質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第六四号

電線関連産業における技術革新と省エネルギーへの貢献に対する支援策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年六月十日

矢田 わか子


       参議院議長 山東 昭子 殿



   電線関連産業における技術革新と省エネルギーへの貢献に対する支援策に関する質問主意書

 我が国の電線関連産業は、電力、通信、電気機械、建設等、多くの国内産業に多品種の電線・光ファイバーを提供し、我が国の経済の発展や国民生活の向上に貢献をしている。

 しかし、二〇二〇年からの新型コロナウイルス感染拡大とこれに伴う世界的な経済活動の停滞により、電線の需要は減退し、一部の製品については依然として需要の回復が遅れている状況にある。

 一方、日本政府が二〇五〇年のカーボンニュートラルの方針を発表したことにより、再生可能エネルギーの拡大や電力系統の整備、あるいは自動車のEV化の加速など、電線産業の環境対応能力が期待されている。さらにはGIGAスクールやデータセンターの新鋭化、5GやIoT技術など、情報化関連投資の拡大も見込まれる中、電線製造の技術革新が一段と求められている。このような状況の中、電線関連産業の育成に関し、以下のとおり質問する。

一 電線関連産業の環境問題への対応について

 二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向け、電線関連産業としても、電線・ケーブルの最適導体サイズの設計技術(ECSO)やダブル配線化等の環境配慮型技術のみならず、送配電ロスを低減することができる長距離直流海底光ケーブルや超電導電力ケーブルの開発・普及が求められている。これらの新技術・新製品の開発と国際標準化には官民・研究機関の協力体制が必要とされるが、政府としての今後の支援方針があれば明らかにされたい。

二 環境配慮型都市(スマートシティ)の建設促進について

 今日、エネルギーの効率化とともに防災対策や高齢化対策の視点を加えた環境配慮型都市(スマートシティ)の建設の普及が求められている。環境配慮型都市においては、多様なデータを横断的に収集・分析・活用することで安全で快適な都市生活を提供することができるが、エネルギーに関しては、再生可能エネルギーの最大活用とともに、電力の需給を効率よく調整できる次世代送電網(スマートグリッド)の構築が必要となる。特に送電に関しては、昼夜安定した電力供給や災害時の停電対策のために大型の蓄電池システムの構築や、外部からのサイバーテロに備えたセキュリティ対策の強化が不可欠である。環境配慮型都市の建設や次世代送電網の構築、さらには電力の安定供給に資する蓄電池システムの開発に関する民間の事業者への支援策について、政府の今後の取組方針を明らかにされたい。

三 無電柱化の促進策の強化について

 東京オリンピック・パラリンピックに向けて電柱の地中化事業が推進され、東京都では首都高速中央環状線内側エリア内の都道で無電柱化整備がおおむね完了したが、区・市・町道においてはいまだ道半ばの状況にある。都市部において林立している電柱や張り巡らせた電線は、歩行者や車いす利用者の通行を妨げ、良好な都市景観を損ねているばかりか、大規模地震や大型台風などの自然災害では、電柱倒壊による道路閉塞や断線などにより、避難や救急活動への支障とともに停電や通信障害が生じるリスクもある。このため、早急な無電柱化が求められるわけであるが、自治体における過去五年間の無電柱化の実施状況に関する国土交通省の調査によると、約八割が無電柱化事業を実施したことがないことが判明した。今後、政府として、市区町村への対応を含め、事業をどのように推進するのか、対応方針を示されたい。

四 電線関係製品の取引の適正化について

 電線関連産業においては、これまで、取引先との価格交渉において、値引きや運搬料のサービスなどの商取引慣習が残り、付加価値が適正に循環する実態にはなかった。このような業界の取引を改善するために、平成二十九年二月には経済産業省が「金属産業取引適正化ガイドライン」をまとめ、また平成二十八年二月には一般社団法人日本電線工業会が「電線業界の取引適正化のために」とするガイドラインを打ち出した。しかしながら、今日、各産業が厳しい経営環境に置かれる中で、これらガイドラインから逸脱したような取引の実態も見られ、部材提供側の収益が圧迫されるケースも報告されている。製造業における付加価値が適正に循環される取引環境を今一度、整備する必要があると考えるが、業界への指導強化を含め、政府としての取組方針を明らかにされたい。

  右質問する。