質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第六六号

PFOS流出の原因究明及び環境補足協定に基づく立入調査の実効性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月八日

牧山 ひろえ


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   PFOS流出の原因究明及び環境補足協定に基づく立入調査の実効性に関する質問主意書

一 人体に有害と言われる有機フッ素化合物「PFOS」の検出が、各地の米軍基地周辺で相次いでいる。汚染源となり得る工場等が周辺に存在しない地域もあり、米軍基地がPFOS汚染源ではないかと限りなく推定されるとする声が強い。

 米側は基地周辺でのPFOS検出との因果関係を認めようとしないが、否定の根拠も示さなければ、調査の内容も公表していない。米軍基地が汚染源である可能性を完全には否定できない以上、その可能性も含めた原因究明が必要と考えるが政府の認識を伺う。また、その可能性も折り込んだ原因究明の方法としてどのようなことが想定されるのか具体的に示されたい。

二 沖縄県では、市民団体の調査の結果、PFOSの血中濃度については宜野湾市や嘉手納町、金武町など全ての地域で環境省が昨年実施した全国調査の平均値を上回り、最も高かった北谷町では全国の三・一倍となった。

 市民団体は、県民の健康を守るために今回の調査結果をもって、基地周辺住民に対する大規模かつ詳細な血中濃度調査の実施を求め、今後も国や県に要請を続けるとしているが、国はこの要請に対してどのように回答するか。

三 先述した原因究明方法の一つとして、日米地位協定の「環境補足協定」で認められた地元自治体による立入調査が想定される。この環境補足協定は有害物質の流出など在日米軍基地に起因する環境汚染事故をめぐり、二〇一五年に締結された。今回のPFOS流出に際しても、神奈川県に所在する在日米軍厚木基地内への立入調査が本年十月六日に実施され、神奈川県内では環境補足協定に基づく初めての立入調査となった。

 しかし、その進め方は米軍の裁量に委ねられている。すなわち、環境補足協定に関する日米の合意では立入りについて、「合衆国軍隊の(中略)運用を妨げない方法によってのみ行うことができる」とされ、実施できた調査項目は希望した一部に過ぎなかった。そのため実態が解明できない名ばかりの調査で不十分との声が上がっている。

 自治体が希望した調査項目の一部を米軍側が拒否する場合、政府は米軍側にその理由を説明するよう働きかけるべきではないか。

四 環境補足協定では、米側の調査の受入れ義務までは明記されていない。そのため厚木基地と異なり、立入調査を認めないケースも出ている。まさにこのような事態で立入調査できないとすれば、環境補足協定そして地元自治体の立入調査の実効性が問われるのではないかと考えるが、政府の認識を伺う。

五 立入調査による検査結果を公表する際にも環境補足協定に基づく日米間の協議が必要となるとされる。過去には沖縄県が立入調査を実施したものの、結果の判明から公表まで五か月程度かかった事例もあるという。健康に関連する調査は、結果の公表の遅れが健康被害の発生や拡大に影響を与える可能性もある。立入調査の結果の公表は原則として結果が判明次第行うべきと考えるが政府の見解を示されたい。また、結果が判明してもすぐに公表しないケースがあるのはどのような理由によるものか明らかにされたい。

  右質問する。