質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第六八号

原発避難計画の策定に対する国の支援に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月九日

山本 太郎


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   原発避難計画の策定に対する国の支援に関する質問主意書

 原子力規制委員会が定めた原子力災害対策指針によれば、災害対策重点区域内の自治体に対して原子力災害に備えた避難計画をあらかじめ策定しておくよう求めている。計画策定に関しては、国の原子力防災会議が平成二十五年九月三日に発表した「地域防災計画の充実に向けた今後の対応」において、内閣府原子力災害対策担当室(現内閣府原子力防災担当)が避難計画の充実化を支援すると定められている。内閣府の支援を受けて自治体が策定した避難計画を含む緊急時対応は原子力防災会議において了承を受けるものと承知している。内閣府による計画策定支援について、以下質問する。

一 原子力防災会議における過去の緊急時対応の了承事例を見ると、新規制基準に基づく安全審査に合格した後、当該原発が再稼働する前に了承されている。法的には明確にされていないが、避難計画が未策定であれば緊急時対応の了承はできず、緊急時対応の了承がなければ再稼働は実質的にできない、との考え方に政府は同意するか。

二 岸田文雄総理大臣は令和四年八月二十四日に行われた「GX実行会議」において、来年夏以降に日本原子力発電東海第二原子力発電所を含む原発七基の再稼働を目指す方針を示した。しかし、同原発三十キロ圏内の災害重点対策区域内にある十四市町村のうち、避難計画を策定済みであるのは五市町にとどまり、令和三年三月十八日の水戸地裁判決は「原子力災害対策指針の想定する段階的避難等の防護措置が実現可能な避難計画及びこれを実行し得る体制が整えられているというにはほど遠い状態にある」として、運転(再稼働)してはならないと命じた。実現可能な避難計画及び当該避難計画を実行し得る体制が整っていないと司法が判断する状況があっても、同原発の再稼働を認める意思があるのか、政府の見解を求める。

三 内閣府政策統括官(原子力防災担当)が平成二十七年三月二十日に公表した「地域原子力防災協議会の設置について」によると、原発のある十三地域ごとに地域原子力防災協議会(以下「協議会」という。)を設置するとともに、各協議会に作業部会を設置することとされた。また、内閣府原子力防災担当は協議会における協議等を踏まえ計画の具体化・充実化にかかる支援を行い、協議会においては、避難計画を含む緊急時対応が具体的かつ合理的なものであることの確認を行うこととされている。内閣府原子力防災担当のホームページで公表されている各協議会の活動状況を見ると、東海第二地域ではこれまで一度も協議会が開かれていない一方で、作業部会は計十一回開催されている。これを踏まえると、作業部会は策定支援の重要な会議体であるものと考える。作業部会の役割及び詳細な作業・議論の内容について明らかにされたい。

四 前述のホームページを詳細に見ると、作業部会については、出席者や発言者が記載されていない一~二枚程度の簡単な議事概要だけで、詳細な議事録は公表されていない。「行政文書の管理に関するガイドライン」では、経緯も含めた意思決定過程及び政策立案や事務・事業の方針に影響を及ぼす打合せ等の記録については文書を作成するよう求めている。避難計画策定に関わる重要な会議体であることから、計画の実効性を外部からも検証できるよう、作業部会を公開するか、あるいは出席者や発言者を明記した作業部会の逐語の議事録を作成して公表するか、議事録及び音声記録の行政文書開示請求を受けた場合には開示すべきものと考えるが、政府の見解を求める。

五 協議会及び作業部会の設置以前は、原発のある地域ごとに設置されたワーキングチームの会議において策定支援が行われていた。平成二十六年九月二十六日に開催された東海第二地域ワーキングチームの第二回会議については、出席者及び発言者を明記した逐語の議事録が作成され、行政文書の開示請求に対して開示されたものと承知している。作業部会に移行後は逐語の議事録が作成されていないか、あるいは未作成を理由に開示していないとすれば、意思決定過程の透明性が著しく低下したことになる。なぜこのような変更を行ったのか見解を求めるとともに、逐語の議事録及び音声記録を公開すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。