質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第六〇号

我が国における潜在的な食料供給力と国内で完結できる食料供給体制の整備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月七日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   我が国における潜在的な食料供給力と国内で完結できる食料供給体制の整備に関する質問主意書

 ウクライナ危機に端を発し、世界的な食糧危機が叫ばれている。ここ数年、コロナ禍に加え、サバクトビバッタによる蝗害、欧州や北米での干ばつ、森林火災、中国南部での洪水、我が国での相次ぐ豪雨被害などの複合的な要因が食料供給危機の火種となっていたところ、ウクライナ戦争による危機が起き、さらに台湾有事の危機が迫るなどにより、国際的な環境下での安定的かつ円滑な食糧の生産、輸送、流通が妨げられる可能性が高まっている。

 農林水産省のウェブサイトには、「日本人が昔から食べてきた米や野菜、魚介類の自給率は、それぞれ米九十七%、野菜七十九%、魚介類五十二%と比較的高くなっています。これは昔から食べていた分、生産基盤や生産技術が受け継がれていることや、生鮮野菜は長期保存ができず輸入が難しい、魚介類は国内で新鮮なまま流通できるといった理由も考えられます。」とされている。

 しかし、我が国は、野菜の種の九十%を輸入に依存している。国内作付けによる野菜自体の自給率は八十%あるが、種を計算に入れると、真の自給率は八%と見ることもできる。同様に、鶏卵は、九十六%を自給できているとされているが、鶏の主たるエサであるトウモロコシの自給率は、統計上ゼロであり、種鶏はほぼ輸入に頼っている。

 いくら生産基盤や生産技術があっても、種や飼料が輸入できなくなれば、日本はたちまち食糧危機に陥ってしまう。

 表面的な統計に隠された実情を認識し、生産―供給―再生産のサイクルを真に国内で完結できる食料供給体制の整備のため、食料自給率を計算する際、生産に必要となる種・肥料など生産資材の自給率も総合的に検討した上で、我が国の食料安全保障政策を構築すべきと考える。

 この立場から、質問する。

一 野村哲郎農林水産大臣は、第二百十回国会衆議院予算委員会(令和四年十月十七日)において、「食料の安定供給というのは、これは国家の最大の基本的な責務の一つ」であり、「海外からの食料の輸入に支障があった場合でも、備蓄の活用なり、あるいは国内の緊急的な増産によりまして、食料供給を確保できるように対応することが必要」とし、適正な備蓄水準の確保や、事態に即した対応策のシミュレーションなど不測時に備えた取組を適切に実施している旨を答弁した。シーレーン断絶などによって、外国からの輸入品が一切入らなくなったと仮定した場合、現時点で備蓄及び緊急的な増産により何人分の食料がどのくらいの期間にわたって確保できるのかについて、農林水産省のシミュレーションなどを踏まえた政府の見解を示されたい。

二 休耕田・休耕地なども最大限活用した場合、我が国における潜在的な食料の供給力はどれくらいあるのかについて、米穀、麦等の穀物や主要野菜、畜産品や漁業産品なども含めての政府の見解を示されたい。

三 令和四年度第二次補正予算では、飼料自給率向上総合緊急対策の一環として、国産飼料の利用拡大を図るとされている。さらに、野村哲郎農林水産大臣は、第二百十回国会参議院農林水産委員会(令和四年十一月八日)において、「将来にわたって食料を安定的に確保していくということは、国内で生産できるものはできる限り国内で生産すると、そして、人材の、そのためには人材の確保なり、(中略)生産資材の確保にもしっかり取り組むことが必要だ」と述べている。国内で完結できる食料供給体制の整備は、わが国の安全保障に直結する問題であるところ、農業を担う人材の育成と確保、野菜の種や種鶏など、食糧生産の前提的存在となる「種」、飼料の国内完全調達等に向けた政府の具体的な取組、今後の戦略的な目標について示されたい。

  右質問する。