質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第五八号

メガソーラー事業によって引き起こされる森林の乱開発・土石流を防ぐための方策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月七日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   メガソーラー事業によって引き起こされる森林の乱開発・土石流を防ぐための方策に関する質問主意書

 令和三年七月三日に発生した熱海土石流災害は、死者二十七人、行方不明者一人の犠牲者を出した。その要因は、現土地所有者と旧土地所有者が造成した巨大な盛り土が長雨により崩落したことにあると言われている。

 国土交通省は、都道府県に対し、土石流発生のおそれがある「土石流危険渓流」では、規制範囲をダム付近に限定しないよう通達で繰り返し求めていた。それにもかかわらず、平成十一年に国と静岡県は、盛り土の崩落現場付近である逢初川上流域において、砂防ダムが設置されたことに伴う砂防指定地を、ダム付近に限定していた。このことにより、周辺域で盛り土が拡大し続け、それが土石流を発生させる大きな要因となった。

 一旦土石流が発生すればその被害は甚大かつ不可逆的となることから、我が国の国土、国民の生活と命を守るために、砂防指定に係る権限が国に帰属している。この度の災害では、県の申請を容認した国の対応の矛盾が浮き彫りとなっており、二度と同様のことを繰り返さないよう対策を徹底すべきである。

 一方、現土地所有者は、当該盛り土周辺の広大な土地を太陽光発電のための用地として買収したといわれる。その一部の土地に太陽光発電設備が設置され、その周辺の森林は違法伐採されていたことが分かっている。

 我が国は、国土の約七割を森林が占め、残りの三割の平野も余剰となる平地はほとんど存在しない。大規模太陽光発電事業に適した平地の土地が不十分であることは、FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)導入以前から分かりきっていたことであり、メガソーラー事業を推進すれば、森林に手を付けるほかなく、その乱開発が誘発される危険が生じることは明らかであった。

 これらを踏まえて、以下質問する。

一 政府は、メガソーラー事業を推奨するに当たり、森林の乱開発を防ぐため、また、土石流が発生する危険を防止するために、具体的にどのような施策をしてきたか、明らかにされたい。また、熱海土石流災害を踏まえ、今後、どのような対策が必要と考えているか、明らかにされたい。

二 都道府県の申請の有無にかかわらず、全国には砂防指定地とすべき土石流発生の危険地域が存在する。特に、大規模太陽光発電事業が予定されている場所において顕著である。このような砂防指定地とすべきと考えられる地域の情報について、明らかにされたい。

三 砂防指定の重要性を考えれば、都道府県の申請にかかわらず、国として、砂防指定地とすべき地域の有無を調査し、その旨都道府県と協議した上で速やかに砂防指定地を指定できるようにすべきと考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。