百七十四条第三項が、新民法第七百七十二条第一項の規定により子の父が定められる場合において、母は子が嫡出であることを否認することができることとしているのは、子の父は子の母とともに子を養育する者であることから、同条の規定により子の父と定められることは、子を養育する母自身にとっても重大な利害関係のある問題であることに加え、母は、多くの場合、子の利益をよく代弁することができる地位にあるといえることに鑑みると、母に固有の否認権を認めることに合理性があると考えられたためである。

三について

 改正法附則第四条第二項が、子及び母による嫡出の否認に関する規定を、改正法の施行の日(以下「施行日」という。)前に生まれた子についても適用することとしているのは、子が嫡出であることを否認することができる者の範囲を拡大することにより無戸籍者の問題の解消を図るという改正法の趣旨を施行日前に生まれた子にも及ぼすためである。また、同項が、施行日前に生まれた子に係る嫡出否認の訴えに関する新民法第七百七十七条の適用について、改正法の施行の時から一年を経過する時までに嫡出否認の訴えを提起しなければならないと定めているのは、身分関係の安定に配慮する必要があることに加え、施行日前に生まれた子については、施行日前から否認権の行使を準備することが可能であるためである。

四について

 お尋ねのような請求の可否については、新民法第七百七十八条の三の規定の趣旨を踏まえつつ、個別の事案における具体的な事情を踏まえ判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である。

五について

 お尋ねについては、個別の事案における具体的な事情を踏まえ判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である。