質問主意書

第210回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一〇第九号
  令和四年十月十四日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員小西洋之君提出安倍元総理の国葬儀と国民、国会、裁判所との関係等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出安倍元総理の国葬儀と国民、国会、裁判所との関係等に関する質問に対する答弁書

一について

 閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことは、国の儀式を行うことは立法権及び司法権の作用に含まれるものではなく行政権の作用に含まれること、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四条第三項第三十三号において内閣府の所掌事務として国の儀式に関することが明記されており、国葬儀を含む国の儀式を行うことが行政権の作用に含まれることが法律上明確になっていること等から、可能であると考えている。その上で、政府としては、故安倍晋三国葬儀の実施について理解が得られるよう、令和四年九月八日の衆議院議院運営委員会及び参議院議院運営委員会、記者会見等の場で故安倍晋三国葬儀の実施の考え方等について説明を行ったところである。

二及び四について

 お尋ねの「意思表示を行ったことになっている」、「含む」及び「表したこととなる」の意味するところが必ずしも明らかではないが、故安倍晋三国葬儀は、国の儀式として行う葬儀であることから、「我が国として故人に対する敬意と弔意を表す儀式」であると認識している。他方、故安倍晋三国葬儀の実施に当たっては、「個々の国民、国民全体、国会、裁判所」に対して「敬意と弔意」を表すことは求めていない。

 閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことが可能であることについては、一についてで述べたとおりであり、その上で、政府としては、故安倍晋三国葬儀の実施について理解が得られるよう、令和四年九月八日の衆議院議院運営委員会及び参議院議院運営委員会、記者会見等の場で故安倍晋三国葬儀の実施の考え方等について説明を行ったところである。

三について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、国葬儀は、国の儀式として行う葬儀であるところ、国葬儀を実施することは、立法権及び司法権の作用に含まれるものではなく、行政権の作用に含まれるものであり、また、国民の権利を制限したり、国民に義務を課するものではないと考えている。

五について

 御指摘の「国葬儀の要件」の意味するところが必ずしも明らかではないが、元内閣総理大臣の葬儀の在り方については、これまでも、その時々の内閣において、様々な事情を総合的に勘案し、その都度ふさわしい形を判断してきたところであり、安倍元内閣総理大臣の葬儀を国葬儀の形式で行うこととした考え方については、令和四年九月八日の衆議院議院運営委員会において、岸田内閣総理大臣が「安倍元総理については、民主主義の根幹たる国政選挙において六回にわたり国民の信任を得ながら、憲政史上最長の八年八か月にわたり内閣総理大臣の重責を担ったこと、東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした戦略的外交の展開を主導し、平和秩序に貢献するなど、大きな実績を様々な分野で残したこと、諸外国における議会の追悼決議、服喪の実施、公共施設のライトアップを始め、各国で様々な形で、国全体を巻き込んでの敬意と弔意が表明されていること、民主主義の根幹たる選挙運動中での非業の死であること等を踏まえ、安倍元総理の国葬儀を執り行うことが適切であると判断し」たと述べているとおりである。

六について

 二及び四についてで述べたとおり、故安倍晋三国葬儀の実施に当たっては、国会及び国民一人一人に対して「敬意と弔意」を表すことは求めておらず、「思想・良心の自由を侵害する」及び「思想・良心の自由又は憲法第十三条に定める個人の尊厳尊重に反する事態が生じる」との御指摘は当たらないと考えている。

 御指摘の「安倍元総理に対して国葬儀により敬意と弔意を表すとの決定を何ら行っていない国会や裁判所との関係においては、「国全体として表す」とすることは三権分立に反する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、国の儀式を行うことは行政権の作用に含まれるものであり、また、故安倍晋三国葬儀を実施するに当たっては、国会及び裁判所に対して「敬意と弔意」を表すことは求めておらず、「三権分立に反する」との御指摘は当たらないと考えている。

七について

 政府としては、お尋ねの「教職員や児童生徒に黙とうなどの敬意や弔意の表明を求めた教育委員会や学校」の有無、「職員に同様の弔意等の表明を求めた自治体」の有無及び「どれぐらいの自治体や学校で半旗(弔旗)の掲揚を行った」かについては把握していない。

八について

 故安倍晋三国葬儀の当日における弔意表明の在り方については、令和四年九月八日の衆議院議院運営委員会及び参議院議院運営委員会において、松野内閣官房長官が「国民一人一人に弔意の表明を強制的に求めるものであるとの誤解を招くことがないよう、吉田元総理の国葬儀の際に実施した、弔意表明を行う閣議了解や、地方自治体や教育委員会等の関係機関に対する弔意表明の協力方の要望は行わないこととしました」と述べたとおりであり、これは個別の「官公庁、自治体、学校等において黙とうなどの弔意表明が求められた場合」に関する「政府の見解や方針」を述べたものではなく、また、御指摘の「弔意表明を行う必要はなく求めるべきでないことについての通知」も行っていない。

九について

 各府省において「葬儀委員長の決定」の内容を周知することは、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第九十八条第一項等に規定する職務上の命令には該当しないと考えており、職員が弔意表明を行わない場合でも、これに対して同法第八十二条等に規定する懲戒処分を課すことはできないと考えている。また、御指摘の「自治体、教育委員会、学校において弔意表明が求められ、職員や教職員や児童生徒がこれを拒んだ場合」については、個別具体的な状況が明らかではないため、お尋ねの「不利益(懲戒や処分)や指導等を課すことは法的に可能であるのか」について一概にお答えすることは困難であるが、一般に、合理的な理由なく不利益処分を課すことはできないと考えている。

 また、「葬儀委員長の決定」は、各府省の職員に対して黙とうの機会を設けるという趣旨であり、職員一人一人に対して黙とうすることを求めているものではなく、実際に各府省の職員が黙とうを行ったかどうかについては把握していない。