質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第七三号

開放型スプリンクラー設備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月九日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   開放型スプリンクラー設備に関する質問主意書

 本年九月二十四日の午後一時頃、静岡県裾野市の裾野市民文化センター大ホールにおいて、舞台の天井部に設置された開放型スプリンクラー設備(以下「本件設備」という。)が突然作動して放水を開始した。舞台上にいた「シンフォニエッタ静岡」の関係者のうち五人が負傷し、楽器(弦楽器、管楽器、打楽器)及び楽譜など合わせて百点以上が被害を受けた。加えて裾野市が所有するピアノ及び舞台上の設備の修理にも多額の費用がかかるとされ、被害総額は数億円から十数億円規模に及ぶとみられる。次の事項について質問する。

一 本件設備は消防法により要求されるもので、天井高さ六メートルあるいは十メートルを超える高天井の建物、ホール、劇場などに多く設置されている。本件設備は過去に国内の建物において故障、故意あるいは過失による非火災時の一斉開放弁の開放により、建物内の広範囲への放水事例を発生させていることが疑われるが、政府は具体的な件数や被害の程度などの実態を把握しているか。再発防止のためにも可能な限りの調査が必要なのではないのか。

二 本件設備は建物内で発生した火災の消火あるいは制御を目的として設置されているものと理解しているが、その有効性が疑われる。過去の火災において本件設備がどのくらい有効に機能したかを評価する上で、設備が設置されていた建物における火災発生件数、設備が作動した件数及び作動しなかった件数、設備が作動して消火に至った件数、これらの値から計算される設備が有効であった割合をそれぞれ把握しているか。

 もしデータを把握していないようであれば、全国の消防本部に過去の火災事例を調査依頼するべきではないか。

三 本件設備は主に石油化学プラント等に設置されるものであり、海外においては高天井の建物及びホールや劇場の舞台部などの平面部を防護する消火設備としては設置されていない(額縁舞台の舞台部と客席を区画するために開口面を垂直に防護する場合等を除く)。このことを政府は把握しているか。

四 本件設備の非火災時の放水による人的及び経済的損害が他にも発生していて、さらに火災における設備の有効性を示すデータが存在しないようであれば、国内の他の建物における再発防止策として法改正を行い、高天井の建物及びホールや劇場等の舞台部においては海外の例にならって消火設備を設置するべきではないか。改修が困難な既設の建物においては、一斉開放弁の二次側の閉止弁を常時閉として火災時にのみ開とすることを認める等の対策を検討するべきではないか。

五 一昨年と昨年に機械式駐車場に設置された全域放出型二酸化炭素消火設備の誤作動によって死傷事故が計三件発生している。海外では駐車場及び機械式駐車場にこういった設備は設置されておらず、この設備は我が国独自の考えに基づいて設置されている。それらの事例や今回の事例のように消火設備の意図せぬ作動によって国民の生命及び財産が危険にさらされることは今後あってはならない。我が国以外ではスプリンクラー等の消火設備の基本的な考え方や技術は標準化されつつある。米国では年間数万件という我が国とは比較にならない規模でスプリンクラー設備の有効性を検証している。国民の生命と財産を守るためにも我が国独自の考えに固執するべきではなく、今後は海外で十分な実績がありかつ有効性と安全性が検証されたものを導入するべきではないか。

六 米国の火災統計等をみると、スプリンクラー設備等の消火設備は適切に設置されていれば火災による生命や財産へのリスクを著しく下げられることが想定される。一方、非科学的あるいは非現実的な技術基準により設置された消火設備は火災時に有効に機能せずにその役割を果たさないことが考えられる。また、故障、故意あるいは過失による非火災時の作動によって人命の損失や財産への損害を生じさせてしまうことも考えられる。これでは本末転倒である。今後、消火設備の技術基準を制定する立場である総務省消防庁及び消火設備の設置を指導する立場である各自治体の消防本部はその責任が重大であることを認識するべきであり、かつ責任の所在を明確にするべきではないか。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

 右質問する。