質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第八二号

反撃能力に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月十日

小西 洋之


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   反撃能力に関する質問主意書

 政府が改定の閣議決定を行うところの「国家安全保障戦略」をはじめとするいわゆる安保関連三文書の改定後の三文書(以下「三文書」という。)について以下、質問する。答弁に際しては、答弁時点での三文書等に係る事実関係に基づき答弁を行うこと。また、質問の事項が三文書の一部のものにしか記載されていないものであっても、三文書に関する質問として誠実に答弁すること。

一 三文書における反撃能力の具体的な内容及びその政策的な目的・意義について説明されたい。また、この反撃能力の対象として具体的にどこの国を想定しているのか(北朝鮮、ロシア、中国は含まれているのか)。さらには、反撃能力として整備するミサイルにスタンド・オフ・ミサイル以外の種別のミサイルも定められている(あるいは、予定等されている)のか。

二 前記一について、この反撃能力はスタンド・オフ防衛能力以外にどのような装備によって行うこととしているのか。また、いわゆるアクティブ・サイバー・ディフェンスは反撃能力の一環として位置付けられているのか。

三 反撃能力として整備するスタンド・オフ・ミサイルは、従来の「自衛隊員の安全を確保しつつ、侵攻を効果的に阻止するために相手の脅威圏外から対処するためのもの」(政府答弁)であるスタンド・オフ・ミサイルとは別のミサイル弾頭として整備していくのか。両者を併用するものもあるのではないかと考えるところ、陸海空自衛隊のそれぞれの整備及び運用方針について示されたい。

四 反撃能力として整備するミサイル弾頭はどれぐらいの量となるのか。また、そうした量の相手国領域の打撃のためのミサイルを保有することが、憲法第九条に定める必要最小限の武力の行使に適合するのか。

五 政府は本年十二月六日の参議院外交防衛委員会において、反撃能力の対象(標的)は軍事目標に限定されると答弁しているが、三文書に定める反撃能力の対象(標的)として相手国の軍事的な指揮系統機能、政権中枢機能、あるいは日本への武力攻撃の遂行に必要な産業基盤も含むのか。対象について具体的に示されたい。

六 日本に対する武力攻撃の意図を持つ国は、日米同盟の下で日本を防衛する義務のある米国と武力紛争を行う決意、覚悟を保有しなければならないことについて、本年十二月六日の参議院外交防衛委員会において林外務大臣は「我が国に武力攻撃を行おうとするいかなる国も、そのような立場を認識していないということは想定し難いと思われます。」と答弁しているが、それにもかかわらず、なぜ日本が自ら反撃能力を持つその軍事的な必要性があるのか。政府は「世界最強の米国の戦力によりまして日本防衛があるということはそのとおりでございます」と答弁しているところ、この米国の戦力による抑止力にも関わらず、政府答弁にある「相手国の戦略的、戦術的な計算を複雑化」させるために我が国が行う反撃能力が必要であるとするところの政策的な必要性と合理性について具体的に説明されたい。

七 スタンド・オフ・ミサイルの反撃能力の整備及び運用は米軍と共同して行うのか。その場合、米軍が我が国が反撃能力の対象とする国と武力紛争を行う場合には、日本は米軍の武力紛争の相手国から実際に当該相手国を攻撃する、あるいは攻撃しうる敵国と見なされて却って我が国の安全保障上のリスクが増大する危険はないのか。

八 政府が参議院外交防衛委員会で述べたいわゆる安全保障のジレンマについて説明するとともに、三文書に定める反撃能力の保有が、北朝鮮、中国、ロシアとの関係で安全保障のジレンマや軍拡競争に陥ることがないのかについてそれぞれ具体的に政府の見解を示されたい。

九 三文書に定める反撃能力の保有が、日中関係に与える影響について政府の見解を示されたい。また、中国の孔鉉佑駐日大使は、今月開催された「第十八回東京―北京フォーラム」において、新戦略上の中国の位置付けが「脅威」や「挑戦」とされることに対して重大な懸念を表明した旨報じられている。新戦略上の中国の位置付けが外交・経済を始めとする日中関係に及ぼす影響について、政府の見解を説明されたい。

十 北朝鮮や中国のミサイル戦力の質と量を考えたときに、三文書に定める反撃能力の保有は、抑止力及び対処力として軍事的に合理性を有するものかについて見解を示されたい。

十一 三文書に定める反撃能力は海上自衛隊の護衛艦から発進する航空機が発射するミサイルによる能力も含むのか。

十二 三文書の「統合ミサイル防衛(IAMD)」能力について説明するとともに、これが米国のIAMDとどのように連携し運用するか説明されたい。

十三 我が国が米軍の敵基地攻撃能力を補助したとしても、湾岸戦争のケース(スカッド・ハント)を分析する限り、敵弾道ミサイル戦力等に対する制圧効果の観点からは、それほど大きな違いをもたらすことはなく、抑止の効果もほとんどないとの指摘もあるが、政府の見解如何。

十四 昭和三十一年二月二十九日の衆議院内閣委員会において船田防衛庁長官(当時)が鳩山総理答弁を代読し「たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。」と答弁していることについて、今般の反撃能力の保有は、米国が日本を守る防衛がある中で、「他に手段がない万やむを得ない」と言えるのか、憲法第九条との関係も示しつつ答弁されたい。

十五 本年十二月六日の参議院外交防衛委員会において林外務大臣は、安全保障のジレンマについて、「この安全保障のジレンマは防がなきゃいけませんので、諸外国に対して自国の安全保障政策の透明性を確保するということが重要であると考えております。したがって、そのためにもこの諸外国と対話をするということが重要であるというふうに考えておりますし、同時に、周辺国等に対しても、そうした対話の場も使いながら、軍事力の透明性を高めるように求めていくということが重要であるというふうに考えております。」と答弁しているが、今般の反撃能力の保有について、周辺諸国に説明した実績もしくは今後説明する用意はあるか。

十六 日本が反撃能力の保有によって得る抑止力及び対処力を具体的に述べられたい。この対処力には、いわゆるミサイル戦(相手国とのミサイルの撃ち合い)における対処力も含むのか。

十七 反撃能力の行使によって日本が攻撃されていないにも関わらず、日本が他国とともに敵地に攻撃を行った場合、相手国からみれば、日本が先制攻撃を行ったと見なされる危惧があることについて、政府の見解を示されたい。

  右質問する。