質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第五〇号

中国の海外警察拠点に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十一月三十日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   中国の海外警察拠点に関する再質問主意書

 私が先般提出した「中国の海外警察拠点に関する質問主意書」(第二百十回国会質問第二一号)に対する答弁書(内閣参質二一〇第二一号。以下「答弁書」という。)の内容を受け、改めて以下のとおり質問する。

 答弁書の「二について」では、政府は一般論とした上で、「外国又はその機関が我が国の領域内で公権力の行使と呼ばれるような行為を我が国の同意を得ずに行うことは、我が国に対する主権の侵害となると認識している」と答弁しているが、その姿勢は独立国家として当然である。

 しかし、答弁書の「一及び三について」では、「我が国の情報収集能力等を明らかにするおそれがある」として、政府は答弁を差し控えるとしているが、そもそも、本質問主意書で指摘するところの「中国警察の海外拠点の問題」については、既に週刊新潮十一月十七日号が「BBCが報じた驚愕の事実 中国が世界中に「警察署」無断設置 日本にもある「秘密拠点」に親中「国会議員」と「中国人女性秘書」」と題する記事において詳細を取り上げており、同記事は、警察庁関係者の証言として、中国の公安局が日本における「海外一一〇番」の連絡先として指定した電話番号は、「一般社団法人日本福州十邑社団聯合総会(千代田区)」の役員が名を連ねる別の団体の連絡先と同一である。そこで浮かび上がってくるのは、公安局が福州十邑聯合を隠れ蓑に海外警察の活動を行っているであろうことであると報じているほか、我が国の与党議員が日本福州十邑聯合総会の「高級顧問」であることも指摘している。

 また、各国の報道によれば、二〇二二年十月二十六日付けBBC報道は、オランダのメディア報道を引用して、「中国の海外警察拠点が外交サービスを提供し、欧州在住の中国反体制派を黙らせるのに利用されていた証拠があるとし、オランダ外務省報道官は、「その非公式な警察拠点の存在は違法である」と表明した」と報じているほか、同月二十七日付けBBC報道は、アイルランドのダブリンに所在する「中国の海外警察拠点」がアイルランド政府から閉鎖を命じられたと報じている。

 さらに、英国の安全保障担当閣外相(内務省)であるトム・トゥゲンハート氏は二〇二二年十一月一日、英国下院において演説し、英国内における未申告の警察拠点に関する報告は極めて憂慮すべきものであり、真剣に受け止めなければならないとして、警察当局に対し、国境を越えた抑圧に対して断固たる対処を行うよう要請するとともに、内務省に対して、国境を越えた抑圧への対処を緊急課題として見直すように要請するとの声明を発表し、英国政府の本問題に対する断固たる姿勢を示している。

 そのような中、我が国政府が当該事実の把握の有無でさえ「情報収集能力を明らかにするおそれがある」という不可解な理由で明らかにせず、また、必要な措置や対応についても何ら言及しないのは、そもそも国家の主権にかかる重大な問題に対して、これを厳正に取り扱う意識がなく、なかんずく関連した与党議員の当該問題への関与が明らかになることを避けようとする腰が引けた姿勢を相手国に露呈するものと考える。岸田首相は、直ちにこうした姿勢を改めて、説明責任を果たすとともに、国民及び我が国に様々な理由で滞在する人々の人身の安全を保障し、国家主権を厳に守るために必要な措置を採るべきである。

 以上、示してきた事実に照らせば、先の答弁書で示された内容は、国家主権にこそ言及するものの、事実認識も具体策も責任を持って示さないもので、国民に対して極めて不誠実である。また、外国政府による、かような違法行為を放置することは、我が国の主権侵害を暗に容認することであり、相手国に対して誤ったメッセージを発信し続け、将来、取り返しのつかない事態を招く要因となり得るものであり、政府として迅速かつ具体的な対応、措置が不可欠である。

 次に、「統一戦線工作組織が何を目的にどのような活動をしているのか」との質問に対しても、政府は「情報収集能力を明らかにするおそれがある」として答弁を控えるとしたが、二〇二一年一月五日付け中国新華社記事は、統一戦線工作の内容について「中共中央印発《中国共産党統一戦線工作条例》」で詳細に明らかにしているところである。

 これらは何ら秘匿されるべき情報ではないにもかかわらず、政府が答弁を控えるとしていることは、客観的、合理的理由がないだけでなく、統一戦線工作について、政府は、中国革命など共産主義革命の歴史を踏まえた上で、必要な知見に基づいて正しく分析能力を発揮できているかどうかについて、大きな懸念を抱かせるものである。

 以下質問する。

一 政府は答弁書で「外国又はその機関が我が国の領域内で公権力の行使と呼ばれるような行為を我が国の同意を得ずに行うことは、我が国に対する主権の侵害となる」との認識を明確にしているが、他方で、二〇二二年十一月二十五日付け、松野官房長官記者会見では、中国の海外警察拠点に関する質問に対して、「主権の侵害にあたるか否かについて具体の状況に即して判断すべきものと考えており、全体論としてお答えを控えさせて頂きたい」、「個別に即して判断する必要がある」との曖昧な回答をしており、国民の国家主権に対する懸念は強まるばかりである。

 政府は、我が国における重大な「主権侵害の具体の状況を判断する」ために、中国政府に事情説明を求め、要すれば警告し、また、関係機関を通じて実態を調査して必要なヒアリングを行い、国民に対してその調査結果を明らかにし、必要な措置を採る覚悟があるのかないのかを明らかにされたい。

二 「中共中央印発《中国共産党統一戦線工作条例》」を踏まえた上で、再度、統一戦線工作組織が我が国で何を目的にどのような活動をしているのか、それをどのように評価し対処するのか、明らかにされたい。

三 この度の「新潮」報道で明らかになった「中国の海外警察拠点」に関わる中国系団体「一般社団法人日本福州十邑社団聯合総会」の「高級顧問」に与党議員が就いているとされる事実について、岸田首相はいかなる対応を考えているか、明らかにされたい。

  右質問する。