質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第六四号
  令和四年十二月二十日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員辻元清美君提出原子炉の耐用年数に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員辻元清美君提出原子炉の耐用年数に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「データ」が「誰の、どのような調査によるもの」であるかについては、当時の行政文書が残っていないことから、不明である。

 なお、原子力規制委員会に提出された核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「法」という。)第四十三条の三の五第一項又は第四十三条の三の八第一項の許可に係る原子炉設置許可申請書又は原子炉設置変更許可申請書(以下「原子炉設置許可申請書等」という。)においては、多くの場合、実用発電用原子炉に係る重要な設備、機器等が当該実用発電用原子炉の運転開始後四十年間使用されることを想定して、中性子照射脆(ぜい)化等に係る当該設備、機器等の設計上の評価等が記載されていると承知している。

二について

 まず、国内の全ての実用発電用原子炉のうち、直近の原子炉設置許可申請書等に係る添付書類(以下「申請書添付書類」という。)の原子炉圧力容器又は原子炉容器の概要に関する項目の中に、お尋ねの「原子炉の耐用年数」に関連した年数の記載があるものについて、当該記載の内容を実用発電用原子炉ごとにお示しすると、次のとおりである。

 東北電力株式会社女川原子力発電所一号炉 「原子炉容器と炉心との間の環状部にある冷却材によって、原子炉容器内面の放射線照射レベルが低下し、プラント寿命中、母材の機械的性質は問題となる程の変化は起こらず、また原子炉容器は微細な結晶粒子の鋼板で製作するので、母材の放射線照射による影響は小さく、最低四十年間耐えるよう設計されている。」

 東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所一号炉 「圧力容器と炉心との間の環状部にある冷却材によって、圧力容器内面の放射線照射レベルが低下し、プラント寿命中、母材の機械的性質は問題となる程の変化は起こらず、また圧力容器は微細な結晶粒子の鋼板で製作するので、母材の放射線照射による影響は小さくなり、最小四十年間耐える。」

 東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所二号炉 「圧力容器と炉心との間の環状部にある冷却材によって、圧力容器内面の放射線照射レベルが低下し、プラント寿命中、母材の機械的性質は問題となる程の変化は起こらず、また圧力容器は微細な結晶粒子の鋼板で製作するので、母材の放射線照射による影響は小さくなり、最小四十年間耐える。」

 東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所三号炉 「圧力容器と炉心との間の環状部にある冷却材によって、圧力容器内面の放射線照射レベルが低下し、プラント寿命中、母材の機械的性質は問題となる程の変化は起こらず、また圧力容器は微細な結晶粒子の鋼板で製作するので、母材の放射線照射による影響は小さくなり、最小四十年間耐える。」

 東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所四号炉 「圧力容器と炉心との間の環状部にある冷却材によって、圧力容器内面の放射線照射レベルが低下し、プラント寿命中、母材の機械的性質は問題となる程の変化は起こらず、また圧力容器は微細な結晶粒子の鋼板で製作するので、母材の放射線照射による影響は小さくなり、最小四十年間耐える。」

 東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所五号炉 「圧力容器と炉心との間の環状部にある冷却材によって、圧力容器内面の放射線照射レベルが低下し、プラント寿命中、母材の機械的性質は問題となる程の変化は起こらず、また圧力容器は微細な結晶粒子の鋼板で製作するので、母材の放射線照射による影響は小さくなり、最小四十年間耐える。」

 東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所六号炉 「圧力容器と炉心との間の環状部にある冷却材によって、圧力容器内面の放射線照射レベルが低下し、プラント寿命中、母材の機械的性質は問題となる程の変化は起らず、また圧力容器は微細な結晶粒子の鋼板で製作するので、母材の放射線照射による影響は小さくなり、最小四十年間耐える。」

 東京電力ホールディングス株式会社福島第二原子力発電所一号炉 「圧力容器と炉心との間の環状部にある冷却材によって、圧力容器内面の放射線照射レベルが低下し、プラント寿命中、母材の機械的性質は問題となる程の変化は起こらず、また圧力容器は微細な結晶粒子の鋼板で製作するので、母材の放射線照射による影響は小さくなり、最小四十年間耐える。」

 日本原子力発電株式会社敦賀発電所一号炉 「圧力容器と炉心との間の環状部にある冷却材によって、圧力容器の放射線照射レベルは低下され、プラント寿命中母材の機械的性質は問題になる程変化は起らず、また微細な結晶粒子鋼で製作するので、母材の放射線照射による影響は小さくなり、最少四十年間耐えるような設計を行なっている。」

 中部電力株式会社浜岡原子力発電所一号炉 「圧力容器と炉心との間の環状部にある冷却材によつて、圧力容器内面の放射線照射レベルが低下し、プラント寿命中、母材の機械的性質は問題となる程の変化は起こらず、また圧力容器は微細な結晶粒子の鋼板で制作するので母材の放射線照射による影響は小さく、耐用年数四十年として設計している。」

 中部電力株式会社浜岡原子力発電所二号炉 「圧力容器と炉心との間の環状部にある冷却材によって、圧力容器内面の放射線照射レベルが低下し、プラント寿命中、母材の機械的性質は問題となる程の変化は起こらず、また圧力容器は微細な結晶粒子の鋼板で製作するので母材の放射線照射による影響は小さく、耐用年数四十年として設計している。」

 中国電力株式会社島根原子力発電所一号炉 「圧力容器と炉心との間の環状部にある冷却材によって、圧力容器内面の放射線照射レベルが低下し、プラント寿命中、母材の機械的性質は問題となる程の変化は起こらず、また圧力容器は微細な結晶粒子の鋼板で製作するので、母材の放射線照射による影響は小さく、最小四十年耐えるよう設計されている。」

 また、国内の全ての実用発電用原子炉のうち、日本原子力発電株式会社東海発電所については、その申請書添付書類の黒鉛の諸性質に関する項目の中に、お尋ねの「原子炉の耐用年数」に関連した年数の記載があるところ、当該記載の内容をお示しすると、次のとおりである。

 「この原子炉の中性子束レベルに対し、二十年の原子炉耐用期間中に蓄積するウイグナ エネルギーが、自己解放されないようなウイグナ限界温度が存在する。」

 以上のほか、お尋ねの「原子炉の耐用年数」に関連するものとして、原子炉圧力容器又は原子炉容器に対する中性子照射量を推定する際の期間が考えられるが、国内の全ての実用発電用原子炉のうち、申請書添付書類の中に、当該期間の記載があるものについて、当該記載の内容を実用発電用原子炉ごとにお示しすると、次のとおりである。

 北海道電力株式会社泊発電所三号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 電源開発株式会社大間原子力発電所 「四十年間」

 東北電力株式会社東通原子力発電所一号炉 「四十年間」

 東京電力ホールディングス株式会社東通原子力発電所一号炉 「四十年間」

 東北電力株式会社女川原子力発電所二号炉 「四十年間」

 東北電力株式会社女川原子力発電所三号炉 「四十年間」

 東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所六号炉 「四十年間」

 東京電力ホールディングス株式会社福島第二原子力発電所一号炉 「四十年間」

 東京電力ホールディングス株式会社福島第二原子力発電所二号炉 「四十年間」

 東京電力ホールディングス株式会社福島第二原子力発電所三号炉 「四十年間」

 東京電力ホールディングス株式会社福島第二原子力発電所四号炉 「四十年間」

 日本原子力発電株式会社東海第二発電所 「四十定格負荷相当年時点」

 東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所一号炉 「四十年間」

 東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所二号炉 「四十年間」

 東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所三号炉 「四十年間」

 東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所四号炉 「四十年間」

 東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所五号炉 「四十年間」

 東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所六号炉 「四十年間」

 東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所七号炉 「四十年間」

 北陸電力株式会社志賀原子力発電所一号炉 「四十年間」

 北陸電力株式会社志賀原子力発電所二号炉 「四十年間」

 関西電力株式会社美浜発電所一号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 関西電力株式会社美浜発電所二号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 関西電力株式会社美浜発電所三号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 関西電力株式会社大飯発電所一号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 関西電力株式会社大飯発電所二号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 関西電力株式会社大飯発電所三号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 関西電力株式会社大飯発電所四号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 関西電力株式会社高浜発電所一号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 関西電力株式会社高浜発電所二号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 関西電力株式会社高浜発電所三号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 関西電力株式会社高浜発電所四号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 中部電力株式会社浜岡原子力発電所三号炉 「四十年間」

 中部電力株式会社浜岡原子力発電所四号炉 「四十年間」

 中部電力株式会社浜岡原子力発電所五号炉 「四十年間」

 中国電力株式会社島根原子力発電所二号炉 「四十年間」

 中国電力株式会社島根原子力発電所三号炉 「四十年間」

 四国電力株式会社伊方発電所一号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 四国電力株式会社伊方発電所二号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 四国電力株式会社伊方発電所三号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 九州電力株式会社玄海原子力発電所一号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 九州電力株式会社玄海原子力発電所二号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 九州電力株式会社玄海原子力発電所三号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 九州電力株式会社玄海原子力発電所四号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 九州電力株式会社川内原子力発電所一号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 九州電力株式会社川内原子力発電所二号炉 「四十定格負荷相当年時点」

 なお、次の実用発電用原子炉については、申請書添付書類に、右で述べたような、お尋ねの「原子炉の耐用年数」に関連した年数の記載はない。

 北海道電力株式会社泊発電所一号炉

 北海道電力株式会社泊発電所二号炉

 日本原子力発電株式会社敦賀発電所二号炉

三について

 御指摘の「原子炉の寿命」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、国際原子力機関の「Power Reactor Information System」(以下「データベース」という。)によると、令和三年末までに恒久的に運転を停止した世界の原子炉のうち、初めて電力系統に接続した日から恒久的に運転を停止した日までの期間が最も長かったのは、パキスタンのカラチ原子力発電所一号機である。

 また、データベースによると、令和三年末までに恒久的に運転を停止した世界の原子炉のうち、初めて電力系統に接続した日から恒久的に運転を停止した日までの期間が四十年以上であった原子炉は存在し、当該期間が六十年を超えていた原子炉は存在しない。

四について

 法第四十三条の三の三十二に規定する「発電用原子炉設置者がその設置した発電用原子炉を運転することができる期間」については、平成二十四年当時の国会審議において、技術的見地を含め、幅広い観点から議論が行われた上で、立法されたものと認識している。