質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第五七号

NPOやNGO等の非営利組織や政治団体に寄附規制が適用されることへの懸念に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月七日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   NPOやNGO等の非営利組織や政治団体に寄附規制が適用されることへの懸念に関する質問主意書

 令和四年十二月一日、政府は、「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案」(以下「本法律案」という。)を閣議決定し、同日国会に提出した。本法律案は、旧統一教会に関する「霊感商法」の問題をきっかけとして起草されたものであるが、霊感商法にとどまらず、法人に対する寄附一般を幅広く規制する内容となっている。霊感商法等の被害者救済に取り組むことに反対するものではないが、我が国には、宗教法人以外にもNPOやNGO等の非営利組織や、政治団体など様々な団体があり、これらは活動資金の調達の多くの部分を寄附に依存しており、こうした団体を含む法人等にまで寄附規制の枠が適用されることについて、関係者から懸念の声が上がっている。

 例えば、特定非営利活動法人国際協力NGOセンターは本年十一月十四日付け「「寄付規制法案」に対する緊急声明」で、「日本における寄付行為は、宗教団体のみならず、私たち国際協力NGOをはじめとする非営利組織(NPO)や市民社会組織、市民社会活動団体の活動を支える大切な社会貢献活動です。その状況は団体によってさまざまであり、一律に規制することは実態になじみません」、「「寄付規制法案(仮称)」等の拙速な制定に強く反対すると共に、寄付者・NPO・NGO等の当事者を交えた丁寧な議論を行い、法制定の必要性や立法事実、法制定にかかる影響や効果等を検討することを求めます」と表明している。

 そもそも今回、この問題をきっかけとして開催された検討会は、「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」(消費者庁)のみであり、規制を受けることで多大な影響を受ける可能性がある様々な法人に対し、ヒアリングや実態調査等は行われていない。

 NPOやNGO等の非営利組織や政治団体は、世の中の課題を解決するために日々活動を行っている。政府は、これまで、「新しい公共」という考え方で、広く社会に貢献しようとする一般市民の活動が寄附によって賄われる世の中をつくるため、寄附税制の拡充等を進めてきた。しかしながら、罰則を伴うにもかかわらず関係団体等の詳細な調査や意見聴取を行わないまま今国会で成立が図られようとしている本法律案は、それぞれの団体がその活動目的を遂げるために寄附活動を展開するとともに、これに国民が応えていくというマインドと言論を委縮させることになりかねない。

 旧統一教会に限らず詐欺的な霊感商法やマインドコントロール下に被害者を置いての高額寄附取り立てなどによる被害の救済は、これが長く放置されてきた経緯を鑑みても早急に取り組まなければならないが、本法律案は救済という範疇にとどめることができない多くの団体に影響を与える寄附の規制の論点について、極めて不十分な検討、調査で進められてきたものと言わざるを得ない。

 こうした立場から、質問する。

一 本法律案の対象となるのは、宗教法人のみならず、幅広い団体に及ぶものであり、NGOやNPO団体からは、実態把握や聞き取り調査が行われていないことは遺憾で、寄附についての一律規制には慎重な議論が必要であるとの意見もある。これらの意見について、いかなる対応を行うのか。法運用の面で団体の活動や寄附を集めること、寄附を行うことに不必要なブレーキをかけることのないような配慮及び問題が生じた際の法改正を含む適切な対応を実施していくつもりはあるのか。

二 本法律案が成立することによって、政府が従来とってきた「新しい公共」推進方針は影響を受けるか、あるいは転換されるのか。そうでないならば、本法律案又は施行に際しての方針若しくは政令に「新しい公共」推進方針がどのように担保されていくのか、具体的に示すべきと考えるが、政府の見解如何。

三 松野博一官房長官は、本年十二月一日午後の会見で、本法律案について「成立した際も条文の解釈の明確化を図るなどにより、実効性のある制度とする」と述べた。この発言は、本法律案の条文が解釈上明確でない点が残されているということではないのか。本法律案が幅広く法人を対象としており、運用に当たり解釈に疑義が生じないような法律上の条文構成とすべきではないのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。