質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第二八号
  令和四年十一月八日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出台湾有事を想定した国民保護訓練に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出台湾有事を想定した国民保護訓練に関する質問に対する答弁書

一について

 政府としては、国及び地方公共団体が共同で実施する国民の保護のための措置についての訓練(以下「国民保護共同訓練」という。)の実施について、各地方公共団体に継続的な働きかけを行うとともに、これまで実施してきた国民保護共同訓練の成果について、都道府県に対し、情報提供を行っているところである。

 これらを受け、地方公共団体においても、例えば、令和三年度には、大分県において、空港施設の爆破・火災事案等を想定した国民保護共同訓練を行うなど、都道府県警察、海上保安庁、自衛隊等の関係機関と連携しながら、様々な事態を想定した訓練を実施しているところである。

二について

 お尋ねの「各都道府県、市町村段階で全体として訓練計画の策定状況」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、令和四年度において、国民保護共同訓練は三十四道府県で実施することとされているところである。

 お尋ねの「市町村から都道府県、国レベルまでが結合した総合的訓練の実施」については、武力攻撃事態等(武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号。以下「事態対処法」という。)第一条に規定する武力攻撃事態等をいう。以下同じ。)及び緊急対処事態(事態対処法第二十二条第一項に規定する緊急対処事態をいう。)を想定し、国が重点的に企画及び立案を行い、特定の地方公共団体と行う国民保護共同訓練を実施している。当該国民保護共同訓練については、令和三年度以降、全国を六ブロックに区分した上で、輪番で実施することとしており、実施する都道府県について現時点で令和八年度分まで決定しているところである。

三及び四について

 武力攻撃事態等に至ったときは、閣議決定された対処基本方針(事態対処法第九条第一項に規定する対処基本方針をいう。)に基づき、対策本部長(事態対処法第十一条第一項に規定する対策本部長をいう。)が都道府県知事に対し避難措置の指示を行うものとされており、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号。以下「国民保護法」という。)第三十二条第一項の規定に基づき定められた「国民の保護に関する基本指針」(平成十七年三月二十五日閣議決定。以下「基本指針」という。)においては、「対策本部長は、着上陸侵攻の場合など都道府県の区域を越える避難措置の指示を行う場合には、要避難地域を管轄する都道府県知事から避難すべき住民の数や想定される避難の方法等について、避難先地域を管轄する都道府県知事から避難住民の受入能力等についてそれぞれ意見を聴き、それを踏まえて、国の方針として具体的な要避難地域や避難先地域等について避難措置の指示を行い、都道府県知事による避難の指示が円滑にできるようにするものとする」とした上で、「都道府県の区域を越える避難の場合には、要避難地域の都道府県と避難先の都道府県及び避難の経路となる地域の都道府県との間で避難住民の受入れ、移動時の支援等に関する協議を実施するものとし、必要に応じ市町村その他の関係機関は協議に参加するものとする」としているところである。

 沖縄県においては、令和四年度末に県による訓練の実施を予定していることに加え、令和八年度に国民保護共同訓練を実施することを予定しており、都道府県の区域を越える避難訓練とするか否かや参加する市町村の範囲を含めた実施内容について、今後検討することとしている。なお、これらの訓練は特定の事態を想定したものではない。

五について

 御指摘の「シェルター」及び「避難シェルター」について確立した定義はないと承知しており、御指摘の「主要国における対象人口に対応した避難用必要数の充足率」は把握していないが、国民保護法第百四十八条第一項及び第百八十四条第一項の規定により、都道府県知事等は、武力攻撃事態等において住民を避難させ、又は避難住民等の救援を行うため、あらかじめ、一定の基準を満たす施設を避難施設として指定しなければならないとされているところであり、全国における当該指定を受けた避難施設の数は、令和三年四月一日時点で九万四千百二十五か所である。

 また、政府としては、武力攻撃事態等における住民の避難に関し、弾道ミサイルの着弾の衝撃や爆風により発生する被害をできる限り軽減する観点から、コンクリート造り等の堅ろうな施設や建築物の地階、地下街、地下駅舎等の地下施設への避難が有効であると認識している。御指摘の「補助制度」は存在しないが、基本指針において、都道府県知事等による避難施設の指定に当たっての留意事項として「爆風等からの直接の被害を軽減するための一時的な避難に活用する観点から、コンクリート造り等の堅ろうな建築物や地下街、地下駅舎等の地下施設を指定するよう配慮する」ことを明記しており、全国における当該記載に該当する避難施設の数は、前記の指定を受けた避難施設のうち五万千九百九十四か所である。沖縄県におけるものを含め、これらの避難施設の多くが災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第四十九条の四第一項に規定する指定緊急避難場所又は同法第四十九条の七第一項に規定する指定避難所としても指定されているところである。

 内閣官房を中心とした関係省庁においては、沖縄県を含む全国において、国民保護法第百四十八条第一項及び第百八十四条第一項の規定に基づく都道府県知事等による避難施設の指定を推進するとともに、武力攻撃を想定した避難施設の在り方に関し、一定期間滞在可能な施設とする場合における必要な機能や課題等について、諸外国の調査も行うなどして、検討を進めているところである。