第209回国会(臨時会)
質問第九号 国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和四年八月四日 浜田 聡
参議院議長 尾辻 秀久 殿 国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問主意書 令和四年七月十四日の記者会見(以下「七月会見」という。)において、岸田文雄総理は「この秋に国葬儀の形式で安倍晋三元総理の葬儀を行うことといたします。」、「国葬についてですが、(中略)平成十三年一月六日施行の内閣府設置法において、内閣府の所掌事務として、国の儀式に関する事務に関すること、これが明記されています。よって、国の儀式として行う国葬儀については、閣議決定を根拠として、行政が国を代表して行い得るものであると考えます。」と述べた。 政府が法令根拠を予め明らかにし、首相経験者の国葬儀が行われる事例は、今秋予定の安倍晋三元総理の葬儀(以下「今般の国葬儀」という。)が憲政史上初と承知している。憲政史上初の出来事の法的位置づけ等が整理された答弁書を後世に遺すため、以下質問する。 一 国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等について 1 昭和四十二年十月三十一日に行われた吉田茂元総理の国葬儀(以下「前回国葬儀」という。)について、「国葬儀につきましては、御承知のように法令の根拠はございません。」(第五十八回国会衆議院決算委員会議録第十五号、昭和四十三年五月九日)との当時の政府見解に変更はないか。 2 国葬については、大正十五年十月二十一日の国葬令(勅令第三百二十四号)の存否について、「旧憲法時代の国葬令、これは今日なくなっております。」との政府答弁がある(第五十八回国会衆議院決算委員会議録第十五号、昭和四十三年五月九日)。当時の政府見解に変更はないか。 3 国葬令第四条には「皇族ニ非サル者國葬ノ場合ニ於テハ喪儀ヲ行フ當日廢朝シ國民喪ヲ服ス」という明文規定があるが、政府は、「国葬ということの意義自体が、今日の考え方と、あるいは過去において使いましたものと、必ずしも観念が合致していない(中略)。国民をあげて喪に服するという考え方、あるいは国の経費をもって葬儀を行なう、この点、端的に申しますと、この二つの間にはかなり差があります。」と答弁している(第六十一回国会参議院内閣委員会会議録第二十五号、昭和四十四年七月一日)。今般の国葬儀は「国民をあげて喪に服する」と「国の経費をもって葬儀を行なう」のいずれに該当するか。 4 今般の国葬儀は国の儀式(内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)(以下「法」という。)第四条第三項第三十三号に規定する「国の儀式」をいう。以下同じ。)として行うという理解でよいか。異なる場合、今般の国葬儀の法令の根拠を示されたい。 5 令和二年十月十七日に行われた中曽根康弘元総理の内閣・自由民主党合同葬儀(以下「前回合同葬儀」という。)は内閣儀式等(法第四条第三項第三十三号に規定する「内閣の行う儀式及び行事」をいう。以下同じ。)として行われたという理解でよいか。異なる場合、前回合同葬儀の法令の根拠を示されたい。 6 法第四条第三項第三十三号に規定する事務は、法第三条第二項に並記される任務のうち、どの任務を達成するための事務なのか。 7 天皇又は皇族による公的行為又はその他の行為(内閣参質一八〇第七五号。以下同じ。)として行われる儀式は、全て宮内庁法(昭和二十二年法律第七十号)第二条第八号に規定する儀式(以下「宮内庁法規定儀式」という。)として行われるという理解でよいか。 8 法第四十八条及び宮内庁法第一条第一項の規定により、宮内庁は内閣府に置かれる。 (1) 国の儀式に憲法第七条第十号に規定する儀式(以下「憲法規定儀式」という。)又は宮内庁法規定儀式は含まれるか。 (2) 天皇が国の儀式として憲法規定儀式を行った事例はあるか。ある場合、直近の例を一つ示されたい。 (3) 天皇又は皇族が国の儀式として宮内庁法規定儀式を行った事例はあるか。ある場合、直近の例を一つ示されたい。 (4) 天皇又は皇族が国の儀式として憲法規定儀式及び宮内庁法規定儀式以外の儀式を行った事例はあるか。ある場合、直近の例を一つ示されたい。 (5) 過去の内閣儀式等において、天皇が国事行為、公的行為又はその他の行為を行った事例はあるか。ある場合、直近の例をそれぞれ一つずつ、なぜその分類になるのか理由も併せて示されたい。 9 宮内庁法規定儀式及び憲法規定儀式を除いた国の儀式の直近の例を、実施日とともに三つ示されたい。 10 前回合同葬儀を除いた内閣儀式等の直近の例を、実施日とともに三つ示されたい。 11 秋篠宮皇嗣殿下は令和三年十一月二十五日の記者会見で皇族の結婚に際し行われる儀式について「これは元々は、皇室親族令にあるものです。今はもうそれはありませんので、絶対にしなければいけないというものではないわけですけれども、慣習的に行われているものであり、私は本来であればそれは行うのが適当であると考えています。」と述べた。 (1) 今般の国葬儀において、天皇又は皇族が国事行為、公的行為又はその他行為を行う予定はあるか。また、国葬令によって行われた国葬の際に天皇又は皇族が行っていた儀式等を、今般の国葬の際に行う予定はあるか。その儀式は憲法規定儀式、国の儀式又は宮内庁法規定儀式のいずれに該当するか。 (2) 前回合同葬儀において、秋篠宮皇嗣同妃両殿下は公的行為を行ったか。行った場合、公的行為の内容を具体的に示されたい。 二 今般の国葬儀予定日である令和四年九月二十七日(以下「予定日」という。)について 1 前回国葬儀について、令和四年七月十六日の毎日新聞の記事には「「国民あげて冥福を祈る」の大号令の下、当日は競馬や競輪などの公営競技が中止となり、テレビから歌謡曲やクイズなどの娯楽番組が消え、全国各地に鳴り響くサイレンに合わせて職場や街頭で黙とうがささげられた」とある。予定日に公営競技の開催は予定されているか。当該公営競技の開催を中止するよう政府から要請を行った、又は行うことを予定しているか。政府の見解如何。 2 前回国葬儀の際は総理府(当時)から国民に対し「半日休むようにというようなこと、あるいは黙祷をささげましょうというようなこと、あるいは歌舞音曲を慎んだらどうですかということの御協力をお願い申し上げたい」(第五十六回国会衆議院逓信委員会議録第三号、昭和四十二年十一月九日)との記録がある。政府は予定日に前回国葬儀と同様の趣旨の協力を申し出た、又は申し出ることを予定しているか。 3 令和二年三月二十三日の参議院予算委員会において、新型コロナウイルス感染症の感染防止等のため、政府の要請により文化芸術イベントの開催の自粛を余儀なくされたイベント事業者等への経済支援についての質問に対し、安倍晋三総理(当時)は「イベントが今回の要請によって中止となり、言わば損失を受けられた方々はたくさんおられるんだろうと思います。(中略)文化芸術をこれは推奨し発展させていくために何ができるかということについて我々も真剣に考えていきたい」と答弁した。予定日において、行政機関が公共財産(国にあっては、国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第二条第一項に規定する国有財産、地方公共団体にあっては地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百三十八条一項に規定する公有財産をいう。以下同じ)等の利用を拒んだり、公共財産の利用にあたり「歌舞音曲を慎」むよう要請を行った、又は行うことを予定しているか。また、今般の国葬儀は、国有財産法第二十四条第一項「公共用、公用又は公益事業の用」、地方自治法第二百三十八条の四第九項「公用若しくは公共用」及び同法第二百三十八条の五第四項「公用又は公共用」に該当するか。 三 我が国における民主主義に対する暴力について 昭和五十年六月十六日に日本武道館で執行された佐藤榮作元総理の国民葬儀では「午後一時五十三分ごろ、三木総理が御遺骨を出迎えますために日本武道館正面玄関の歩道近くに立っておられましたところ」、男性が「叫びながら飛び出し、総理の背後から正面に回りまして、右の手をもって総理の顔面を殴打し、その場で直ちに警察官に取り押さえられた」(第七十五回国会衆議院地方行政委員会議録第二十五号、昭和五十年六月十七日)という事案が発生した。同委員会で小川新一郎委員(当時)は「日夜骨身を削って警護しております末端警察官に対して厳重な責任を取りつけるようなことがあってはならぬと私は思います」と述べた。また同委員会で山本弥之助委員(当時)は昭和三十五年十月十二日に発生した浅沼稲次郎暗殺事件を引いて政府を批判した。池田勇人総理(当時)は同十八日の衆議院本会議にて、同事件について「暴力は民主政治家にとって共通の敵である」等、追悼演説を行った(第三十六回国会衆議院本会議録第二号、昭和三十五年十月十八日)。岸田文雄総理も七月会見にて「我が国は、暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示してまいります。」と述べた。 1 右を踏まえ、我が国における民主主義に対する暴力について、政府の見解如何。 2 予定日の警護(警護要則(平成六年国家公安委員会規則第十八号。以下同じ。)に規定する警護をいう。以下同じ。)について、政府の見解如何。 3 政府は警護要則の改正等を検討しているか。 4 昭和四十八年、政府は大日本愛国党を含む十六団体(以下「十六団体」という。)が破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号。以下同じ。)に基づく公安調査庁の調査対象団体であると答弁した(第七十一回国会参議院法務委員会会議録第三号、昭和四十八年二月二十七日)。岸田内閣において、十六団体について破壊活動防止法に基づく公安調査庁の調査対象団体としていること及び警察庁が十六団体の動向に注意を払っていることに変わりはないか。 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十八日以内には答弁されたい。 右質問する。 |