質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第五二号
  令和四年十二月十三日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員辻元清美君提出石綿健康被害救済基金の治療研究への活用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員辻元清美君提出石綿健康被害救済基金の治療研究への活用に関する質問に対する答弁書

一の1について

 石綿ばく露による健康障害については、ばく露の可能性が特に高い石綿を使用した建築物の解体工事の件数が引き続き増加していくと見込まれる一方で、関連法令に基づき、これらの解体工事に起因する石綿ばく露による健康障害を防止する対策が強化されてきているところであり、ばく露の件数の増減の傾向を予測することが困難であることから、お尋ねについて具体的にお答えすることは困難である。

一の2について

 お尋ねの「中皮腫の予後」の具体的に意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、中皮腫については、非常に治りにくい難しい病気であるとされているものと認識している。

一の3について

 中皮腫については、例えば、ニボルマブ(オプジーボ)について平成三十年八月二十一日に効能又は効果として「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」の追加が認められるなど、近年、有効性及び安全性が確認された新たな治療法が出てきており、また、石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号)の施行後、石綿による健康被害の迅速な救済が図られてきているため、現時点において、御指摘のように中皮腫の患者が「何ら救済を受けられずに死に至る」状態にあるとは考えていない。

二の1について

 「アスベスト被害によって発生した病気を治すこと」は重要であると考えている。

二の2について

 お尋ねの「中皮腫の治療研究に関する政府支援」としては、厚生労働省において、悪性中皮腫を含む希少がん及び難治性がんに係る治療薬の開発等に関する研究並びに中皮腫等に係る治療手法、ケア手法等に関する研究に要する費用に対して、それぞれ財政的な支援を行ってきたところである。今後についても、必要に応じた支援を進めてまいりたい。

二の3及び4について

 お尋ねの「厚労省と環境省が連携して行った」「治療研究の促進」に係る取組については、厚生労働省において、これまで、環境省から関係団体の要望を通じた治療研究に資する情報の提供を受けながら、中皮腫を含む希少がん及び難治性がんに係る治療等の研究を支援してきたところであり、現時点において、御指摘のように「「中皮腫治療推進戦略会議」を設置し、そこで戦略的な計画を立案し、予算・人的体制なども含めた対応を行う」必要があるとは考えていないが、引き続き、関係省庁で連携しつつ必要な支援を進めていく考えである。

二の5について

 中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会においては、委員として参画している一般社団法人日本経済団体連合会を通じて広く経済界の意見を聴取できていると考えており、御指摘のような「参加する事業主団体の拡大」又は「多くの事業主団体からヒアリングを行う場」の設定については、現時点においては必要ではないと考えている。

三の1について

 御指摘の「二〇一三年推計」及び「二〇二二年推計」については、二千十三年又は二千二十二年それぞれの時点における直近の石綿健康被害救済基金(以下「基金」という。)の支出状況等を踏まえて一定の仮定を置いた上で試算したものであるため、「二〇一三年推計」の結果と「二〇二二年推計」の結果が異なっているからといって、「二〇二二年推計が正しくて二〇一三年推計は誤り」であるとは考えていないが、現時点においては、最新のデータに基づいている「二〇二二年推計」の方がより合理的な試算であると考えている。

三の2について

 御指摘の「二〇一三年推計」と「二〇二二年推計」については、一部の数値の仮定を除いて、大枠において同じ算定方法を用いている。

 前者については、二千十一年及び二千十二年の各年の直近五年における基金の支出額の増加率の相乗平均を計算したところ、それぞれマイナス及びプラスであり支出額の増減についての傾向を把握できなかったため、将来的な基金の支出額について毎年一定である等の仮定を置いた上で基金の残高等を試算したものである。

 後者については、二千十七年から二千二十一年までの各年の直近五年における基金の支出額の増加率の相乗平均を計算したところ、全てプラスであったため、二千二十一年における当該増加率の相乗平均の値を踏まえ、将来的な基金の支出額について毎年八パーセント増加する等の仮定を置いた上で基金の残高等を試算したものである。