質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第八〇号

薬価の中間年改定の在り方等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月十日

小西 洋之


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   薬価の中間年改定の在り方等に関する質問主意書

 私は、第二百八回国会において提出した「毎年薬価改定の見直しに関する質問主意書」(第二百八回国会質問第四四号)において、令和三年四月に初めて行われた薬価の中間年改定の改定対象品目が全品目の約七割に達し、製薬企業、医薬品卸業者、医療機関、薬局等に対して極めて大きな影響を及ぼしたこと、薬価改定による薬価の引下げが各製薬企業の医薬品の製造及び研究開発能力を奪うだけでなく、日本国内で医薬品の開発・製造・販売を行うモチベーションを低下させ、創薬によるイノベーションを阻害しかねないこと等について指摘した。政府は、これに対する答弁書(内閣参質二〇八第四四号。以下「前回答弁書」という。)において、毎年薬価改定については市場実勢価格を踏まえて行っているものであるが、「令和四年度薬価制度改革の骨子」(令和三年十二月二十二日中央社会保険医療協議会了解)において、「診療報酬改定がない年の薬価改定の在り方については、引き続き検討する」とされているところであり、これに基づき、今後必要な検討を行ってまいりたいと答弁している。

 本年九月から開催されている、厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」においても、関係団体から、毎年薬価改定を継続すると薬価が倍速で低下し、新薬価格の急速な下落が研究開発への投資余力をそぐことになること、将来の新薬の上市価格だけではなく後発品の薬価水準にも影響し、安定供給に支障を来す可能性があること、中間年の薬価改定実施における薬価引下げ、右肩上がりのガソリン代・電気代が医薬品卸の収益構造の悪化に拍車をかけていること等の懸念が示されている。

 また、本年十月二十六日に開催された中央社会保険医療協議会薬価専門部会(第百八十九回)では、製薬団体から、直近の円安や原油高、ロシアのウクライナ侵攻の影響等を受けた原材料の高騰等により、医薬品の研究開発や生産等に大きな影響が生じている等の意見が示されている。

 以上の現状認識を踏まえ、以下質問する。

一 光熱費等の物価高騰による影響の大きい医療機関や介護施設等については、診療報酬や介護報酬の見直しではなく、「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」による支援を行うこととされている。一方、物価高騰による影響を受けているのは製薬企業も同様であるところ、医療機関等で保険診療に用いられる医療用医薬品の価格については、診療報酬と同様に公定価格とされているため価格転嫁は不可能となっている。そこで、物価高騰により事業経営に著しい支障が生じている製薬企業への支援を行うため、薬価の緊急引上げの実施又は医療機関や介護施設等と同様、交付金等による一時的な財政支援を実施する必要があると考えるが、政府の見解如何。

二 前回答弁書では、診療報酬改定がない年の薬価改定の在り方について、今後必要な検討を行ってまいりたい旨を答弁している。その一方、令和五年度の中間年改定に向けて、令和四年度薬価調査が実施されているところであり、令和三年度改定と同様、多くの品目が改定対象となることが懸念されている。円安や物価高騰等による影響が今後も続くことが見込まれる中、来年度の中間年改定については、薬価調査の結果だけではなく、薬価調査後の市況の変化等を反映する必要があると考えるが、政府の見解如何。

三 低価格の後発医薬品については、前述の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」において、「現在の流通・薬価制度の下では、多くの後発医薬品の供給継続が困難であり、ジェネリック業界は次回の中間年改定について受け入れられる状況ではございません。」との切実な意見が示されている。また、後発医薬品全体で製造原価が薬価の八割を超える品目が三割以上を占めるとの調査結果も示されているところ、薬価という公定価格制度の下で、多くの後発医薬品企業が昨今の物価高騰に対応する体力がないことは明らかである。ついては、来年度に予定されている薬価の中間年改定、とりわけ後発医薬品の中間年改定については、一時的に中止する必要があると考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。