質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第七七号

親の懲戒権の見直しと体罰の禁止に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月九日

牧山 ひろえ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   親の懲戒権の見直しと体罰の禁止に関する質問主意書

 民法等の一部を改正する法律案(第二百十回国会閣法第一二号)には、親の懲戒権の見直しと体罰の禁止が含まれている。これに関連し、以下のとおり質問する。

一 子どもが暴力の被害を受ける児童虐待の増加が、大きな社会問題となっている。厚生労働省の資料によれば、全国の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は、毎年、増加が続いており、今や二十万件を超えるほどになっている。こうした児童虐待の増加の理由について、政府はどのように分析しているのか。

二 親権者の懲戒権を定める民法第八百二十二条が今回の改正によって削除されることになるが、その理由として挙げられているのは、同条が児童虐待の口実に用いられていることにあるとされている。

 しかし、同条を削除するかどうかについて議論されたのは、今回が初めてではない。平成二十三年の民法等の改正が行われた際にも、同条を削除すべきとの意見があったが、結果的に見送られている。

 平成二十三年の時点において、懲戒権を定める民法第八百二十二条を削除しなかった理由を示されたい。また、そのような判断が妥当であったのか、政府の見解を示されたい。

三 今回新設される民法第八百二十一条には、親権を行う者は、第八百二十条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないとされている。

 この内容は子どもの利益につながるものであり、大変意義があると考えるが、法改正の実効性を高めるためには、まず、国民が禁止される内容を正しく把握しなくてはならない。

 そこで、具体的にどのような言動が禁止されるのか明らかにされたい。また、許される「しつけ」と許されない「体罰」との区別を具体的に明らかにされたい。

四 今回の改正で体罰が禁止されることになるが、この禁止規定に違反した場合のペナルティはどのようになるのか。体罰の禁止に違反した場合の法的効果やその後の支援・保護の施策について、政府の見解を示されたい。

五 厚生労働省の令和二年度子ども・子育て支援推進調査研究事業による「体罰等によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査 事業報告書」(株式会社キャンサースキャン)では、国民の約四割が、体罰が場合によっては必要だと考え、十八歳以下の子どもの養育者のうち三割超が、過去六か月以内に体罰を行ったとされる。国民の意識改革が必要と思わせる数字である。

 法改正を行っただけでは、なかなか意識の変化までは起こらないと考えるが、意識の変化を惹起するためにどのような周知をしていくのか。政府の方針を示されたい。

  右質問する。