質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第三四号

楽天モバイルの基地局建設が滞っていることに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十一月八日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   楽天モバイルの基地局建設が滞っていることに関する質問主意書

 令和四年十月十四日付朝日新聞デジタルの記事「突然告げられた「明日は休業」楽天モバイル基地局事業、最前線の今」(以下「記事」という。)によると、楽天モバイル株式会社(以下「楽天モバイル」という。)が日本ロジステック株式会社(以下「日本ロジ」という。)の資産を仮差押えしたがために、日本ロジの倉庫内にある基地局(楽天モバイルが提供する第四世代移動通信システムの普及のための特定基地局及び第五世代移動通信システムの普及のための特定基地局をいう。以下同じ。)建設のためのアンテナや無線機が取り出せない状況に陥っているという。しかも、この状態は今年九月から継続しており、基地局建設の遅れはすでに二か月を経過していることになる。

 記事において、日本ロジの資産が仮差押えされた原因は、楽天モバイル社内の共謀者とともに「日本ロジの役員が楽天モバイルに対して水増し請求をしていたことが背景にある。」とされている。つまり、楽天モバイル社内のガバナンスがしっかりしていれば、日本ロジの口座を仮差押えしなくて済んだし、日本ロジ内の基地局に使用するアンテナや無線機も出庫できたのだから、基地局建設もできたのである。電波の有効活用という観点から見れば、日本ロジの口座を差し押さえる前に、基地局建設のためのアンテナや無線機を他の倉庫に移管すれば、基地局建設が滞ることもなかったが、楽天モバイルはそうした措置を行わないままに、日本ロジの口座を差し押さえてしまった。

 右を踏まえて、以下質問する。

一 電波法第一条にいう「電波の公平且つ能率的な利用」は、政府が楽天モバイルに割り当てた一・七GHz帯、三・七GHz帯及び二十八GHz帯の電波にも適用されるのか。政府の見解如何。

二 総務大臣は、楽天モバイルに対して、令和四年十月一日付で、一・七GHz帯の電波を利用する特定無線局(電波法第二十七条の五第一項に規定する特定無線局をいう。以下同じ。)の包括免許(電波法第二十七条の五第二項に規定する包括免許をいう。以下同じ。)を与えているが(以下、楽天モバイルが包括免許人となった特定無線局を「一・七GHz帯の無線局」という。)、包括免許を与えるに当たっては、当然ながら、特定無線局の開設の根本的基準(平成九年郵政省令第七十二号)第二条第二号にいう「電気通信事業の実施について適切な計画を有し、かつ、当該計画を確実に実施するに足りる能力を有するものであること。」を満たさなければならない。総務大臣は、なぜ日本ロジ内において基地局に使用するアンテナや無線機が死蔵され、基地局建設が遅くとも令和四年九月一日に滞った楽天モバイルに対して、「当該計画を確実に実施するに足りる能力を有するものである」と判断したのか。政府の見解如何。

三 そもそも、政府は、日本ロジの倉庫内にある基地局に使用するアンテナや無線機が出庫できず、楽天モバイルの基地局建設が滞っていることを把握しているか。

四 包括免許に関する手続について

1 政府は、一・七GHz帯の無線局が開設されれば、遅くとも十五日以内に、楽天モバイルから特定無線局の運用の開始手続(電波法第二十七条の六第三項前段の手続をいう。以下同じ。)がなされるはずであるから、政府は、令和四年十月以降において、一・七GHz帯の無線局がいくつ開設されたか把握できる立場にある。楽天モバイルから政府に対して、特定無線局の運用の開始手続がなされた一・七GHz帯の無線局はいくつか。概算でよいので回答いただきたい。

2 前記1において、特定無線局の運用の開始手続がなされた一・七GHz帯の無線局がない場合、楽天モバイルは、政府に対し、特定無線局の運用開始の期限の延長手続(無線局免許手続規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十五号)第二十三条の二の特定無線局の運用開始の期限の延長手続をいう。)を行ったか。行っていないのであれば、なぜ、政府は、楽天モバイルが特定無線局の運用の開始手続(電波法第二十七条の六に規定される手続)をしていないのを容認しているのか。政府の見解如何。

3 電波法第二十七条の十六第二項第一号の「正当な理由」を例示されたい。

4 包括免許人の原因によって認定計画に係る特定基地局を当該認定計画に従って開設しないことは、電波法第二十七条の十六第二項第一号の「正当な理由」に該当するか。

五 政府は、KDDI株式会社に対し、5G導入に係る開設計画及び3・9G・4G普及に係る開設計画に関する令和三年度5G特定基地局開設の遅延に対する改善について、毎月末時点の取組状況を翌月七日までに報告するよう求めているが、楽天モバイルに対しては、令和四年九月から基地局建設に遅れが生じているのに対して、なんらの行政指導をしていない。このことは、電波法第一条にいう「公平」と言えるのか。政府の見解如何。

六 現状においてすら自らのガバナンスの甘さによって基地局建設を二か月以上滞らせておきながら、その影響を「軽微」としている楽天モバイルは、客観的に見て、株式会社NTTドコモ、KDDI株式会社及びソフトバンク株式会社(以下、この三社を「既存三社」という。)よりプラチナバンド(七百十八MHzから九百六十MHzのうち携帯電話基地局に割り当てられている周波数をいう。以下同じ。)を有効活用できるなどと評価できる会社ではなく、むしろ、電波は有限であり、能率的に利用しなければ国民の公共の福祉が阻害されるという電波法第一条の趣旨を理解していないと言わざるを得ない。最悪のシナリオは、楽天モバイルが、割り当てられたプラチナバンドの基地局建設の際に、今回のような事態が再発し、既存三社ユーザーは通信品質が下がって損をし、楽天モバイルユーザーは大してプラチナバンドの恩恵を受けられず、日本全体として、プラチナバンドを能率的に利用できていない状態になることである。政府は、既存三社に割り当てたプラチナバンドの一部を返上させることありきで考える前に、楽天モバイルが、プラチナバンドを既存三社より有効活用できるかどうかを十分検討すべきであり、既存三社より有効活用できないことが客観上明らかであれば、楽天モバイルにプラチナバンドを割り当てないことも考えるべきではないか。政府の見解如何。

七 建設業法との関係について

1 政府は、「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第四版)」(令和四年八月国土交通省 不動産・建設経済局建設業課)(以下「ガイドライン」という。)において、建設業法第十九条の三に違反するおそれがあるものとして「受注者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、当初契約で定めた工期を短縮し、又は延長せざるを得なくなり、また、これに伴って工事費用が増加したが、発注者が受注者からの協議に応じず、書面による契約変更を行わなかった場合」を例示しているが、もっぱら発注者の一方的事由によって発注者が受注者に支給する支給材料の納期を遅らせたことは、「受注者の責めに帰すべき事由がない」こととなりうるか。

 また、ガイドラインにおいて、政府は建設業法第十九条の五に違反するおそれがあるものとして「受注者の責めに帰さない理由により、当初の請負契約において定めた工期を変更する際、当該変更後の工事を施工するために通常よりもかなり短い期間を工期とする請負契約を締結した場合」を例示しているが、もっぱら発注者の一方的事由によって発注者が受注者に支給する支給材料の納期を遅らせたことは、「受注者の責めに帰さない理由」となりうるか。政府の見解如何。

2 記事によると、楽天モバイルは、自らが招いた支給材料の遅れに対し、「年間の発注計画に変更はない」とあるとおり、工期変更をしていない。基地局建設を担う男性が朝日新聞の取材に対し「これからなんとか帳尻を合わせてほしい、という意思表示だと理解しているが、(半導体供給不足との)ダブルパンチはさすがにつらい」、「現場を担う我々が「軽微」になるよう努力するほかない」、「内部の人間の不正が原因で起こった事態なら、発注数の見直しなど現場に寄り添った対応をしてほしい」と訴えている。もともと、建設業法第十九条の五が追加された趣旨は、「建設業における働き方改革のためには、適正な工期の確保が必要」(ガイドライン)であるためであったが、楽天モバイルのように、発注者の立場を利用して、「仕事がなくなるのが一番怖い」(記事)立場の者に、自らの支給材料の納期遅れに対する帳尻合わせを現場に背負わせる者がいると、建設業における働き方改革が進まず、新・担い手三法の趣旨が毀損されることは目に見えている。政府は、電波の能率的利用と、建設業における働き方改革と、どちらが重要なのか。政府の見解如何。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。