質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第七三号
  令和四年十二月二十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員浜田聡君提出開放型スプリンクラー設備に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出開放型スプリンクラー設備に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号。以下「令」という。)第十二条第一項及び第二項並びに消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号。以下「規則」という。)第十三条の二第一項の規定において、一定規模以上の舞台部がある令別表第一(一)項に掲げる防火対象物の舞台部については、規則第十三条の二第一項に規定する開放型スプリンクラーヘッドを備えているスプリンクラー設備(以下「開放型スプリンクラー設備」という。)を設置することとしているが、開放型スプリンクラー設備について、火災が発生していないにもかかわらず、故障、故意又は過失によって放水が生じた事例については、一般社団法人日本消火装置工業会によると、静岡県裾野市の本年九月二十四日の事例を含めて過去十年間で三件となっており、更に調査する必要はないと考えている。

二について

 御指摘の「設備が作動した件数及び作動しなかった件数」、「設備が作動して消火に至った件数」、「これらの値から計算される設備が有効であった割合」及び「過去の火災事例」の意味するところが必ずしも明らかではないが、消防庁の火災に関する統計において、令和元年から令和三年までの過去三年間に、スプリンクラー設備が設置された建物(住宅を除く。)の火災件数(以下「火災件数」という。)は三千二百八件で、そのうち、スプリンクラー設備が使用された火災件数は四百十四件である。スプリンクラー設備が使用された火災件数のうち、焼損床面積が三平方メートル以下であった火災件数は三百七十三件(スプリンクラー設備が使用された火災件数に占める割合は九十・一パーセント)であり、スプリンクラー設備は開放型スプリンクラー設備を含めて有効に機能していると考えている。なお、スプリンクラー設備が使用されなかった火災件数は二千七百九十四件で、そのうち、焼損床面積が三平方メートル以下であった火災件数は二千七百五十五件(スプリンクラー設備が使用されなかった火災件数に占める割合は九十八・六パーセント)であり、これらは、自然に鎮火していたなど初期消火の必要性がなかったものや消火器等によりスプリンクラー設備を使用することなく消火されたものが大半と考えている。

三について

 お尋ねについては、海外の建物におけるスプリンクラー設備の設置状況については、網羅的に把握していない。

 なお、英国規格協会が定める基準(二千十五年)においても、劇場の舞台部等において開放型スプリンクラー設備を設ける場合の基準が定められていると承知している。

四及び五について

 御指摘の「再発防止策として法改正」、「海外の例にならって消火設備を設置」及び「海外で十分な実績がありかつ有効性と安全性が検証されたもの」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一定規模以上の舞台部がある令別表第一(一)項に掲げる防火対象物の舞台部については、天井面が高いこと、幕類が多く垂れ下がっており短時間で延焼が拡大するおそれがあること等を勘案し、一度に広範囲にわたって放水する必要があることから、開放型スプリンクラー設備を設置することとしているものであり、令及び規則の見直しを検討する必要はないと考えている。なお、スプリンクラー設備等の消防用設備等の技術上の基準については、火災等の事例、防火対象物の実態、消防用設備等の技術進歩等に応じて適宜見直しを行っており、その際、消防用設備等の有効性及び安全性等の検証を行うとともに、必要に応じて諸外国の実例などを参考にすることがある。

 また、「一斉開放弁の二次側の閉止弁を常時閉として火災時にのみ開とすることを認める等の対策を検討するべきではないか」とのお尋ねについては、開放型スプリンクラー設備について、防火対象物の関係者が、火災時の消火に支障が生じないよう、一斉開放弁の二次側の閉止弁を火災時に確実に開放することができるのであれば、一斉開放弁の二次側に当該閉止弁を設け常時閉鎖しておくことも可能と考えられる。

六について

 消防庁の任務及び市町村の消防に関する責任は、消防組織法(昭和二十二年法律第二百二十六号)第四条及び第六条において規定されている。