質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第二七号

外国人留学生を増やすため岸田文雄総理大臣が命じた計画策定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十月二十六日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   外国人留学生を増やすため岸田文雄総理大臣が命じた計画策定に関する質問主意書

 令和四年八月二十九日のNHK報道によれば、岸田文雄総理大臣は永岡桂子文部科学大臣に対し、年間三十万人の外国人留学生の受入れを目指す政府の目標を抜本的に見直し、更に留学生を増やすための新たな計画を策定するよう指示したと報道されている。

 独立行政法人日本学生支援機構は二〇二一年五月一日現在における「留学生受け入れ数の多い大学」三十校を示しており、これらはそれぞれ千人~四千人超の留学生を受け入れている。この中でトップは東京大学の四千八十四人でこれは同大学の学生総数の十五・一%に達し、国内の私立大学も早稲田大学が三千九百六十七人の留学生を受け入れていることを筆頭に、かなりの数の学生を外国から受け入れているところである。「少子化」の影響で定員割れを起こしかねない地方の私立大学では、外国留学生の受け入れでかろうじて学校経営上の必要定数を埋めているとの話も聞く。

 そうした一方で、外国人留学生に関しては、平成三十一年、東京福祉大学で三年間に千人以上の留学生が所在不明となっていることが発覚し、「消えた留学生」問題として国会でも取り上げられた。この問題は、政府の「留学生三十万人計画」の裏側で、「勉強」よりも「出稼ぎ」を目的に来日した「留学生身分」の外国人労働者が日本の労働力不足を補っているという現実をも浮き彫りにした。東京福祉大学で起きたことは、氷山の一角に過ぎないと考える。

 「留学生三十万人計画」によって特に急増したのは、中国からの私費留学生である。少子化により日本人だけでは収容定員を満たすことのできない大学等の中には、これら私費留学生を積極的に受け入れて「定数割れ」を補っている大学等もある。そのような大学等では、多数の留学生を入学者選抜、教育研究指導、在籍管理などの受入れ体制が不十分なまま安易に受け入れ、結果として学習意欲等に問題のある留学生を在学させることにつながっているのではないかという懸念もある。現状において、上記のような懸念が払拭されず、実態の把握と問題の改善が図られないままに留学生を更に増やすための施策を行うことは、問題を更に深刻化させるだけである。

 日本における少子化動向の中で新入生を募集しても定員に満たないことをもって、学校存続を至上化させて外国人留学生を増やすことにつながっているなら、それは本末転倒である。「子育て支援」策の充実、教育負担の更なる低減で出生率の下落を抑えるとともに、大学を含めた教育機関、学校の適正配置も図り、人材と資源を有効に活用した上での充実した教育条件と学校整備を進めることこそ、我が国の将来を考えるなら留学生増員策に先んずべき施策であると考える。

 我が国においては、私立学校に対する運営補助金、私立大学等経常費補助金など多額の国家予算が計上されて学校教育の運営がなされている。その制度と資源は、日本人生徒、学生の勉学条件を充実させることにつなげてこそ、国の成長・発展に資するのであり、その第一義的な在り方を前提にした上での各国からの留学生の受入れであると考えるが、現在進められている施策はそうした方向に沿ったものになっていない。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 岸田文雄総理大臣が永岡桂子文部科学大臣に「三十万人留学生受入れ目標」の見直しによる更なる留学生受入れ計画の策定を命じたことについて、その目的と今後の日本の成長戦略にとってどのような意味があるのかを具体的に示されたい。

二 外国人学生数の比率が、全体の学生数の五十%を超えている大学、短期大学、高等専門学校は存在するか。過去五年間の実績で当該学校等の学校名あるいは学校法人名、当該学校等における外国人学生数及び学生総数に対する比率の推移を明らかにされたい。

三 過去五年間において、理事、役員に外国人が含まれている又は含まれていた大学、短期大学、高等専門学校の学校名あるいは学校法人名を明らかにされたい。

四 日本人生徒、学生に対する国の奨学金制度及び外国人留学生に対する奨学金制度について、その種類、貸付か返済不要のものかなどを明らかにするとともに、最近五年間の支給額と支給実績数(人数)を明らかにされたい。

  右質問する。