質問主意書

第209回国会(臨時会)

質問主意書

質問第二〇号

拉致被害問題の解決における特定失踪者の調査及び拉致問題啓発、生存者情報の確認に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年八月五日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   拉致被害問題の解決における特定失踪者の調査及び拉致問題啓発、生存者情報の確認に関する質問主意書

 岸田文雄首相は歴代首相から引き継いで、「拉致被害問題の解決を最優先課題」とすると表明しているが、この間、二十年以上にわたり大きな進展のないまま推移している。これは、途切れがちな北朝鮮側との折衝など、交渉解決の道がなかなか拓かれない問題とあわせ、日本国内外から連れ去られた被害者をとりまく実情、犯行の実態の解明が進んでいないことも国際社会並びに北朝鮮側に対しても説得力を持って解決を迫れない重要な一因になっていると考えられる。

 特に政府認定の拉致被害者に加え、現在、八百七十一人とされる「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者」、いわゆる特定失踪者の調査、真相解明、はっきりした拉致被害の認定が進まない状況は深刻な事態である。これでは、相手側の犯行で多数の人を連れ去られた側が、いったい誰が明確に連れ去られたのか分からないままに「連れ去った者を返せ」と言っているに等しく、「双方が協力して真相解明」という過去の合意はあるにしても確実に被害者全員を救出することにつながるかどうかは、はなはだ心もとないものと考えざるを得ない。

 行方知れずとなった家族、親しい人が生死も不明なまま、ケースによっては半世紀以上も安否の確認と帰還を待ち続けている家族、関係者の心情を思うと、政府はもちろん国民ぐるみで真相解明をはかり、救出を図ることが日々切実さを増していることは明らかである。そのためにも、警察による捜査をはじめ、国民全体への問題の啓発とともに海外でも積極的に拉致被害問題の広報啓発活動を展開し、内外世論を喚起しながら問題解決への協力の輪を広げることが肝要と考える。

 以上の点に立ち、以下、質問する。

一 特定失踪者問題について

1 政府が把握している現在の総数と都道府県別数を示されたい。

2 特定失踪者に関する捜査・調査がいまだほとんど結末を見ず、前述したように相手側の犯行で多数の人を連れ去られた側が、いったい誰が明確に連れ去られたのか分からないままに「連れ去った者を返せ」と言っているに等しい状況について、政府はどう考えるのか。八百七十一名の特定失踪者について、真相を全て解明しなければ「全員救出」は果たせないと考えるが、政府はどう解決を図るのか示されたい。

3 特定失踪者問題は拉致被害問題の中で大きな比重を占めている。よりきめ細かな啓発キャンペーンにより国民の意識を高め、情報がより多く集まる条件を整えていくことが重要と考える。都道府県別の特定失踪者問題啓発など、特定失踪者家族会、特定失踪者問題調査会など関係者と協力、相談して市町村レベルまで啓発及び協力よびかけを推進すべきと考えるが、政府としてどのような方針を持っているのか、示されたい。

二 拉致被害者などの生存情報について

1 平成三十年四月十七日付「東京新聞」によれば、政府認定拉致被害者の田中実さんについて、平成二十六年に北朝鮮側が日本政府に対して「北朝鮮に入国していた」、「本人に帰国の意思はない」と伝えていたと報道した。また、共同通信は平成三十年三月十五日付で「日本政府が「拉致の可能性を排除できない」としている神戸市の元ラーメン店員の金田龍光さん」についても、北朝鮮側が「入国していた」と日本側に伝えていたと報道している。これらは、事実なのか。また、その後、この二人についての情報は得ているのか。それぞれ示されたい。

2 令和元年十一月十八日付「東京新聞」で、昭和五十二年に北朝鮮に拉致されたと政府に認定されている松本京子さんについて、「北朝鮮当局内で「手厚い医療を受けさせよ」との指示が出ているとの情報がある」と報じられた。情報元は韓国の拉致被害者でつくる拉北者家族会の代表で平壌の消息筋から入手した情報とされており、これによると松本さんは平成二十八年に視力低下などの症状で朝鮮赤十字総合病院に入院しているとの話も伝えられている。これらの消息情報について、政府はどのように調査しているのか、示されたい。

3 令和二年七月二十九日付「産経新聞」には、北朝鮮でスパイ容疑で拘束され平成三十年の米朝首脳会談前に解放されていた韓国系米国人、ドンチョル・キム氏が仕事に従事していた北朝鮮の羅先経済特区で平成十六年から同二十七年にかけて「七人の日本人に接触」し、他に二十五人前後が存在していると確認した旨述べている。その中には「死ぬ前に親戚に会いたい」と同氏に手紙を託した人もあるといい、これらの日本人が「拉致された人々ではないか」とドンチョル・キム氏は述べているが、政府はこれらについて調査しているのか、示されたい。

三 拉致被害者問題の海外啓発問題について

 現在、在外邦人によって自発的な拉致被害に関する海外啓発を映画「めぐみへの誓い」上映普及で行う運動が展開され始め、NPO法人「拉致問題映画海外上映実行委員会」の設立手続きが着手されている。この取組については、岸田文雄首相は先に日本維新の会共同代表の馬場伸幸衆議院議員の質問に答えて「外務省に支援を指示」と答弁している。既にロサンゼルスなどで上映会が実施されて現地で好評を博し、今秋にはポートランド、ハリウッド、ミュンヘンでの上映が具体化されているが、これらについて外務省及び拉致被害対策本部はいっそう支援を行うべきであり、以下の点について改善が図られるべきと考えるので、それぞれについて見解を示されたい。

1 イベントごとに外務省後援を得るために一カ月半以上の手続き期間が求められているが、これではイベント告知の段階で外務省後援を明記することができない。より早い承諾あるいは、年間イベント計画全体に対して外務省後援をあらかじめ承認することはできないのか。

2 外務省後援では財政的な支援などは行われていないのに、事後の詳細な収支報告を含む報告書提出が求められている。公的な後援であることによる事業の正当性の確認が必要なことは理解するものの、細かな収支までチェックするならば、広報費用(新聞などへの告知宣伝掲載費など)については「半額補助」などの支援策を考えられないか。会場費についても、ある程度の費用の支援を考えられないか。日本政府の在外関係施設使用の場合は、施設利用費の全額を支援できないか。

  右質問する。