質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第五五号

障害のある労働者に対する労災認定基準に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年六月三日

舩後 靖彦


       参議院議長 山東 昭子 殿



   障害のある労働者に対する労災認定基準に関する質問主意書

 何らかの障害のある労働者は年々増え続けており、民間企業においては令和三年六月時点で五十九万七千七百八十六人に上り、十八年連続で過去最高を更新しました。障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律などの法整備も進んでいます。一方、雇用された後の労働環境などについては課題も多く、特に、働く障害者に対する労働災害(以下「労災」という。)への対応については、労働環境の整備が不十分だったり、遅れていたりするとの指摘もあります。障害のある労働者が安心して働けるためには、障害のある労働者に見合う労災対策が必要だという観点から、以下、質問いたします。

一 労災発生状況について、障害のある労働者がどのような労災にあったのかを把握し、その対策を図る必要があります。よって、被災労働者のうち障害者であるもの(精神障害のある労働者で、精神障害が悪化した場合に死亡、自死したものも含む)の件数、被災態様、被災原因を政府において調査すべきと考えますが、政府の見解をお示しください。

二 障害のある労働者の労災認定に当たっては、「当該障害を有する労働者集団」にとって発病の危険がある業務に関する負傷、疾病、傷害、死亡に支払われるべきであるという観点から、障害を有しない労働者の基準に照らすのではなく、障害を有する労働者を基準として業務の過重性が判断されるべきと考えますが、政府の見解をお示しください。

三 現在の認定基準について、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(令和三年九月十四日付け。基発〇九一四第一号)では、「基礎疾患を有する者についての考え方」として、「器質的心疾患(先天性心疾患、弁膜症、高血圧性心疾患、心筋症、心筋炎等)を有する場合についても、その病態が安定しており、直ちに重篤な状態に至るとは考えられない場合であって、業務による明らかな過重負荷によって自然経過を超えて著しく重篤な状態に至ったと認められる場合には、業務と発症との関連が認められるものであること」とされています。しかし、「基礎疾患を有する者」に対する認定については、病態の増悪が「急激」で「著しい」という要件は必要なく、最高裁判所が、平成十二年七月十七日最高裁判所第一小法廷判決(横浜南労基署・岩村支店長付運転手くも膜下出血事件及び西宮労基署・織田観光バス運転手高血圧性脳出血事件)や、平成十八年三月三日最高裁判所第二小法廷判決(地公災基金鹿児島県支部・教育委員会職員急性心筋梗塞死事件)で採っている、「自然経過を超えて有意に増悪させている」ことが確認されれば十分であるという「自然経過超過増悪説」に立って行われるべきと考えますが、政府の見解をお示しください。

  右質問する。