質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第七四号
  令和四年十二月二十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員紙智子君提出全国的な視点に立ったアイヌの経済的及び社会的状況の改善に向けた取組に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出全国的な視点に立ったアイヌの経済的及び社会的状況の改善に向けた取組に関する質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねについては、「極端に低くなっている」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」の報告書(平成二十一年七月)において「歴史的経緯に起因するアイヌの人々と他の日本人との間の生活や教育面での格差」が指摘されているものと承知している。

一の2について

 アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平成三十一年法律第十六号。以下「アイヌ施策推進法」という。)の施行前の平成二十二年から平成二十三年にかけて「北海道外アイヌの生活実態調査」を実施したところであるが、当該調査の報告書においては、「北海道を離れたアイヌの人々のなかには、意識的にあるいは結果として北海道内のアイヌ・コミュニティーとのつながりを失った人々が少なくなく、・・・道内のアイヌの人々からの調査対象候補者の紹介が思うような広がりを見せなかった。また、・・・「なぜ今になって調査されるのか」と調査の目的を疑い、協力をためらうことが少なくなかった」という課題が指摘されている。

 お尋ねの「全国的なアイヌ生活実態調査」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に「全国的なアイヌ生活実態調査」が国内の全てのアイヌの人々を対象とする調査を意味するものであるとすれば、調査対象者を把握することが困難であること等の課題が存在することから、アイヌ施策推進法の施行後に当該調査を実施したことはなく、また、お尋ねの「今後の計画」については、現時点で検討していない。

二の1について

 お尋ねについては、アイヌの人々のみを対象とする「無年金者が発生した要因」の分析は行っていない。

二の2について

 お尋ねの「年金制度に加入又は受給していない比率の最新のデータ」については、政府として把握しておらず、お答えすることは困難である。

二の3について

 お尋ねについて、アイヌの人々のみを対象とする「無年金者への支援措置」は講じていない。

 なお、アイヌの人々に限らず、平成二十九年八月から、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(平成二十四年法律第六十二号)第二条の規定による国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第二十六条の改正により、年金の受給資格期間が二十五年から十年に短縮され、保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が短い者に対しても、年金が支給されるよう見直しが行われたところである。

三について

 御指摘の「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(以下「宣言」という。)は、法的拘束力を有するものではなく、政府としては、宣言の各条について網羅的に国内措置を講ずるという観点からの検討は行っていないが、平成二十年六月六日に衆議院及び参議院の本会議において採択された「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」において「宣言における関連条項を参照しつつ、・・・総合的な施策の確立に取り組むこと」とされたことも踏まえ、民族共生象徴空間におけるアイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統及び文化に関する知識の普及啓発、アイヌ政策推進交付金による市町村の取組の支援、国有林野における林産物の採取及び内水面におけるさけの採捕に関する特別の措置等の施策を講じているところである。

 なお、我が国の社会保障制度は、当然にアイヌの人々をその他の国民と同様に制度の対象としていることに加え、政府としては、アイヌの人々を対象とする生活向上関連施策を講じているところである。