質問主意書

第210回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一三号

安倍元総理の国葬儀を実施した理由等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十月四日

小西 洋之


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   安倍元総理の国葬儀を実施した理由等に関する質問主意書

一 安倍元総理の国葬儀の費用の詳細について各支出項目を具体的にその積算の根拠も含めて説明されたい。

二 安倍元総理の国葬に対する国民の反対意見が賛成意見を上回っていた大きな要因の一つは、旧統一教会と安倍元総理との関係への不信感にあり、真相究明が不可欠と考えられる。岸田総理は、安倍元総理が亡くなられたため「その実態を十分に把握することに限界がある」としているが、限界があるからといって何も調査がなされないまま国葬儀が実施されたことは国民理解の観点からも不適切であり、岸田総理は自民党総裁として党幹事長などの役員に命じて関係者からヒアリングするなど調査を行うべきではないか。

三 岸田政権は旧統一教会の何が社会的に問題であると考えているのか。旧統一教会の関連団体の国際会議に複数回出席し、旧統一教会の教祖が出席する日本における会合にも出席している山際大臣は即刻辞職すべきではないか。

四 岸田総理は、安倍元総理を国葬で追悼しなければならないとする理由について、東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開などを挙げているが、それぞれについてどのような国葬に値するだけの実績があると考えているのか具体的に説明されたい。その際には、これらの実績についてそれが戦後の歴代の総理の実績に比べても国葬儀を行う必要があると考えるほどに卓越した功績であると考える理由についても具体的に説明されたい。

五 岸田総理が安倍元総理を国葬で追悼する理由として掲げる東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開などについて、国民各層の中には厳しい批判も存在するところである。政府は、こうした国民における安倍元総理の政策の否定的評価と「故人に対する敬意と弔意を国全体として表す儀式」(令和四年八月十日総理会見)、「安倍元総理の御功績や御尽力に対する敬意を表す」(九月八日衆議院議院運営委員会)とする国葬儀との関係をどのように考えているのか。国葬儀は、国民における安倍元総理の政策的評価を肯定、賛美の一面的なものとし、批判的な評価を押しつぶし、あるいは、国民世論を分断し、そして、後世における正当な検証を誤らせる危険のあるものではないか。

六 岸田総理は、「国として葬儀を執り行うことで、安倍元総理を追悼するとともに、我が国は、暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示してまいります。」と述べているが、なぜ安倍元総理の国葬を行うことが、我が国が暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示すことになるのか、更には、なぜ我が国が暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示すために国葬儀が必要不可欠であると考えているのか(それは葬儀行為によって示すべきものか、また、内閣葬では示せないものなのか等)について具体的に説明されたい。

七 岸田総理は、国葬儀の実施により「各国からの敬意と弔意に対し、日本国として礼節をもってお応えする」と述べているが、歴代の総理に対する内閣・自民党合同葬などの葬儀形式は礼節として足りないものであったと考えているのか。

 また、「各国で様々な形で、国全体を巻き込んでの敬意と弔意が表明されている」とする政府の評価について、過去の総理及び元総理の逝去の際の各国の対応と比べてその根拠を説明されたい。

八 岸田総理は、「特に、海外からの弔意を見ますと、合わせて千七百を超える多くの追悼のメッセージをいただいておりますが、多くが日本国民全体に対する哀悼の意を表する趣旨であるということからも、葬儀を国の儀式として実施することで、日本国として海外からの多くの敬意や弔意に礼節をもって応える、こうした必要もあると考えた次第であります。」と述べているが、過去の総理・元総理の逝去の際の海外からのメッセージには日本国民全体に対する哀悼の意を表する趣旨のものが少なかったのか、また、今回は当該趣旨の記載のあるメッセージがどれぐらいの割合で存在するのか、事実関係を示されたい。なお、通常は、総理や元総理の逝去の際に寄せる追悼メッセージにおいては、その国の国民に対する哀悼の意を表するものであると思われるところである。

九 岸田総理は、「安倍元総理については、民主主義の根幹たる国政選挙において六回にわたり国民の信任を得ながら、憲政史上最長の八年八か月にわたり内閣総理大臣の重責を担ったこと」を国葬の理由としているが、安倍元総理は、第二次安倍政権の二〇一五年には七十五日間、二〇一七年には九十八日間、二〇二〇年には四十七日間にわたって憲法第五十三条に違反して臨時国会の召集要求を無視するなどその政権運営には、国民各層において厳しい批判も存在する(二〇一七年には臨時国会後直ちに衆議院を解散しているなど、解散権の濫用も批判されている)。安倍政権が「憲政史上最長」であったからと言ってそれを国葬の理由とすることは安倍政治を一方的に肯定、賛美し、国民の間に分断を生じさせる等の問題を生じることになるのではないか。

十 安倍政権下で生じた決裁文書の改ざん文書の国会及び会計検査院への提出は、それを安倍政権も事実として認めている。この改ざん文書の提出行為は憲法及び国会法に基づく国政調査権を妨害し欺く違憲・違法の行為であるが、こうした暴挙を犯した政権の元総理に国葬を行うことは、憲法の定める国民主権及び議会制民主主義の原理の至高性に照らして不適切ではないか。

十一 安倍元総理については、二〇一八年西日本豪雨災害の当日の「赤坂自民亭」の酒宴や千葉県などへの二〇一九年台風十五号来襲の二日後の内閣改造強行などの災害対策、昭和四十七年政府見解の「外国の武力攻撃」の文言の曲解等による法解釈ですらない不正行為による憲法違反である集団的自衛権行使の容認やアベノミクスの異次元の金融緩和により日本銀行が債務超過の危機に陥り円安による価格高騰等を国民に強いるなど、その政策や政治手法については深刻かつ大きく賛否が分かれるものが多々あるところ、こうした政治家である安倍元総理を国葬で追悼することは日本社会に大きな分断をもたらすことになる、あるいは、なっているのではないか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。