質問主意書

第209回国会(臨時会)

質問主意書

質問第二号

北海道新幹線札幌延伸事業の事業費及び輸送密度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年八月三日

紙 智子


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   北海道新幹線札幌延伸事業の事業費及び輸送密度に関する質問主意書

 二〇二二年五月九日の参議院決算委員会で、財務省は、同年四月二十日の財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会(以下「財政制度等審議会」という。)において、二〇三〇年度末の北海道新幹線札幌延伸区間(新函館北斗―札幌間)(以下「札幌延伸区間」という。)の開業を目指す延伸工事について、総事業費が二〇一一年に国が見積もった一兆六千七百億円から、三千億円から七千億円程度膨らむ可能性があり、速やかに分析すべきとの説明を行った旨の答弁をしている。これを受けて、斉藤鉄夫国土交通大臣は、「鉄道・運輸機構において全体の工程や事業費の精査を行っていると承知しており、まずはこれらの作業を速やかに進める必要がある」と答弁している。

 また、国土交通省は、札幌延伸区間の輸送密度について、「平成二十九年の再評価時には一日一キロ当たり一万七千八百人キロとされ、平成二十四年度の着工時の予測値でございます一日一キロ当たり一万四千八百人キロ、これに比べて増加をいたして」いると答弁している。

 これら整備新幹線事業など公共工事においては、物価高騰、原油高騰などの影響が大きく、今後の事業評価に関わる問題であり、将来的な需要予測についても沿線住民や自治体の不安や疑問が解消されていないことから、改めて、以下質問する。

一 国土交通省は「札幌と小樽を結ぶ札樽トンネルでは、発生土の受入れ地確保の難航等により、掘削開始に当初計画から約三年の遅延が生じています。また、その他のトンネルにおいても巨大な岩魂の出現により工事が一時停止するなどの状況にある」と答弁している。そこで、「その他のトンネル」名並びに「巨大な岩魂」の大きさを明らかにされたい。また、「巨大な岩魂」は、どのような工法で掘削作業を進めるのか。自治体や住民への説明を行ったかどうか、行った場合はその日時を示されたい。

二 二〇三〇年度末の札幌延伸区間の開業を目指す延伸工事の工程や事業費の精査について、作業の進捗状況と精査の終了及び結果公表の時期について示されたい。

三 財務省は財政制度等審議会において、「工期や事業費の見通しについて、速やかに現状を踏まえた分析を行うとともに、必要に応じ今後の工期の柔軟化の検討も行うべき」と指摘したが、国土交通省及び独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構において、「全体の工程や事業費の精査」を行った結果は、影響が及ぶ沿線自治体、住民に対し、ただちに説明を行うとともに、意見を聞く場を設置する必要があると考えるが、政府の見解如何。

四 国土交通省は、札幌延伸区間の輸送密度について、二〇一二(平成二十四)年度の着工時の予測値が一日一キロ当たり一万四千八百人キロ、二〇一七(平成二十九)年度の事業再評価時が一万七千八百人キロであり、それぞれの時期のデータに基づいて算定したと答弁している。「輸送密度」の算定方法は、駅間別輸送人員(年間)を営業キロで割り、さらに三百六十五日で割ることで「輸送密度」(一日一キロ当たりの平均人数)を導き出すこととされている。札幌延伸区間に開設される予定の新幹線駅は四駅とされているが、輸送密度を算定する際に用いられた、新函館北斗―新八雲間、新八雲―長万部間、長万部―倶知安間、倶知安―新小樽間、新小樽―札幌間の、それぞれの駅間別輸送人員(年間)を明らかにされたい。

五 国土交通省は、「需要予測につきましては一般的な手法を用いて算定を行っておりまして、さらに活用し得る最新の調査結果や交通ネットワーク等に係るデータを用いて現況を再現できるようなモデルを構築して行ってきております」と答弁している。

 最新のデータを用いて見直したことにより鉄道の競争力が高いモデルになったことから、着工時の予測値と事業再評価時を比較して輸送人員が増加したとの説明であるが、鉄道の競争力が高くなった一方で、航空機、バス、旅客船、乗用車など他の交通機関の競争力がどのようになったのか、それにともなう輸送人員の変化についても明らかにされたい。

 また、二〇一五年度の全国幹線旅客純流動調査をもとに、全国の生成交通量を推計するに当たって、最新の人口とGDPのデータを反映させたことも、需要予測が引き上がった要因とされている。一日一キロ当たり一万七千八百人キロは、開業後五十年間の平均値とされているが、人口やGDPは五十年間現在と変らないという前提なのか、それとも新たな政府資料に基づいた人口やGDPの指標をもとに推計されたものであればどのようなものか明らかにされたい。

  右質問する。