質問主意書

第209回国会(臨時会)

質問主意書

質問第二三号

多くの憲法違反等を強行した安倍元総理に国家の儀式たる国葬儀を行うことの問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年八月五日

小西 洋之


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   多くの憲法違反等を強行した安倍元総理に国家の儀式たる国葬儀を行うことの問題に関する質問主意書

一 第二次安倍政権における平成二十六年七月一日の憲法第九条の解釈変更に係る閣議決定は、昭和四十七年政府見解の「外国の武力攻撃」の文言の曲解等による法解釈ですらない不正行為による憲法違反であるということが複数野党の公式見解や安保国会における元最高裁判事及び元内閣法制局長官の陳述や複数の憲法学者の学術論文、朝日新聞や東京新聞の社説報道等でも指摘されているところであるが、逆に、安倍政権による集団的自衛権行使の容認を合憲であると公言する政党や会派や憲法学者、報道機関(全国紙や民放キー局など)は具体的にどのようなものがあるのか示されたい(政党や会派は自由民主党、公明党だけであり、憲法学者や報道機関については殆ど存在しないと考えるがどうか。)。

 このように、憲法及び憲法が立脚する立憲主義及び法の支配の原理そのものを破壊する状況を生じさせ、国民世論に重大な分断を生じさせている安倍元総理を国葬儀により追悼することは、日本国が政治家や国民がこれらの諸原理や憲法を尊重し、社会に深刻な分断を孕まない国として存立していくためにも行うべきではないのではないか。

二 第二次安倍政権下においては、この他にも、臨時国会の召集義務違反、参議院による国政調査権の発動を欺いた森友学園問題の公文書の改ざん、黒川検事長の定年延長等々のあまたの憲法違反、法律違反行為や国会における総理や閣僚の答弁拒否の横行(官僚組織に対する答弁拒否の答弁書の作成の強要)などが生じており、立憲主義及び法の支配や憲法の定める国民主権、議会制民主主義を尊重し遵守する観点からも、安倍元総理の国葬儀は行うべきではないのではないか。

三 安倍元総理は平成二十五年三月二十九日の参議院予算委員会において、私小西洋之による「日本国憲法において個人の尊厳の尊重を包括的に定めた条文は何条ですか」、「幸福追求権を定めた条文は何条ですか」等との事前の十分な通告に基づく質疑に対し、「それをいきなり聞かれても、今お答えできません」などと答弁し、日本国憲法の目的である個人の尊厳の尊重を定める条文であるとともに、歴代政府解釈により憲法第九条において限定された個別的自衛権の行使を合憲とし同時にあらゆる集団的自衛権の行使を違憲とする唯一の根拠条文である憲法第十三条の存在もその趣旨も何ら知らず、かつ、勉強すらもしていないことを明白に知らしめた。

 このように、日本国憲法の目的の根拠条文(中核の条文)である第十三条の趣旨等を全く知ることもなく、日本国憲法の基本原理である平和主義が具体化した規定である第九条の歴代政府解釈を理解すらもしていないままに内閣総理大臣の職責に当たっていた安倍元総理を国葬儀により追悼することは、日本国として憲法に基づく政治たる立憲政治を否定することになってしまうことになり、安倍元総理の国葬儀は行うべきでないのではないか。

四 前記一から前記三までで指摘した憲法違反などの問題があるにも関わらず、安倍元総理を国民や国会も含む国家の儀式(葬儀)たる国葬儀で追悼しようとすることには、安倍政権下でのこれら憲法違反などの問題を正当化しようとする政治的な意図があるのではないか。もし、そうであるならば、厳粛に追悼すべき安倍元総理の命と尊厳の取扱いとしても極めて不適切ではないのか。

  右質問する。