質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第七八号

中小企業の過剰債務と資金繰り対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年六月十五日

牧山 ひろえ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   中小企業の過剰債務と資金繰り対策に関する質問主意書

一 政府は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の初期から、政府系金融機関及び民間金融機関に対し、新規融資の申込みや既存融資の返済猶予・条件変更等に積極的に応ずることを求めるとともに、政府系金融機関や民間金融機関の実質無利子・無担保融資などの措置も講じてきた。日本政策金融公庫の融資承諾件数や信用保証協会の保証承諾件数を見ると、リーマン・ショックの影響を受けていた平成二十一年度の実績を大きく超える件数が累積しており、コロナ禍が企業の事業継続にとって極めて大きな脅威であることが明らかである。

 各種の対策により、この間、企業倒産件数は抑制的に推移し、二〇二一年の倒産件数は五十七年ぶりの低水準となった。もっとも、実質無利子・無担保融資の据置期間を満了して元本の返済を開始する企業が増えるにつれて、倒産件数が増加に転じる可能性も既に指摘されている。変異株の流行等が繰り返される中で本格的な事業活動の再開までには至っておらず、追加融資や再度の条件変更等により当分の間の息をつなぐ企業が少なくないことにも注意が必要である。さらに、ウクライナ情勢の悪化による影響も大きく懸念されるところである。こうした状況の下で、経済産業省、金融庁及び財務省は本年三月四日に「中小企業活性化パッケージ」を公表し、三月末が期限となっていた政府系金融機関による実質無利子・無担保融資を六月末まで延長した。

 これまで講じられてきた大規模な資金繰り対策の成果をどのように評価しているのか。また、新型コロナウイルス感染症の拡大は小康状態にあるとはいえ、長期にわたったコロナ禍による傷が深い中で、引き続き十分な資金繰り対策を講じていく必要性について、政府の認識を伺う。

二 コロナ禍が長期化する中で、資金繰り対策等により積み重なった中小企業の「過剰債務」が、今後の経営の足かせになるのではないかとの認識も多く見られる。今年二月の東京商工リサーチの調査では、回答した中小企業の三十四・七パーセントが過剰債務にあるとしており、業種別では飲食店や宿泊業などで高い割合を示している。

 昨年十一月の経済対策で示された過剰債務対策については、本年三月四日の「中小企業活性化パッケージ」において、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」を新たに策定し四月十五日から適用を開始することや、廃業時における経営者の個人破産回避に向け、「経営者保証ガイドライン」に基づく保証債務整理の申出を受けた場合には金融機関が誠実に対応するとの考え方を明確化することなどが示された。

 ポストコロナにおいても引き続き日本経済の担い手となる中小企業の経営再建のためには、感染症等への対応に迫られて事業継続を図るためにやむなく積み上がった過剰債務は、金融機関の協力も得ながら、多様な解決策を確保して早期に解消を図る仕組みを構築する必要があると考える。中小企業の過剰債務の実態をどのように把握し、解消のための取組を講じていくのか、また、経済対策に示されている「事業再構築のための私的整理円滑化のための法制整備」の検討はどのように進められているのか、伺う。

  右質問する。