質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第七五号
  令和四年十二月二十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出無戸籍者問題の解決に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出無戸籍者問題の解決に関する質問に対する答弁書

一について

 法務省においては、市区町村長等に対し、所管する事務を遂行する過程で無戸籍者の存在を把握したときは、市区町村の戸籍の担当部署に無戸籍者の情報を連絡するよう求め、連絡を受けた市区町村の戸籍の担当部署から、当該市区町村を管轄する法務局若しくは地方法務局又はその支局にこの情報を報告するよう求めている。

二について

 法務省においては、法務局又は地方法務局を通じて、市区町村等と連携して把握した無戸籍者の一人一人に寄り添いながら戸籍に記載されるための手続案内を丁寧に行っており、令和四年十一月十日時点において、平成二十六年以降、法務省が各法務局及び地方法務局から無戸籍者として報告を受けた四千三百二十八名のうち、三千五百三十五名が戸籍に記載されたと承知している。

三について

 民法等の一部を改正する法律(令和四年法律第百二号)による改正後の民法(明治二十九年法律第八十九号。以下「新民法」という。)第七百七十二条第一項後段の規定により、婚姻の成立の日から二百日以内に生まれた子が当該婚姻における夫の子と推定されることとなることには、子の身分関係を早期に安定させ、子の利益を保護する意義があると考えている。

四について

 御指摘の「本当に深刻な事例では、無戸籍児の発生を抑止する実効性は薄い」の意味するところが必ずしも明らかではないが、新民法第七百七十二条第一項前段及び第二項の規定により、婚姻の解消又は取消しの日から三百日以内に生まれた子は、母が子の出生の時までに再婚をしていない場合には、前夫の子と推定されることとなるところ、この場合には、新民法第七百七十四条第一項及び第三項の規定により、子及び母も子が前夫の嫡出であることを否認することができることとなり、その否認権が適切に行使されることによって、無戸籍者問題の解消が図られると考えている。

五について

 御指摘の「推定の及ばない子についても、推定されない嫡出子と同様に、出生届の段階で届出の自由を認め、母による非嫡出子出生届を受け付けることを認める」の意味するところが必ずしも明らかではないが、最高裁判所の判例においては、妻が子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には、当該子については、新民法第七百七十二条第一項前段の推定を受けないものと解されているところである。しかし、そのような推定を受けないことを前提とした出生届を受理することについては、出生届を受け付ける戸籍窓口において、最高裁判所の判例において指摘されているような事情が存在するか否かを的確に判断することが困難であること等の課題があり、慎重に検討する必要があると考えている。