質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第四八号
  令和四年十二月九日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員辻元清美君提出岸田文雄内閣総理大臣の広島・長崎における外国人の原爆被害状況の認識に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員辻元清美君提出岸田文雄内閣総理大臣の広島・長崎における外国人の原爆被害状況の認識に関する質問に対する答弁書

一の1から4までについて

 お尋ねの「広島の原爆犠牲者が十数万」及び「長崎の原爆犠牲者が七万」については、広島市及び長崎市が昭和五十一年に国際連合へ提出した資料において、昭和二十年十二月までの原子爆弾の投下による死没者について、広島市においては約十四万人、長崎市においては約七万人とされていることを基にしており、両市によると、「日本人以外の外国人犠牲者」は含まれているが、「出身国ごとの数の内訳」は把握していないとのことである。

一の5及び6について

 お尋ねの「原爆死没者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、厚生省(当時)が昭和六十年度に実施した「原子爆弾被爆者実態調査(死没者調査)」において、被爆者に対し、「記憶にある死没者」の状況を調査した結果、新たに確認された死没者数は、一万千九百二十九人であった。

二について

 お尋ねの「原爆被害の集大成」については、過去の調査を集積した資料としては作成していないが、厚生労働省において被爆者の実態を適切に把握する観点から適時に検討を行った上で、個々の原子爆弾被爆者実態調査の調査内容等について、例えば、外国人への調査を追加するなど必要に応じて見直しや内容の充実を行い、当該調査を継続して十年ごとに実施してきているところであり、実質的に対応しているものと認識している。

三の1及び5について

 お尋ねの「外国人の「被爆の実相」」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、核兵器がもたらしたあらゆる被害についての正確な認識を広め、被爆の実相を世代と国境を越えて世界に発信することは、我が国の重要な責任であると認識している。

三の2について

 御指摘のものを含め、オバマ米国大統領(当時)の広島訪問時の関連の発言の意味するところについて、政府として確定的にお答えすることは困難である。その上で、政府としては、米国政府が、同大統領の広島訪問に関し、第二次世界大戦において亡くなった全ての無辜(こ)の人々を追悼し、また、核兵器のない平和で安全な世界を追求することに対する米国のコミットメントを再確認する機会となるとともに、深く揺るぎない同盟関係を築くために日米両国がどれだけ取り組んできたかを示す象徴となると発表したと承知している。また、政府としても、現職の米国大統領として初めてとなるオバマ米国大統領(当時)の広島訪問は、戦没者を追悼し、核兵器のない世界を目指す国際的機運を再び盛り上げる上で、極めて重要な歴史的機会となったと認識している。

三の3について

 お尋ねの「「多くの朝鮮半島出身者」等の外国人犠牲者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、オバマ米国大統領(当時)の広島訪問に関する外務省ホームページにおいては、「両首脳は、厳粛な雰囲気の中、湯崎知事、松井市長、岸田大臣、ケネディ大使の先導により、原爆死没者慰霊碑に進み、ユース非核特使を務める広島の高校生から手渡された花輪を、オバマ大統領、安倍総理の順で献花し、黙祷を捧げた。」と記載しているところである。

三の4について

 お尋ねの「「多くの朝鮮半島出身者」等の外国人」の意味するところが必ずしも明らかではないが、安倍内閣総理大臣(当時)の平和記念資料館における記帳においては、「原爆によって犠牲となったすべての方々に哀悼の誠を捧げます。恒久平和を祈り核兵器のない世界の実現に全力を尽くします。」と記載しているところである。

四の1の(1)について

 在外被爆者支援事業の対象者の数については、網羅的に把握していないが、当該対象者のうち、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾により被爆した者であって日本国内に居住地及び現在地を有しないもの(以下「在外被爆者」という。)であって、被爆者健康手帳の交付を受けているものの数及び健康上の理由等により来日できない者に対して交付される被爆時状況確認証の交付を受けているものの数を単純に合計した数について、平成十六年度以降の各年度における①大韓民国、②アメリカ合衆国、③ブラジル連邦共和国及び④その他の国に居住する者の数並びに⑤①から④までの合計をお示しすると、それぞれ次のとおりである。なお、平成十三年度から平成十五年度までの間における①から⑤までの数については把握していない。

 平成十六年度 ①二千四百五十人 ②八百五十七人 ③百四十四人 ④二百五十人 ⑤三千七百一人

 平成十七年度 ①二千七百二十九人 ②九百二十七人 ③百六十一人 ④二百五十八人 ⑤四千七十五人

 平成十八年度 ①二千九百五十一人 ②九百八十八人 ③百六十三人 ④二百六十一人 ⑤四千三百六十三人

 平成十九年度 ①二千九百九十人 ②九百九十六人 ③百六十八人 ④二百六十七人 ⑤四千四百二十一人

 平成二十年度 ①三千六十五人 ②九百八十二人 ③百六十五人 ④二百七十二人 ⑤四千四百八十四人

 平成二十一年度 ①三千九十三人 ②千十人 ③百六十八人 ④二百七十四人 ⑤四千五百四十五人

 平成二十二年度 ①三千百三十二人 ②千一人 ③百六十四人 ④二百七十二人 ⑤四千五百六十九人

 平成二十三年度 ①三千百四十八人 ②千一人 ③百六十人 ④二百五十九人 ⑤四千五百六十八人

 平成二十四年度 ①三千百四十三人 ②千十四人 ③百五十八人 ④二百五十九人 ⑤四千五百七十四人

 平成二十五年度 ①三千百三十七人 ②千八人 ③百五十八人 ④二百六十人 ⑤四千五百六十三人

 平成二十六年度 ①三千八十八人 ②九百七十九人 ③百五十二人 ④百八十八人 ⑤四千四百七人

 平成二十七年度 ①二千五百十八人 ②七百四十二人 ③百二十四人 ④百二十八人 ⑤三千五百十二人

 平成二十八年度 ①二千三百七十八人 ②七百十六人 ③百十三人 ④百二十五人 ⑤三千三百三十二人

 平成二十九年度 ①二千三百二十七人 ②六百九十四人 ③百一人 ④百二十四人 ⑤三千二百四十六人

 平成三十年度 ①二千二百五人 ②六百六十七人 ③九十九人 ④百十八人 ⑤三千八十九人

 令和元年度 ①二千百三十八人 ②六百六十三人 ③九十三人 ④百十六人 ⑤三千十人

 令和二年度 ①二千七十四人 ②六百三十八人 ③九十人 ④百六人 ⑤二千九百八人

 令和三年度 ①千九百七十五人 ②六百十九人 ③八十二人 ④百五人 ⑤二千七百八十一人

四の1の(2)並びに2の(2)及び(3)について

 お尋ねについては、把握しておらず、お答えすることは困難である。

四の2の(1)について

 被爆者健康手帳の交付を受けている在外被爆者の数について、平成十六年度以降の各年度における①大韓民国、②アメリカ合衆国、③ブラジル連邦共和国及び④その他の国に居住する者の数並びに⑤①から④までの合計をお示しすると、それぞれ次のとおりである。なお、平成十三年度から平成十五年度までの間における①から⑤までの数については把握していない。

 平成十六年度 ①二千四百十九人 ②八百五十人 ③百四十一人 ④二百四十八人 ⑤三千六百五十八人

 平成十七年度 ①二千六百八十七人 ②九百十六人 ③百五十五人 ④二百五十六人 ⑤四千十四人

 平成十八年度 ①二千八百九十三人 ②九百六十六人 ③百五十七人 ④二百五十九人 ⑤四千二百七十五人

 平成十九年度 ①二千九百二十八人 ②九百七十二人 ③百六十二人 ④二百六十四人 ⑤四千三百二十六人

 平成二十年度 ①二千九百九十四人 ②九百五十五人 ③百五十九人 ④二百六十八人 ⑤四千三百七十六人

 平成二十一年度 ①三千十六人 ②九百八十三人 ③百六十二人 ④二百七十人 ⑤四千四百三十一人

 平成二十二年度 ①三千四十八人 ②九百七十四人 ③百五十八人 ④二百六十八人 ⑤四千四百四十八人

 平成二十三年度 ①三千六十二人 ②九百七十四人 ③百五十四人 ④二百五十五人 ⑤四千四百四十五人

 平成二十四年度 ①三千五十七人 ②九百八十七人 ③百五十二人 ④二百五十五人 ⑤四千四百五十一人

 平成二十五年度 ①三千五十一人 ②九百八十一人 ③百五十二人 ④二百五十六人 ⑤四千四百四十人

 平成二十六年度 ①三千二人 ②九百五十二人 ③百四十六人 ④百八十四人 ⑤四千二百八十四人

 平成二十七年度 ①二千四百三十二人 ②七百十五人 ③百十八人 ④百二十四人 ⑤三千三百八十九人

 平成二十八年度 ①二千二百九十二人 ②六百八十九人 ③百七人 ④百二十一人 ⑤三千二百九人

 平成二十九年度 ①二千二百四十一人 ②六百六十七人 ③九十五人 ④百二十人 ⑤三千百二十三人

 平成三十年度 ①二千百十九人 ②六百四十人 ③九十三人 ④百十四人 ⑤二千九百六十六人

 令和元年度 ①二千五十二人 ②六百三十六人 ③八十七人 ④百十二人 ⑤二千八百八十七人

 令和二年度 ①千九百八十八人 ②六百十一人 ③八十四人 ④百二人 ⑤二千七百八十五人

 令和三年度 ①千八百八十九人 ②五百九十二人 ③七十六人 ④百一人 ⑤二千六百五十八人

四の2の(4)について

 お尋ねの「これまでに和解して慰謝料を支払った在外被爆者の居住国別の人数」については、令和四年十月末日時点で、大韓民国に居住する者が三千五百五十人、アメリカ合衆国に居住する者が三百六十九人、ブラジル連邦共和国に居住する者が百二十九人、その他の国に居住する者が四十二人であり、合計で四千九十人となっている。また、お尋ねの「支払金額の総額」については、個別の「支払金額」について網羅的に集計しておらず、お答えすることは困難であるが、和解が成立した場合には、一人ごとに、基本的に、損害賠償債務として、百十万円及びこれに対する遅延損害金を支払っている。

四の3について

 政府としては、原子爆弾の放射能による健康被害を受けたという点で重要な人道上の問題であるとの認識に立ち、北朝鮮に居住している者も含め在外被爆者を、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)及び在外被爆者支援事業の対象としている。北朝鮮との間に国交はないため、北朝鮮に居住している者については、最寄りの領事官を経由する等して、被爆者健康手帳の交付や健康管理手当等の支給、居住地で医療を受けた場合における医療費の支給等の申請を行うこととなるが、当該申請に係る手続については、ハングルを含む多言語により、厚生労働省ホームページ等を通じて周知しており、引き続き、関係省庁間で緊密に連携しながら適切に対応していく。

五の1について

 御指摘の岸田内閣総理大臣が述べた「唯一の戦争被爆国」との表現については、我が国が戦時下に原子爆弾が投下された唯一の被爆国であることを踏まえたものである。

五の2について

 お尋ねの「全ての原爆被害者の援護に責任を持つこと」の具体的に意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。