質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第七五号

高速道路通行料金に精神障害者割引がないことに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年六月十五日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   高速道路通行料金に精神障害者割引がないことに関する質問主意書

 厚生労働省が実施した平成三十年度障害者雇用実態調査(以下「実態調査」という。)では、精神障害者で無期契約の正社員は二十五・〇%、発達障害者で無期契約の正社員は二十一・七%であり、換言すれば、精神障害者・発達障害者(以下、精神障害者と発達障害者を総称して「精神障害者等」という。)の七割以上が、不安定な立場で働いている。また、実態調査において平成三十年五月の平均賃金を見ると、精神障害者は十二万五千円、発達障害者は十二万七千円であり、平均勤続年数をみると、精神障害者は三年二か月、発達障害者は三年四か月となっている。

 一方、実態調査によると、身体障害者の正社員の割合は五十二・五%であり、平均賃金は二十一万五千円であり、平均勤続年数は十年二か月となっている。

 無論、障害の度合いは千差万別であり、この結果を素直に比較できない。しかし、現実として、一般に身体障害者より精神障害者等のほうが経済的に困窮していることを示唆していると考えることはできる。したがって、基本的に身体障害者に対して割引がなされている制度については、精神障害者に対しても分け隔てなく適用されるべきであり、これこそ、精神障害者の生活の向上と、差別解消につながると信じる。

 ところが、西日本高速道路株式会社は、ホームページにおいて精神障害者割引を設けない理由を、「障がい者割引制度は、通勤、通学、通院等の日常生活活動において、自家用車を利用されている障がい者のお客さまに対して、通行料金を割り引くことにより、走行条件の良い有料道路を快適にご利用いただき、自立と社会経済活動への参加を支援するために実施しているものです。また、障がい者割引の対象者につきましては、一般道路を通行することについて健常者よりも大きな苦痛、疲労を伴うというハンディキャップを有しているか等の観点から、関係機関と調整の上、策定してきたところです。一方で、現在の有料道路制度は、道路の建設・管理等に要する費用を借入金でまかない、お客さまからいただく料金収入で借入金を返済していくことで成り立っており、本割引については、国や自治体からの助成はなく、他のお客さまからいただいた通行料金が財源となっています。このため、割引適用の対象となる自動車の範囲については、他のお客さまから広く理解を得られるものとする必要があるため、一定の要件を設けさせていただいており、現状では、精神障がいをお持ちのお客さまは障がい者割引の対象となっておりません」と述べている。

 この理由は、一般に身体障害者より精神障害者等のほうが経済的に困窮していること、一般道路の通行において健常者よりも大きな苦痛、疲労を伴うというハンディキャップを有しているのは精神障害者も同じであることを無視しており、到底承服できるものではなく、高速道路株式会社法第一条の「国民経済の健全な発展と国民生活の向上に寄与することを目的とする」を没却するものとすらいえよう。

 右を踏まえて、以下質問する。

一 高速道路株式会社法第一条の「国民生活の向上」には、精神障害者等の生活の向上も含まれているか。政府の見解如何。

二 高速道路株式会社法第三条第一項で定められた株式の持ち分からすると、東日本高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、阪神高速道路株式会社及び本州四国連絡高速道路株式会社(以下「高速道路会社」という。)に対し、政府は精神障害者割引を導入する旨の議案を株主総会に提出する権利を有するが、なぜ、政府は、過去一度も高速道路通行料金に精神障害者割引を導入する旨の議案を提出しなかったのか。政府の見解如何。

三 高速道路会社のうち、政府が五割を超える株式を保有する会社の場合、政府は、単独で高速道路通行料金に精神障害者割引を導入する議案を株主総会に提出し、単独でこれを可決する権限を有するが、なぜ、政府は高速道路会社のうち、政府が五割を超える株式を保有する会社に対して、精神障害者割引を導入させなかったのか。政府の見解如何。

四 そもそも、政府は高速道路通行料金に対し精神障害者割引の導入を検討したか。政府の見解如何。

五 西日本高速道路株式会社がいうように、障害者割引には現状「国や自治体からの助成」はないが、今後、障害者割引に対し、国が助成を行う予定はあるか。政府の見解如何。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。