質問主意書

第208回国会(常会)

答弁書

内閣参質二〇八第三四号
  令和四年四月十五日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員浜田聡君提出暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



      参議院議員浜田聡君提出暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する質問に対する答弁書

一及び二について

 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第四十八条の二第一項に規定する暗号資産については、資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項に規定する暗号資産とされている。

 いずれにせよ、御指摘の「モナコイン」については、御指摘の「その者に対して寄付をするために購入したモナコイン」を含め、同法に規定する暗号資産に該当するものとして所得税法第四十八条の二第一項に規定する暗号資産として取り扱っている。

三について

 所得税法上の棚卸資産は、同法第二条第一項第十六号において、「事業所得を生ずべき事業に係る商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産(有価証券、第四十八条の二第一項(暗号資産の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)に規定する暗号資産及び山林を除く。)で棚卸しをすべきもの」と規定されており、一般に販売目的で保有される資産と解されている。

四について

 所得税法上、同法第四十条に規定する棚卸資産の譲渡による所得は、事業所得又は雑所得に区分され、暗号資産の譲渡による所得も、事業所得又は雑所得に区分されることから、所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)第八十七条は、暗号資産について、「贈与等の場合の棚卸資産に準ずる資産」と位置付けているところ、御指摘の「モナコイン」については、暗号資産に該当し、御指摘の「たな卸資産に準ずる資産」に該当することとなる。

五について

 御指摘の「所得税法施行令第八十七条に規定する資産」については、所得税法第五十九条に規定する譲渡所得の基因となる資産に該当しない。

六及び七について

 お尋ねの相続により取得した棚卸資産の取得価額については、所得税法施行令第百三条第二項第一号の規定に基づき、被相続人の死亡の時において、当該被相続人が当該棚卸資産につきよるべきものとされていた評価の方法により評価することとなる。

 また、お尋ねの相続により取得した外国通貨の取得価額については、同令第百十九条の六第二項第一号の規定を踏まえ、被相続人の死亡の時において、当該被相続人が当該外国通貨につきよるべきものとされていた評価の方法により評価することとなる。

八について

 相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)上、相続により取得した暗号資産の価額は時価であるところ、その時価は、外国通貨の評価方法に準じて、当該相続により取得した暗号資産に係る暗号資産交換業者の公表する相続が生じた時の取引価格によって評価することとなる。

九について

 相続により取得した暗号資産の取得価額は、所得税法第四十八条の二第二項の委任を受けて相続により取得した暗号資産の取得価額を規定した所得税法施行令第百十九条の六第二項第一号の規定に基づき、被相続人の死亡の時において、当該被相続人がその暗号資産につきよるべきものとされていた評価の方法により評価することとなる。

 そのため、「所得税法における取扱いに反する」及び「所得税法の趣旨に適合するものではなく、法律による委任の根拠を欠き、憲法に違反する」との御指摘は当たらない。

十及び十五について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「金地金や宝石」については、一般的には資産の価値の増加益が生じるものであると考えられる。このため、その資産の譲渡益は資産の値上がりによる増加益になるものと考えられる。

十一について

 御指摘の「収集品としての支払手段や金地金と兌換可能な支払手段」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、その資産につき、資産の価値の増加益が生じるものであれば、その資産の譲渡益は資産の値上がりによる増加益になるものと考えられる。

十二について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「不換紙幣や旅行小切手」については、一般的には資産の価値の増加益が生じないものであると考えられる。このため、その資産の譲渡益は資産の値上がりによる増加益とは性質を異にするものと考えられる。

十三について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「コレクション用の古銭や記念硬貨」については、資産の価値の増加益が生じるものであれば、その資産の譲渡益は資産の値上がりによる増加益になるものと考えられる。

十四について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「不換紙幣や金銭債権」については、一般的には資産の価値の増加益が生じないものであると考えられる。このため、その資産の譲渡益は資産の値上がりによる増加益とは性質を異にするものと考えられる。

十六について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「指定席特急券や美術館入場券」については、資産の価値の増加益が生じるものであれば、その資産の譲渡益は資産の値上がりによる増加益になるものと考えられる。

十七について

 お尋ねの鉄道事業者が提供する乗車サービスについては、当該鉄道事業者が販売した指定席特急券と引換えに特急に乗車させるという役務の提供であれば、消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第二条第一項第八号に規定する資産の譲渡等に該当する。

十八について

 お尋ねの記録事業者が提供する記録サービスについては、他者が保有する暗号資産であるモナコインを対価として、あるデータベースに当該他者が指定する論文や数値などのデータを記録するという役務の提供であれば、消費税法第二条第一項第八号に規定する資産の譲渡等に該当する。

十九及び二十について

 御指摘の「モナコイン」を含む暗号資産については、所得税法第三十三条第一項に規定する「資産」には該当しないものとして取り扱っているところ、いずれにせよ、支払手段としての性質や資産の価値の増加益が生じる性質を複合的に有する資産については、同項に規定する「資産」に該当するか否かについて、個別具体的な資産の性質により判断されるものと考えている。

二十一について

 一定の先物取引による所得については、先物取引が、価格変動リスクの回避、公正かつ透明な価格指標の提供等の重要な役割を担っていることを踏まえ、幅広い投資家の先物市場への参加を促すことが重要であるとの観点等から、分離課税が採用されている。

 他方、暗号資産デリバティブ取引については、金融庁の「仮想通貨交換業等に関する研究会」報告書(平成三十年十二月二十一日)において、「原資産である仮想通貨の有用性についての評価が定まっておらず、また、現時点では専ら投機を助長している、との指摘もある中で、その積極的な社会的意義を見出し難い」等の見解が示されているところであり、こうした評価も含め総合的に検討した結果、分離課税の対象とはしないこととしたものである。