質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第六二号

性犯罪・性暴力被害者等の医療費負担等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年六月九日

塩村 あやか


       参議院議長 山東 昭子 殿



   性犯罪・性暴力被害者等の医療費負担等に関する質問主意書

 法務総合研究所が平成三十一年に実施した「第五回犯罪被害実態(暗数)調査」によると、性的事件に係る過去五年間の被害申告率は十四・三%にとどまっており、大多数の性的事件の被害者が事件を顕在化させず、泣き寝入りを余儀なくされていることが推測される。多くの被害者は、緊急に医療機関へ受診する必要がある状況に置かれても、他者へ知られることを恐れて受診せず、又は経済力の乏しさから医療費を負担できないこと等を理由に受診できない状況にあるおそれがある。

 本年四月から成年年齢が引き下げられ、特に若年層に性的被害が及ぶ危険性が高まる中、性犯罪・性暴力被害者等となった若年層が、将来への懸念や経済力の乏しさ等のため適切な医療を受診できない等の状況を早急に改善すべきとの観点から、以下質問する。

一 警察庁「都道府県警察による医療費及びカウンセリング費用の公費負担制度」について

1 当該制度の対象となる性犯罪被害者が医療機関を受診した場合は、保険適用の対象となるのか。

2 前記一の1に関し、適用対象である場合、保険適用について性犯罪被害者以外の者が受診した場合と異なる点はあるか。

3 前記一の1に関し、適用対象である場合、性犯罪被害者が匿名で保険診療を受けることができるのか。また、性犯罪被害者が匿名を望むことを理由に保険診療を拒否した場合は、保険が適用されず医療費を全額負担することとなるのか。

4 前記一の1に関し、適用対象外である場合、その理由について示すとともに、今後は保険を適用して性犯罪被害者が匿名で受診できる制度を構築すべきと考えるが、政府の認識を示されたい。

5 内閣総理大臣発各都道府県知事宛「性暴力・配偶者暴力被害者等支援交付金(性犯罪・性暴力被害者支援事業)の交付について」(令和三年三月三十一日府共第一九四号)によると、「やむを得ない事情により警察に相談をすることができなかったことによって「都道府県警察による医療費及びカウンセリング費用の公費負担制度」が適用されない被害者に対し、」とあり、都道府県警察に相談できず当該制度が適用されない性犯罪被害者が存在することが示されている。

 これに関し、都道府県警察へ相談した性犯罪被害者数及び公費負担額の近年の推移を示すとともに、性犯罪被害者が警察に相談できない、やむを得ない事情の具体的な例を示されたい。

 また、これらの状況を踏まえ、一人でも多くの性犯罪被害者が都道府県警察に相談することができるよう必要な環境を整備すべきと考えるが、そのための政府の具体的な取組について示されたい。

6 警察庁ホームページ「犯罪被害者等施策」では「医療機関から「犯罪被害については保険が利用できない」と言われた」との問いに対して「法律上、医療機関が保険診療を拒否することはできません。」と記述されている。このことを踏まえ、性犯罪被害者の受診に保険が適用されることについて、医療機関に対しさらなる普及啓発が必要と考えるが、政府の認識を示されたい。

二 内閣府「性暴力・配偶者暴力被害者等支援交付金」について

1 当該交付金の対象となる性暴力・配偶者暴力被害者等が医療機関を受診した場合は、保険適用の対象となるのか。

2 前記二の1に関し、適用対象である場合、保険の適用について性暴力・配偶者暴力被害者等以外の者が受診した場合と異なる点はあるか。

3 前記二の1に関し、適用対象である場合、性暴力・配偶者暴力被害者等が匿名で保険診療を受けることができるのか。また、性暴力・配偶者暴力被害者等が匿名を望むことを理由に保険診療を拒否した場合は、保険が適用されず医療費を全額負担することとなるのか。

4 前記二の1に関し、適用対象外である場合、その理由について示すとともに、今後は保険を適用して性暴力・配偶者暴力被害者等が匿名で受診できる制度を構築すべきと考えるが、政府の認識を示されたい。

5 医療費等公費負担事業について、国の予算額及び決算額、都道府県別の交付決定額の近年の推移を示されたい。

6 被害者相談支援運営・機能強化等事業の交付率が二分の一であるのに対して、医療費等公費負担事業の交付率は三分の一である理由及び同交付率を二分の一に引き上げる必要性及びその予算の確保について、政府の見解を示されたい。

7 当該交付金は国から都道府県に交付されるものであるが、性暴力・配偶者暴力被害者等個人に対して直接支給する等の補助の在り方を改善することにより、医療機関を受診する性暴力・配偶者暴力被害者等の窓口負担を軽減し、安心して継続的に的確な診療を受診できるようにすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 性犯罪及び性暴力・配偶者暴力は、夜間や人目の付かないところ、家庭内など周囲と連絡を取りにくい場所で発生し、直ちに被害者が救済を求めることが困難な場合や、周囲に知られることを恐れ、都道府県の区域を越えて遠隔地で支援を求める場合等が考えられる。

 これらの被害者に対する支援について、都道府県の区域を単位としたり、被害者が都道府県警察や「性暴力・配偶者暴力被害者等支援交付金(性犯罪・性暴力被害者支援事業)交付要綱」に規定する相談センターに相談に来ることを要件としたりすることで、迅速な医療救済が困難となる恐れもある。

 例えば、緊急避妊薬(アフターピル)は七十二時間以内の服用という時間的な制約もあり、行政区域や被害者からの相談の有無等にかかわらず、緊急の対応を要するこれらの被害者が経済的な負担等を気にすることなく直接医療機関を受診することができるよう必要な支援策を講ずるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 性犯罪・性暴力被害者等の救済に向け、警察庁では、都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「♯8103(ハートさん)」を、また内閣府では、最寄りの性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにつながる全国共通番号「#8891(はやくワンストップ)」を設けている。

1 「性犯罪・性暴力被害相談のための啓発カード」の裏面には、両方の番号が記載されているが、性犯罪・性暴力被害者等は、どのような被害についてどちらに相談すれば良いのか、それぞれの番号の特徴及び相違点と合わせて具体的に示されたい。

 また、この点について国民へのさらなる周知広報が必要であると考えるが、今後の政府の取組についても示されたい。

2 警察庁及び内閣府は、それぞれの番号に寄せられた被害相談に係る情報を共有しているのか。共有している場合、両者でより適切な対処方法を検討するなど、連携して対応しているのか。

3 国民の利便性の観点から、窓口となる番号を統一すべきと考えるが、政府の認識を示されたい。

  右質問する。