質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第一〇号
  令和四年十月十四日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員小西洋之君提出安倍元総理の国葬儀が法的根拠を欠く違憲かつ違法の行為であることに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出安倍元総理の国葬儀が法的根拠を欠く違憲かつ違法の行為であることに関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねのとおりである。

二について

 お尋ねの「吉田茂元総理の国葬儀の法的根拠」について整理した行政文書等は保有等していないため、「吉田茂元総理の国葬儀の法的根拠と同じであると考えてよいか」とのお尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、故吉田茂国葬儀についても、故安倍晋三国葬儀と同様に、閣議決定を根拠として行ったものである。

三について

 お尋ねの「直接の法的根拠」及び「明確な根拠条文」の意味するところが必ずしも明らかではないが、閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うこととしたことは、憲法第六十五条及び内閣法(昭和二十二年法律第五号)第四条の趣旨を踏まえたものである。また、お尋ねの「「国の儀式」の文言は国葬儀の法的根拠とは考えていない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四条第三項第三十三号において内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記されており、国葬儀を含む国の儀式を行うことが行政権の作用に含まれることが法律上明確となっていると考えている。

四について

 御指摘の岸田内閣総理大臣の答弁は、憲法第六十五条及び内閣法第四条の趣旨を踏まえ、内閣府設置法第四条第三項第三十三号において内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記されており、国葬儀を含む国の儀式を行うことが行政権の作用に含まれることが法律上明確となっているという趣旨を述べたものである。

五について

 御指摘の岸田内閣総理大臣の発言及び答弁は、閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことは、国の儀式を内閣が行うことは行政権の作用に含まれること、内閣府設置法第四条第三項第三十三号において内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記されており、国葬儀を含む国の儀式を行うことが行政権の作用に含まれることが法律上明確となっていること等から可能であるという政府の一貫した考え方を述べたものであり、「発言ぶりの変更」との御指摘は当たらず、今後とも当該考え方の趣旨を説明してまいりたい。

六について

 国の儀式を行うことは、立法権及び司法権の作用に含まれるものではなく、行政権の作用に含まれること等からすれば、国の儀式である国葬儀の実施を決定し、その事務を執行することについては、一義的には行政権がその主体となるものと考えている。

七について

 お尋ねの「総理経験者の国葬儀の実施について、立法権(国会)や司法権(裁判所)がその実施について同意することができる憲法などの法令上の根拠」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。

八について

 閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことが可能であることについては、五についてで述べたとおりであり、「内閣法第一条の趣旨に反し、同条が基づく憲法の定める国民主権及び議会制民主主義(議院内閣制における内閣の国会への連帯責任)の原理に反する」との御指摘は当たらないと考えている。

 また、政府としては、故安倍晋三国葬儀の実施について国民や国会の理解が得られるよう、令和四年九月八日の衆議院議院運営委員会及び参議院議院運営委員会、記者会見等の場で故安倍晋三国葬儀の実施の考え方等について説明を行ったところである。

九について

 御指摘の「日本国憲法が定める自由主義」の意味するところが必ずしも明らかではないが、憲法においては、基本的人権の尊重を基本原理の一つとしており、憲法第十一条は「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」と規定し、さらに、憲法第十三条は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定している。また、御指摘の憲法第十九条は、基本的人権の一つとして思想及び良心の自由を保障する趣旨である。

 また、御指摘の「日本国憲法が定める」及び「民主主義」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「民主主義」とは、一般に、「人民が権力を所有し行使するという政治原理。権力が社会全体の構成員に合法的に与えられている政治形態。(出典 大辞林)」を意味するものとされていると承知しており、憲法はその前文において、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。」と規定することにより、国民主権の原理や間接民主制を採用していることを明らかにしていると解している。

十について

 閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことが可能であることについては、五についてで述べたとおりであり、また、故安倍晋三国葬儀においては、国民一人一人に喪に服することを求めていないことから、「個人の尊厳の尊重の確保を目的とする日本国憲法の定める自由主義、民主主義に反する」及び「個人の尊厳の尊重と思想良心の自由に反する」との御指摘は当たらないと考えている。

十一について

 御指摘の「全体主義」について確立した定義があるとは承知しておらず、お尋ねについて政府としてお答えすることは困難である。

十二について

 閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことが可能であることについては、五についてで述べたとおりであり、「憲法の定めるこれら国民主権等の原理に反し、憲法が採用する「法律による行政の原理」に反する」との御指摘は当たらないと考えている。

十三について

 政府としては、一般的には、行政権の作用に含まれる事項について、国民の権利を制限したり、国民に義務を課することのない限りは、法律の根拠を必ずしも必要とするものではないと考えている。その上で、閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことが可能であることについては、五についてで述べたとおりである。

十四について

 お尋ねの「国葬儀の法的正統性」の意味するところが必ずしも明らかではないが、閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことが可能であることについては、五についてで述べたとおりである。

十五について

 お尋ねの内閣・自由民主党合同葬儀は、内閣府設置法第四条第三項第三十三号に規定する内閣の行う儀式であり、当該儀式を行うことは行政権の作用に含まれること等から、閣議決定を根拠として行っている。また、お尋ねの内閣・自由民主党合同葬儀は、逝去した元内閣総理大臣の葬儀であって、内閣が、当該元内閣総理大臣が所属する政党と共同して行うものであり、「自民党のための葬儀」及び「国民主権や議会制民主主義の観点から不適切」との御指摘は当たらないと考えている。