質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第二五号
  令和四年十一月四日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員神谷宗幣君提出外国投資家の株式保有割合の増加に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出外国投資家の株式保有割合の増加に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「目的」については、「このような外国投資家の対日直接投資を増加させる政策」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、対日直接投資の促進については、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二二」(令和四年六月七日閣議決定。以下「骨太方針」という。)において「旺盛な海外需要を取り込み、我が国経済の活力や長期的な成長力を高めるため、イノベーション創出やサプライチェーン強靱化等につながる対日直接投資を戦略的に推進する。」としているところである。

 また、御指摘の「適正水準」については、御指摘の「外国投資家の株式保有割合」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、我が国における上場企業の発行済株式総数に占める御指摘の「外国投資家」が保有する株式の数の割合や、個々の上場企業の発行済株式総数に占める御指摘の「外国投資家」が保有する株式の数の割合等について、政府として何らかの「適正水準」を定めているものではなく、お尋ねの「適正水準の範囲内」であるか否かについてお答えすることは困難である。

二について

 御質問は、お尋ねの各法律における外国人等の議決権の割合に着目した規制に係るものであると理解するが、当該各法律におけるこうした規制の趣旨については、次のとおりである。

 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)においては、国際民間航空条約(昭和二十八年条約第二十一号)に定める自国の領域上の空間において有する完全かつ排他的な主権の観点から、二国間交渉で獲得した国際航空運送に係る権益を日本国民が実質的に支配する航空会社に分配し、及び国内航空運送を同様の航空会社のみに行わせる必要があることから、外国人等の議決権の割合に着目した規制を設けている。

 電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)においては、無線局が利用する電波は有限希少なものであり、原則として日本国民による利用を優先させる必要があることから、外国人等の議決権の割合に着目した規制を設けている。

 放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)においては、放送は、国の政治、文化、社会等に多大な影響を与えるメディアであることから、外国人等の議決権の割合に着目した規制を設けている。

 日本電信電話株式会社等に関する法律(昭和五十九年法律第八十五号)においては、日本電信電話株式会社等は、国民生活に必要不可欠な電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保に寄与すること等といった責務を有し、我が国の国民生活や社会活動を支える重要な事業者であることから、外国人等の議決権の割合に着目した規制を設けている。

三について

 御指摘の「事前届出が行われた企業」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第二十七条に基づく対内直接投資等(同法第二十六条第二項に規定する対内直接投資等をいう。以下同じ。)又は同法第二十八条に基づく特定取得(同法第二十六条第三項に規定する特定取得をいう。以下同じ。)に係る事前届出(以下「事前届出」という。)の件数は、令和三年度において二千八百五十九件であり、そのうち株式取得に関するものは、千四百五件である。

 また、お尋ねの「企業名、外国投資家名」について、事前届出を行った外国投資家(同法第二十六条第一項に規定する外国投資家をいう。以下同じ。)の名称及び当該外国投資家による対内直接投資等又は特定取得が行われた会社の名称については、公にすることにより当該外国投資家及び会社の正当な利益を害するおそれがあることから、答弁を差し控えたい。

四について

 お尋ねについては、令和四年三月二十五日の衆議院財務金融委員会において、鈴木財務大臣が、民間企業の経営について、「企業が成長の果実をどのように還元したり再投資していくかということにつきましては、これは、基本的には、各企業において、その置かれた状況に基づき経営判断をすべき事柄であると思います。」と答弁しているところであり、その上で、政府としては、我が国の持続的な成長には、需要創出と同時に、供給力を高める効果も持つ投資の拡大が不可欠であり、骨太方針において、「人への投資」、「科学技術・イノベーションへの投資」、「スタートアップへの投資」、「GXへの投資」及び「DXへの投資」を重点投資分野に位置付け、大胆な重点投資を、官民連携の下で中期的かつ計画的に推進することとしているところである。

五について

 お尋ねの「国が外国投資家による新たな株式取得を規制することができる現行法制上の手段」については、二についてで述べたとおり、一定の業種において外国人等の議決権の割合に着目した規制を行っていることに加え、外国為替及び外国貿易法において、財務大臣及び事業所管大臣は、国の安全等を損なうおそれがある業種を定め、外国投資家が当該業種を営む上場会社の株式を一パーセント以上取得しようとする場合や、当該業種を営む非上場会社の株式を取得しようとする場合には、原則として、事前届出を求めることとしている。

 また、「外国投資家の取得した我が国の上場企業の株式保有割合を減少させることができる」「現行法制上」の「方法」については、同法において、事前届出を行わなければならない外国投資家が、事前届出をせずに対内直接投資等又は特定取得を行った等の場合には、財務大臣及び事業所管大臣は、当該外国投資家に対し、当該外国投資家が取得した株式の全部又は一部の処分その他必要な措置を命ずることができることとしている。

六について

 御指摘の「本質問主意書の趣旨と同様の理由」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。