質問主意書

第208回国会(常会)

答弁書

内閣参質二〇八第六二号
  令和四年六月二十一日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員塩村あやか君提出性犯罪・性暴力被害者等の医療費負担等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員塩村あやか君提出性犯罪・性暴力被害者等の医療費負担等に関する質問に対する答弁書

一の1から4までについて

 犯罪の被害を受けたことにより生じた傷病は、御指摘の「都道府県警察による医療費及びカウンセリング費用の公費負担制度」(以下「公費負担制度」という。)の対象者に係るものであるか否かにかかわらず、健康保険法(大正十一年法律第七十号)等において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象としている。また、被保険者等が保険給付を受ける場合には、被保険者証を提出するなどの方法により被保険者の資格確認を受け、当該給付を受けるものとされている。

一の5について

 お尋ねの「都道府県警察へ相談した性犯罪被害者数」については、その具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。なお、強制性交等及び強制わいせつの認知件数に関し、例えば、過去三年間の推移をみると、警察庁の犯罪統計によると、罪種別では、平成三十一年及び令和元年中は強制性交等が千四百五件及び強制わいせつが四千九百件、令和二年中は強制性交等が千三百三十二件及び強制わいせつが四千百五十四件、令和三年中は強制性交等が千三百八十八件及び強制わいせつが四千二百八十三件である。また、公費負担制度に関する「公費負担額」に関し、例えば、過去三年間の推移をみると、性犯罪被害者の緊急避妊等に要する経費に係るものとして、令和二年度は六千五万七千円、令和三年度は六千百十五万九千円、令和四年度は六千百十五万九千円を、性犯罪被害者を含む犯罪被害者等のカウンセリング費用に係るものとして、令和二年度は二千八百六十七万九千円、令和三年度は二千八百六十七万九千円、令和四年度は二千八百六十七万九千円を、警察庁においてそれぞれ予算措置し、都道府県に補助している。

 お尋ねの「性犯罪被害者が警察に相談できない、やむを得ない事情」については、例えば、被害者が自身の心情に応じ、警察への相談を希望しない場合等が想定される。

 警察においては、「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」(令和二年六月十一日性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議決定)等に基づき、都道府県警察の性犯罪捜査を担当する係への女性警察官の配置を推進するとともに、性犯罪が発生した場合に捜査に当たる性犯罪指定捜査員として女性警察官等を指定しているほか、各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「#8103」を二十四時間運用し、その国民への周知を図るなどして、性犯罪被害者が相談をしやすい環境の整備に努めている。

一の6について

 厚生労働省において、犯罪の被害を受けたことにより生じた傷病は、健康保険法等において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象としていることについて、医療機関に対して、地方厚生局(地方厚生支局を含む。)を通じて周知している。

二の1から4までについて

 犯罪の被害を受けたことにより生じた傷病は、「性暴力・配偶者暴力被害者等支援交付金(性犯罪・性暴力被害者支援事業)」の医療費等公費負担事業(以下「医療費等公費負担事業」という。)による支援が受けられる者であるか否かにかかわらず、健康保険法等において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象としている。また、被保険者等が保険給付を受ける場合には、被保険者証を提出するなどの方法により被保険者の資格確認を受け、当該給付を受けるものとされている。

二の5について

 医療費等公費負担事業について、例えば、過去三年間の推移をみると、国の予算額及び決算額は、令和元年度は九百七万八千円及び三百十五万四千円、令和二年度は九百十八万円及び三百七十九万四千円、令和三年度は千七百十七万円及び四百七十九万八千円であり、①令和元年度、②令和二年度及び③令和三年度における都道府県別の交付決定額をお示しすると、それぞれ次のとおりである。

 北海道 ①二十九万七千円 ②二十九万七千円 ③二十五万四千円

 青森県 ①十一万九千円 ②十万五千円 ③九万八千円

 岩手県 ①九万二千円 ②九万四千円 ③九万二千円

 宮城県 ①十五万六千円 ②二十一万五千円 ③二十九万八千円

 秋田県 ①四万二千円 ②三万九千円 ③三万七千円

 山形県 ①一万五千円 ②一万七千円 ③一万七千円

 福島県 ①三十万円 ②三十万円 ③三十一万九千円

 茨城県 ①十九万五千円 ②二十万円 ③二十万円

 栃木県 ①八万円 ②五万円 ③四万円

 群馬県 ①十四万六千円 ②十四万六千円 ③十七万円

 埼玉県 ①三十万円 ②三十万円 ③三十八万六千円

 千葉県 ①三十万円 ②三十万円 ③七十八万六千円

 東京都 ①三十万円 ②三十万円 ③百五万四千円

 神奈川県 ①三十万円 ②三十万円 ③四十九万八千円

 新潟県 ①七万円 ②七万円 ③七万円

 富山県 ①十八万五千円 ②十九万四千円 ③二十一万円

 石川県 ①十二万三千円 ②十二万三千円 ③十二万三千円

 福井県 ①十九万九千円 ②十九万九千円 ③十九万九千円

 山梨県 ①二十三万八千円 ②二十三万八千円 ③二十万九千円

 長野県 ①五万六千円 ②七万二千円 ③十一万円

 岐阜県 ①三十万円 ②二十九万三千円 ③二十七万四千円

 静岡県 ①三十万円 ②三十万円 ③三十六万三千円

 愛知県 ①なし ②二十九万九千円 ③二十九万九千円

 三重県 ①八万七千円 ②九万千円 ③七万五千円

 滋賀県 ①二十万円 ②二十万円 ③二十万円

 京都府 ①三十万円 ②三十万円 ③五十二万四千円

 大阪府 ①なし ②三十万円 ③三十万円

 兵庫県 ①三十万円 ②三十万円 ③二十八万三千円

 奈良県 ①二十五万円 ②十九万五千円 ③十四万七千円

 和歌山県 ①三十万円 ②三十万円 ③五十二万四千円

 鳥取県 ①二十二万千円 ②二十一万二千円 ③二十一万二千円

 島根県 ①十九万二千円 ②十九万二千円 ③十九万二千円

 岡山県 ①なし ②なし ③十五万四千円

 広島県 ①二十七万八千円 ②三十万円 ③五十二万六千円

 山口県 ①二十八万八千円 ②二十八万三千円 ③四十万七千円

 徳島県 ①九万七千円 ②九万七千円 ③九万七千円

 香川県 ①三十万円 ②三十万円 ③三十六万三千円

 愛媛県 ①十二万三千円 ②十二万三千円 ③三十万円

 高知県 ①十七万二千円 ②十七万二千円 ③十七万三千円

 福岡県 ①三十万円 ②三十万円 ③百二十万六千円

 佐賀県 ①なし ②なし ③なし

 長崎県 ①十六万九千円 ②十四万二千円 ③十四万四千円

 熊本県 ①八万円 ②五万円 ③五万二千円

 大分県 ①三十万円 ②三十万円 ③五十一万円

 宮崎県 ①二十一万四千円 ②二十一万四千円 ③二十一万四千円

 鹿児島県 ①二十万円 ②二十万円 ③二十万円

 沖縄県 ①三十万円 ②三十万円 ③六十二万七千円

二の6について

 医療費等公費負担事業については、被害者保護及び性犯罪の潜在化防止の観点から、公費負担制度とのバランスを考慮して交付率を定めているところであり、引き続き、必要な予算の確保に努めてまいりたい。

二の7について

 御指摘の「補助の在り方を改善することにより、医療機関を受診する性暴力・配偶者暴力被害者等の窓口負担を軽減」の意味するところが必ずしも明らかではないが、医療費等公費負担事業により、性犯罪・性暴力被害者の医療費等の負担軽減を図っているところであり、引き続き、当該事業により被害者負担の軽減を図ってまいりたい。

三について

 性犯罪・性暴力被害者に対する急性期の医療費支援については、「夜間休日対応のコールセンター設置に伴う相談対応の整備及び性犯罪・性暴力被害者に対する急性期の医療費支援について(通知)」(令和二年十二月二十五日付け府共第六百八十九号内閣府男女共同参画局男女間暴力対策課長通知)により、急性期の医療的支援を必要とする被害者が、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(以下「ワンストップ支援センター」という。)を通じて医療機関を受診した場合には、被害者の居住地及び被害の発生地にかかわらず、当該ワンストップ支援センターを所管する都道府県において医療費支援の対象とするよう依頼している。

四の1及び3について

 全国共通番号「#8103」については、各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる番号であり、全国共通番号「#8891」については、緊急避妊薬の処方、証拠採取等の医療的支援、弁護士を紹介するなどの法的支援、相談・カウンセリング等の心理的支援等、地域における性犯罪・性暴力被害者支援の中核的な役割を担うワンストップ支援センターにつながる番号であり、いずれの番号に相談した場合でも必要な支援が受けられることとなっている。

 被害者が自身の心情に応じて、いずれにも相談できるようにすることが重要と考えており、引き続き、これらの番号の周知・広報に努めてまいりたい。

四の2について

 全国共通番号「#8103」については、各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる番号であり、全国共通番号「#8891」については、都道府県のワンストップ支援センターにつながる番号であるため、警察庁及び内閣府はそれぞれの番号に寄せられた個々の情報の内容等を把握していないが、被害者からの申出等に応じ、都道府県警察と都道府県のワンストップ支援センターとの間で速やかに情報共有が行われる体制が構築されるなど、緊密な連携が行われているものと承知している。