質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第七四号

全国的な視点に立ったアイヌの経済的及び社会的状況の改善に向けた取組に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月九日

紙 智子


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   全国的な視点に立ったアイヌの経済的及び社会的状況の改善に向けた取組に関する質問主意書

 アイヌ施策推進法第三条第三項では、「アイヌ施策の推進は、国、地方公共団体その他の関係する者の相互の密接な連携を図りつつ、アイヌの人々が北海道のみならず全国において生活していることを踏まえて全国的な視点に立って行われなければならない。」としている。

 アイヌ政策検討市民会議が実施した「二〇二四年「アイヌ施策推進法」改正に向けてのアンケート調査報告書」(二〇二二年三月)によると、アイヌ施策推進法におけるアイヌ施策の範囲を生活保障や教育、雇用などにも広げるべきと思うかとの問いに、「思う」との回答が八十四・二%に達している。

 そこで、アイヌ施策推進法の施行後、アイヌの経済的及び社会的状況の改善状況について、以下、質問する。

一 二〇一一年の「「北海道外アイヌの生活実態調査」作業部会報告書」(アイヌ政策推進会議)によると、世帯年収は、「二百~三百万円未満」が最も多くなっているが、このうち三百万円未満の割合を比較すると、本調査(北海道外アイヌ)四十四・八%、北海道における調査(北海道内アイヌ)五十・九%、国民生活基礎調査(全国)三十三・二%となり、全国と比較して明らかな収入格差が見られる。

 二〇一五年の「北海道アイヌ民族生活実態調査報告」(北海道大学アイヌ・先住民研究センター)によると、「アイヌ世帯の平均年収は三百五十五・八万円」、「「平成二十五年国民生活基礎調査」によれば、北海道の平均年収は四百七十三・五万円」、「全国の平均年収は五百三十七・二万円」であって、全国平均とはおよそ年収で二百万円の大きな格差がある。

 北海道が実施した「平成二十九年北海道アイヌ生活実態調査」によると、生活意識として「とても苦しい」が二十七・一%、「多少困る」が四十七・八%、年収「二百万円未満」の世帯が十九・六%、生活保護受給世帯が八・九%である。

1 アイヌ世帯の年収が、北海道の平均や全国の平均と比較して、極端に低くなっている原因、要因をどのように分析しているか、政府の見解を明らかにされたい。

2 アイヌ施策推進法は、「アイヌの人々が北海道のみならず全国において生活していることを踏まえて全国的な視点に立って行われなければならない」としているが、同法を受けて、全国的なアイヌ生活実態調査を実施したのか。実施していないなら、その理由、さらには今後の計画を明らかにされたい。

二 「「北海道外アイヌの生活実態調査」作業部会報告書」(アイヌ政策推進会議)において、年金制度に加入又は受給していない比率は、本調査(北海道外アイヌ)が十八・六%、北海道における調査(北海道内アイヌ)が八・三%である。

1 無年金者が発生した要因を、どのように分析しているか。

2 年金制度に加入又は受給していない比率の最新のデータを示されたい。

3 アイヌ施策推進法施行後の無年金者への支援措置を明らかにされたい。

三 国際連合の「先住民族の権利に関する国際連合宣言」は、第二十一条において「先住民族は、その経済的及び社会的状況((中略)健康並びに社会保障の分野における状況を含む)の改善についての権利を差別なく有する」、「国は(中略)効果的な措置及び適当な場合には特別の措置をとる。先住民族に属する高齢者、女子、青少年、児童及び障害者の権利及び特別のニーズについては、特別に注意を払う」とし、第二十二条でも「この宣言の実施に当たり、先住民族に属する高齢者、女子、青少年、児童及び障害者の権利及び特別のニーズについては、特別の注意を払う」としている。「特別の措置」、「特別の注意を払う」としているが、政府の施策を示されたい。

  右質問する。