質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第七一号

公営住宅の入居に際し保証人確保が困難な人の入居確保に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月九日

田村 智子


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   公営住宅の入居に際し保証人確保が困難な人の入居確保に関する質問主意書

 国土交通省は、単身高齢者などが保証人を確保できないため公営住宅に入居できない事態が生じないようにすべきであり、保証人の確保を公営住宅への入居に際しての前提とすることから転換すべき、との立場から二つの通知を発している(平成三十年三月三十日国住備第五〇三号「公営住宅への入居に際しての取扱いについて」、令和二年二月二十日国住備第一三〇号「公営住宅への入居に際しての保証人の取扱いについて」)。また、標準条例(案)を改正し、保証人に関する規定を削除した(平成三十年三月三十日国住備第五〇五号「「公営住宅管理標準条例(案)について」の改正について」)。

 総務省中部管区行政評価局は、令和四年十月五日、保証人の確保が困難な人の公営住宅の入居に関する調査結果を公表し、国土交通省中部地方整備局に対し改善を求める所見を通知した(総務省中部管区行政評価局「保証人の確保が困難な人の公営住宅への入居に関する調査 結果報告書」。以下「総務省調査」という。)。

 「総務省調査」によれば、中部地方の四県(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県)九十五市町の九十九事業主体中、保証人規定がないのはわずか十四事業主体であり、令和三年度以降において、保証人規定を削除した自治体は見られない。

 保証人規定を残している事業主体では、申込書やホームページ等で規定の周知を図っているため、保証人を確保できないとして公営住宅への入居申込みすら断念している場合もあると考えられる。「総務省調査」によれば、身寄りのない単身高齢者などが公営住宅への入居を拒まれかねない。保証人規定は、公営住宅が住宅セーフティネットの基盤としての役割を果たす上で大きな障害となっている。

 そこで、以下質問する。

一 「総務省調査」では、公営住宅入居時に保証人確保を要求されることにより、公営住宅の入居希望者は、(1)入居を辞退せざるをえなくなる、(2)保証人確保に大きな負担を求められる(保証人の数、保証人の収入面での厳格な要件)等が指摘されている。

 「総務省調査」における保証人の確保ができないとの理由による入居辞退数を示されたい。

 また、「総務省調査」において、保証人を確保できないために入居申込みそのものを断念するに至ったケースとしてどのような事例が把握されているか。

二 「総務省調査」は中部管区行政評価局に「保証人を見つけられず困っている」などの相談が寄せられていることから実施されたと聞いているが、中部管区行政評価局以外でも同様の相談は寄せられているか。また、管区行政評価局ごとに相談件数の状況を把握していれば、数字を示されたい。

三 全国の公営住宅につき、事業主体数、入居時の保証人規定が削除されずに残っている事業主体数を、都道府県ごとに示されたい。

四 「総務省調査」は、国土交通省中部地方整備局に対し改善所見を示した。

1 「総務省調査」では、事業主体が懸念する主な懸念事項として家賃収納率の低下、入居者の急病等緊急時の対応だとし、保証人規定を削除した事業主体は、対策として早期かつ細やかな納付指導、緊急連絡先届の提出などを対応として行っている。その結果、家賃収納率の低下は特段見られない、支障は特になしと回答したとされている。政府としてこれらの対応策や、収納率に与える影響についてどのように評価をしているか。保証人規定の削除への懸念に対する施策として有効と考えるか。

2 「総務省調査」では、保証人規定の削除を実施した事業主体は、その効果として入居に係る事務の負担軽減、保証人の確保が困難という理由により入居を辞退した事例の解消などを挙げているが、政府としても保証規定の削除で同様の効果が期待できると認識しているか。

3 「総務省調査」では、保証人規定を残している事業主体に国に求める支援を聞いているが、保証人規定を削除することによって生じる金銭負担(滞納家賃)の補が最も多く、次いで他の事業主体における取組情報の共有を挙げている。政府としてどのような対策を行っているか。

4 「総務省調査」では、保証人規定の削除のために全国の六十六事業主体を独自に調査した事業主体もあったこと、保証人規定の削除をするに当たって他の事業主体の削除状況を考慮したという事業主体が最多であることが明らかになっている。保証人規定の削除を進める上で、首長、財政部局や議会への説明のための情報共有は重要である。他の事業主体の情報共有について全国的な情報を把握できる立場の国が、事例を聞き取り事業体の規模ごとに得られる効果や懸念に対する対策を整理するなどして、全事業主体に情報提供を行うべきではないか。政府の見解如何。

五 「総務省調査」を受けて、全国の公営住宅で入居時保証人規定の削除を進める具体的な改善策について

1 国土交通省は、「総務省調査」と同等以上の内容の調査を全国規模で行うか。また、全国で、保証人確保の必要により公営住宅の入居希望者が入居辞退に追い込まれないようにするため、いかなる施策を採っているか。

2 緊急時の対応の懸念に対して、日常的な情報共有など福祉部局との連携が必要である。国土交通省は、厚生労働省等と連携して、保証人規定の削除を進めるため各自治体の住宅部門と福祉部門の連携を進める施策を推進、または検討しているか。

3 「総務省調査」によれば、保証人規定を残したまま免除規定や機関保証を導入しても、保証人確保の困難を理由とする入居辞退が発生しているとされる。この点、免除規定や機関保証に頼ることなく、保証人規定を削除する立場で改善策を進めるか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。