質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第三一号

文部科学省が医学部、歯学部、薬学部、看護学部を設置する大学に対し、HPVワクチンや新型コロナウイルスに係るワクチン接種に反対する団体を招いて授業を行うよう要請していることに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十一月二日

浜田 聡


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   文部科学省が医学部、歯学部、薬学部、看護学部を設置する大学に対し、HPVワクチンや新型コロナウイルスに係るワクチン接種に反対する団体を招いて授業を行うよう要請していることに関する質問主意書

 文部科学省は、「医学部、歯学部、薬学部、看護学部等における薬害問題に対する取組状況調査結果について(通知)」(令和四年九月五日付医学部、歯学部、薬学部、看護学部等を置く各国公私立大学長宛文部科学省高等教育局医学教育課長通知。以下「通知」という。)において、「各大学におかれては、悲惨な薬害を繰り返さないためにも、別添一、二を参考にし、学生だけでなく教職員を含め、薬害被害にあわれた方の意見・体験等を直接聞く機会を設け、適切な医療倫理・人権学習等の授業や、複数回にわたり様々な薬害被害者の声を聞き、再発防止について議論をする授業等を積極的に実施されるよう御検討願います。」と、薬害被害団体の意見を医学部、歯学部、薬学部、看護学部等(以下「医療従事者養成学部」といい、医師、歯科医師、薬剤師、看護師を合わせて「医療従事者」という。)の学生に聴かせるよう要請している。

 通知中の「別添一」資料のうち、全国薬害被害者団体連絡協議会の要望書には、次の記述がある。

 「【三】平成二十五年頃は、厚生労働省が積極的な接種の勧奨をしたHPVワクチン接種後の副反応によって、就学が困難になった生徒の調査を文部科学省が実施した結果、積極的な接種の勧奨がなくなり、新たな被害事例もなくなる方向に至った。しかし、今年四月に厚生労働省は再び、接種を個別に勧奨する通知を発出した。これを機に、製薬企業等の資金や意向を背景にした医学・医療関係者らによる、学校へのプロモーション活動や養護教諭等を介した接種勧奨の協力の要請がなされるおそれがありますが、現状を把握し報告して下さい。また、文部科学省は、絶対に、学校現場においてHPVワクチン接種を勧めるパンフレットやポスターの配布等の広報をしないよう要望します。また、平成二十五年と同様の調査を実施して下さい。」

 「【五】新型コロナワクチンによるワクチン接種後の心筋炎やアナフィラキシーショック等の重篤な副反応は若年層ほど発生割合が高いとされている一方で、新型コロナウイルスによる重篤な症状は若年層ほど少ないとされており、リスクとベネフィットが共に明らかではありません。このような状況の中で、国および文部科学省は、公教育を受ける児童、生徒に対して接種の推奨をして新たな薬害を引き起こすことが絶対にないようにして下さい。新型コロナワクチンの接種については、選択の自由を保障すると共に、接種しなかったことで不利益が生じたり、差別されたりすることがないよう十分な配慮策を講じて下さい。」

 我が国はHPVワクチンの接種が諸外国に比して遅れてしまったがゆえに、諸外国に比べて子宮頸がんにり患する女性が圧倒的に多く、それゆえ、HPVワクチンを接種していれば切除しなくていいはずの子宮を切除した女性が数多くいるほか、最悪の場合、子宮頸がんが主な原因で死亡する事例も数多い。HPVワクチン接種の遅れは、我が国の医療政策の大きな過ちの一つであると言える。

 また、新型コロナウイルスに係るワクチンについては、若年層であっても、未接種の方が新型コロナウイルス感染症によって重篤な後遺症に悩まされたり、最悪の場合死に至ることもあったりする。若年層における新型コロナウイルスに係るワクチンを接種するリスクとベネフィットを比較した場合、ベネフィットが上回っているがゆえに政府がこのワクチン接種を推奨をしていることと承知している。

 右を踏まえて、以下質問する。

一 政府は、通知中の「授業」を通じて、医療従事者養成学部の学生がHPVワクチンを接種しなかった結果、その学生が子宮頸がんにり患した場合、当然ながらその責任は政府にあるのであるから、国家賠償法第一条第一項により、政府に賠償責任があると考えるが、政府の見解如何。

二 政府は、新型コロナウイルスに係るワクチン接種について、若者に関して、リスクとベネフィットを比較してどちらが勝ると考えているのか。生後六か月から四歳の子供、五歳から十一歳までの子供、十二歳から十七歳までの子供に分けてそれぞれ示されたい。また、ベネフィットが勝ると考えているなら、なぜ、政府は、「新型コロナウイルスによる重篤な症状は若年層ほど少ないとされており、リスクとベネフィットが共に明らかではありません。」と主張する新型コロナウイルスに係るワクチン接種に懐疑的な団体の授業を、医療従事者養成学部に行うよう通知を出したのか。政府の見解如何。

三 政府は、「HPVワクチンは大規模な国際的薬害」であるとする主張や、「新型コロナワクチンによるワクチン接種後の心筋炎やアナフィラキシーショック等の重篤な副反応は若年層ほど発生割合が高いとされている一方で、新型コロナウイルスによる重篤な症状は若年層ほど少ないとされており、リスクとベネフィットが共に明らかではありません。」とする主張を紹介する授業を行うことで、「適切な医療倫理」が医療従事者に身に付くと考えているのか。政府の見解如何。また、医療従事者が患者に対し、同様の主張を紹介することは、「適切な医療倫理」といえるのか。政府の見解如何。

四 政府は、通知において医療従事者養成学部に「新型コロナウイルスによる重篤な症状は若年層ほど少ないとされており、リスクとベネフィットが共に明らかではありません。」と主張する団体を招いて「適切な医療倫理・人権学習等の授業」を行うことを要請しているが、当該授業を受けて医療従事者養成学部を卒業し、医療従事者となった者が同様の主張を行うことを容認しているのか。また、当該講義を受けて医療従事者となった者に同様の主張を聴かされた親が、子供に新型コロナウイルスに係るワクチンを接種することをやめたがために、子供が新型コロナウイルスにり患し、重篤な有害事象が生じた場合、国は、国家賠償法第一条第一項の規定により、当該子供に対し賠償責任を負うつもりなのか。政府の見解如何。

五 このような内容の通知を出している文部科学省の官僚に、医療従事者養成学部の授業内容を所管させることが果たして正しいのか、私は疑問を感じている。政府は、医療従事者養成学部の授業内容に関する事項を厚生労働省に移管すべきであり、文部科学省の所管から外すべきだと思うが、政府の見解如何。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。