質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第五三号

関東大震災時の朝鮮人等虐殺事件における犠牲者の遺体処理に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十二月六日

杉尾 秀哉


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   関東大震災時の朝鮮人等虐殺事件における犠牲者の遺体処理に関する質問主意書

 政府は、令和四年五月二十六日に参議院議員有田芳生君(当時)が提出した「関東大震災時の朝鮮人等の虐殺事件における犠牲者の遺体処理に関する質問主意書」(第二百八回国会質問第五三号)に対する答弁(内閣参質二〇八第五三号)の「一について」及び「三から九までについて」で、「政府内に見当たらない」、「調査した限りでは、政府内にそれらの事実関係を把握することのできる記録が見当たらないことから、お尋ねについてお答えすることは困難である」と答弁したが、明らかに調査不足であると考えるので、以下質問する。

一 国立国会図書館憲政資料室に、「斎藤実関係文書」が所蔵されていることを政府は確認しているか。

二 「斎藤実関係文書」については、「斎藤実関係文書目録(書類の部一、二)(書翰の部一、二)」全四冊(憲政資料目録第十七~二十)国立国会図書館編刊、一九九三~一九九九という目録があり、インターネット上でも公開されている。このうち、「書類の部一」の百四十四頁に「十六 関東地方震災の朝鮮に及ぼしたる状況 朝鮮総督府警務局 大正十二年十二月 謄写 一綴」という文書綴のタイトルが記されている。この文書綴の中に「極秘 震災当時ニ於ケル不逞鮮人ノ行動及被殺鮮人ノ数之ニ対スル処置」(以下「この文書」という。)というタイトルの文書が記されていることを政府は確認できるか。

三 「斎藤実関係文書目録」(書類の部一)に記されているこの文書が、憲政資料室に所蔵されていることを政府は確認できるか。

四 この文書の中に「(三)処置 被殺鮮人死体始末ハ関係官憲ニ於テ区々ニナセルヨリ其ノ後更ニ左記一定ノ方針ノ下ニ処置セラレツツアルカ未タ遺骨引渡シヲ申出タル遺族ナシ而シテ此等被殺者ノ遺族ニ対スル慰藉方法其ノ他ニ就キテハ目下当局ニ於テ考慮中ナリ」、「一、埋葬シタルモノハ速ニ火葬トスルコト」、「二、遺骨ハ内鮮人判明セサル様処置スルコト」、「三、被殺者姓名判明セル者ニ対シ遺族カ引取方申出テタルトキハ其ノ遺骨ヲ引渡スコト」、「四、遺族ニアラサル引取人ノ申出テアリタル場合ハ遺骨ヲ引渡ササルコト」、「五、起訴セラレタル事件ニシテ鮮人ニ被害アルモノハ速ニ其ノ遺骨ヲ不明ノ程度ニ始末スルコト」との記述があることを政府は確認できるか。

五 この文書の「二、遺骨ハ内鮮人判明セサル様処置スルコト」、「五、起訴セラレタル事件ニシテ鮮人ニ被害アルモノハ速ニ其ノ遺骨ヲ不明ノ程度ニ始末スルコト」という記述から、一九二三年当時の日本政府が「被殺者」である朝鮮人被害者の特定を困難にさせようとしていたのは明らかである。このような朝鮮人被害者の特定を困難にさせようとする方針について、現政府の見解を示されたい。

六 朝鮮人等虐殺事件の犠牲者の名前は現在もほとんどわかっていない。当時「日本国民」であった人々の被害について、政府が調査をするのは当然の義務である。したがって、「被殺者姓名判明セル者」がいるとすれば、その名簿が政府内にないかどうかを精査し、存在していたらその名前を速やかに遺族に伝える必要がある。政府は責任を持って犠牲者の名簿があるかどうかを精査する意思があるか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。