質問主意書

第209回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一六号

外国資本による国土買収の実態把握に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年八月五日

神谷 宗幣


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   外国資本による国土買収の実態把握に関する質問主意書

 近年、外国資本、とりわけ相互主義の適用のない国の企業や個人による国土買収が進み、安全保障及び地域の安寧な生活の維持が脅かされるのではないかとの観点から国民の間に危機感が高まっている。また、外国資本の意図を呈して日本企業が土地を事実上、代行して買収する動きが見られるなど、外国資本による国土買収の取得方法が多様化していることから、実態が把握しにくい現状となっている。

 これらに鑑み、外国資本による国土買収についての調査を進め、実態を把握し、その情報が適切な形で国会にも説明されるべきと考える。

 そこで、以下質問する。

一 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第十条の七の二第一項では、「地域森林計画の対象となつている民有林について、新たに当該森林の土地の所有者となつた者は、農林水産省令で定める手続に従い、市町村の長にその旨を届け出なければならない」旨規定されている。しかし、平成二十九年七月に総務省行政評価局が刊行した報告書によると、森林法に基づく森林の土地所有者届出制度について、調査対象とした三十九市町村において、平成二十四年度から同二十七年度までの四年間で受理した森林の土地所有者届出の件数を調査したところ、最も多い市町村は、同四年間で六百九十八件の届出を受理していたのに対し、最も少ない市町村では、同四年間で一件しか受理していないなど、市町村によって届出件数に大きなばらつきがあることが判明している。

 これについて、同報告書では、未届者を把握していない市町村や、死亡届出時等を活用した有効な制度案内を実施していない市町村があることが指摘され、また、市町村は、森林の土地所有者届出制度の周知を徹底する必要があることについても指摘されている。

 一方、農林水産省においては、平成十八年から、外国資本による森林買収の事例について、都道府県を通じて調査を行い、毎年結果を公表している。この中で「居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われる者による森林買収の事例」が公表されているが、例えば、令和二年度は、北海道、神奈川県、京都府のわずか三道府県のみの事例となっている。前記報告書の内容を踏まえると、農林水産省が公表している外国資本による森林買収事例も実態を反映しているとは言い難い面があることは明らかである。

 以上を踏まえ、政府が、新たに当該森林の土地の所有者となった者及び自治体に対し、法令遵守を徹底させ、外国資本等による森林買収、所有の実態を把握するためには、どのような方策が考えられるか、示されたい。

二 国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)第一条は、「国土利用計画の策定に関し必要な事項について定めるとともに、土地利用基本計画の作成、土地取引の規制に関する措置その他土地利用を調整するための措置を講ずることにより、国土形成計画法(昭和二十五年法律第二百五号)による措置と相まつて、総合的かつ計画的な国土の利用を図ること」を目的としている。外国資本の国土買収が進行し、国民の危機意識が高まっている現状に鑑み、総合的かつ計画的な国土の利用を図るためには、取得者の属性をも把握することが重要なことは明らかである。

 国土利用計画法に基づく届出情報などの行政が保有する情報を参考に、都道府県を通じて外国資本による土地売買の実態調査をすることが可能であるかどうか、政府の認識を示されたい。

三 「外為法に基づく非居住者による本邦不動産の取得に関する報告実績」(平成二十三年二月財務省資料)によれば、平成十九年度から平成二十二年度までの外国資本による土地買収は三千七百ヘクタールにのぼることが報告されているようであるが、同報告は定期的には行われておらず、同資料もすでに行政文書としての保管期間が経過しているとのことであり、詳細は不明である。

 外国資本の国土買収が進んでいると考えられる現状で国民の危機意識が高まっていることに鑑み、状況を把握すべく、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第五十五条の三第一項第十二号及びこれを受けた外国為替の取引等の報告に関する省令第十二条に基づいて「本邦にある不動産又はこれに関する権利の取得に関する報告書」による報告を求められている外国人や外国資本による土地取得の状況(所在地、面積、金額等)を調査の上、定期的かつ詳細な報告を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。