質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第七九号

寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月十日

小西 洋之


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務等に関する質問主意書

一 法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(以下「法」という。)の第三条各号の事項を配慮すべき事項として規定した趣旨について説明されたい。これらの事項に係る事態であれば個人に対する権利侵害が生じていると考えられるものを類型化等したものなのか。

二 法第三条について、寄附の勧誘を行い、第三条第一号の「寄附の勧誘が個人の自由な意思を抑圧し、その勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥」っている相手方から寄附が行われたのであれば、そのことだけをもって、民法の不法行為が存在する、あるいは、その存在が推定や推認される、もしくは、認定されるものと考えてよいか。

 また、同条第二号の「生活の維持を困難にする」事態が生じる状態、また、同条第三号の「事項」を明らかにせず、同号の「誤認」をさせるおそれがある状態で、相手方に対し、寄附の勧誘を行い、その相手方から寄附が行われた場合についても、前記と同様なのではないか。

三 前記一及び二について、第三条第一号の「寄附の勧誘が個人の自由な意思を抑圧し、その勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態」、同条第二号の「生活の維持を困難にする」事態が生じる状態、同条第三号の「誤認」をさせるおそれがある状態であれば、個人に対する何らかの権利侵害があるものと考えてよいか。

四 仮に、前記二及び三について、不法行為あるいは個人に対する何らかの権利侵害が存在しない、あるいはその存在が推定や推認されない、もしくは、認定されない場合があると考えるのであれば、それは、どのような場合で、どのような理由によるものと考えるか。

五 前記二で問題としているケースでは、それぞれの「状態」が生じたことについて、法人等が、そうならないように配慮する義務を果たせていないことになる。そうであれば、少なくとも、不法行為の要件である「過失」は認められるのではないか。

六 政府は、「このような配慮義務を規定するということで、これに反するような不当な勧誘行為が行われた場合には、民法上の不法行為の認定、それに基づく損害賠償請求が容易になるということで、被害救済の実効性は高まるものというふうに考えておるところでございます」と答弁しているが、なぜ、「民法上の不法行為の認定が(中略)容易になる」と考えているのか。前記一から五までの質問とその答弁も踏まえつつ、見解を示されたい。

七 寄附の勧誘を行い、その相手方を第三条第一号の「寄附の勧誘が個人の自由な意思を抑圧し、その勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥」らせることは、民法第九十条の公序良俗に反するのではないか。

八 法第三条の規範の法的性質如何。第三条は、一般に基本理念や基本原則として定められる規定のような訓示的な規範にとどまらず、法人等に対し、具体的な法律上の義務を課した規定なのかどうか示されたい。また、法人等が配慮義務に反する行為をしたときには、行政法上「違法」と評価され、例えば、その是正のために第六条に定める勧告以外の行政指導についてもこれを行い得るのか。当該「違法」の評価に至らない場合の勧告以外の行政指導の可能性も含め答弁されたい。

九 法第三条に反していることについて、衆議院修正後の第六条で「第三条の規定に違反し」とせず、「第三条の規定を遵守していない」という表現が用いられているが、第三条は、「違反」を問うような性質のものではないのか。

十 衆議院修正後の第六条の「勧告」の要件として、「法人等が第三条の規定を遵守していないため、当該法人等から寄附の勧誘を受ける個人の権利の保護に著しい支障が生じていると明らかに認められる場合において、更に同様の支障が生ずるおそれが著しいと認めるとき」と定められているが、第三条の配慮義務が「遵守」されていなければ、自ずと「当該法人等から寄附の勧誘を受ける個人の権利の保護に著しい支障が生じていると明らかに認められる場合」に該当するのではないか。

 第三条の配慮義務が「遵守」されていない場合で、第六条の「著しい支障が生じていると明らかに認められる場合」に該当しない場合があるとすれば、それは、どのような場合で、どのような理由によるのか。

十一 第六条の勧告が行われた場合には、政府として「当該法人等から寄附の勧誘を受ける個人の権利の保護に著しい支障が生じていると明らかに認められる」と判断したことになる。そうであれば、当該勧告を行うことは、その基となった事案や、同様の手法で行われる寄附の勧誘について、不法行為が認定されるべきものであるとの政府の認識を明らかにし、事実上、当該個人の救済を助けることにつながると考えられるが、如何。

  右質問する。