質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第一一号
  令和四年十月十四日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員小西洋之君提出文化庁が宗教法人法第八十一条の解散命令の請求を裁判所に行わないことが違法であることに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出文化庁が宗教法人法第八十一条の解散命令の請求を裁判所に行わないことが違法であることに関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「旧統一教会による民事裁判、刑事裁判の例」の意味するところが明らかではなく、御指摘の「信者などの刑事犯罪が認定された例」についても、その具体的な範囲が明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。また、御指摘の「宗教法人としての旧統一教会の民法上の不法行為責任及び使用者責任が認定された例」については、宗教法人世界平和統一家庭連合(以下「旧統一教会」という。)を被告とする民事裁判の判決において、旧統一教会に民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百九条の不法行為責任又は同法第七百十五条の使用者責任の成立を認めた例があることは承知しているが、旧統一教会を被告とする民事裁判の状況について網羅的には把握していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

二について

 御指摘の「民事裁判、刑事裁判で違法責任が認定された件数」の意味するところが必ずしも明らかではないが、宗教法人が被告となった民事裁判及び宗教法人が被告人となった刑事裁判の状況について網羅的に把握していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

三、四及び十一について

 宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)第八十一条第一項は「裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる」と定めているが、憲法の定める信教の自由の保障及び宗教法人法の趣旨を踏まえれば、宗教法人については、所轄庁による関与は抑制的であるべきであり、法人格を剥奪するという極めて重い措置である解散命令の請求については、十分慎重に判断すべきであると考えている。

 具体的には、宗教法人への解散命令の事由を規定する同項第一号及び第二号については、平成七年十二月十九日東京高等裁判所決定において、「宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって、社会通念に照らして、当該宗教法人の行為であるといえるうえ、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって、しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為、又は宗教法人法二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められる行為をいうものと解するのが相当である」との解釈が示されているところ、所轄庁において解散命令を請求するに当たっても、当該解釈を踏まえてその適否を判断することが必要と考えている。旧統一教会については、当該解釈を踏まえ、同項第一号及び第二号に当たらないと判断したことから、これまで、所轄庁である文部科学大臣において旧統一教会に対する解散命令の請求を行ってこなかったものである。

 また、同法第七十八条の二の規定に基づく報告及び質問に関する権限を所轄庁において行使するに当たっては、宗教法人の個別具体的な状況に照らして、同条第一項各号に該当する疑いがあるか否かを判断する必要があり、所轄庁として、当該宗教法人について同項各号に該当する疑いがあると認めるときには、同法の規定に従ってその権限を行使すべきものと認識している。

五及び六について

 お尋ねの「どのように理解しているのか」の意味するところが明らかではないため、お尋ねの「文言の趣旨」についてお答えすることは困難である。また、御指摘の「民法など刑法犯罪を定めた法令」及び「民法などの刑法犯罪を定めた法令」の意味するところが明らかではないため、お尋ねの「「刑法等」の「等」には民法など刑法犯罪を定めた法令も含まれると解しているのか」及び「「実定法規」には民法などの刑法犯罪を定めた法令も含まれると解しているのか」についてお答えすることは困難である。

 一般に、「禁止規範」とは、一定の行為をしてはならないと命じる規範をいい、「命令規範」とは、一定の行為を行うこと又は行わないことを命じる規範をいうものと解されていると承知しているが、特定の規定が「禁止規範」又は「命令規範」に該当するか否かについては、法令の規定を個別具体的に解釈する必要があり、必ずしもお尋ねのように「「~してはならない」、「~しなければならない」と日本語で明記された条文以外はこの「禁止規範」及び「命令規範」には該当しない」と考えているわけではない。

七から十までについて

 御指摘の「政府の主張」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いずれにしても、政府としては、宗教法人の解散命令の請求に当たっては、三、四及び十一についてでお答えしたとおり、裁判所において示された宗教法人法第八十一条第一項第一号及び第二号の解釈を踏まえてその適否を検討することが必要であると考えている。