質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第四四号

毎年薬価改定の見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年五月六日

小西 洋之


       参議院議長 山東 昭子 殿



   毎年薬価改定の見直しに関する質問主意書

 平成二十八年十二月二十日に決定された「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、財務大臣、厚生労働大臣決定)では、「二年に一回行われている薬価調査に加え、その間の年においても、大手事業者等を対象に調査を行い、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」こととされた。また、平成三十年六月十五日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」では、「二〇二一年度における薬価改定の対象範囲について、この間の市場実勢価格の推移、薬価差の状況、医薬品卸・医療機関・薬局等の経営への影響等を把握した上で、二〇二〇年中にこれらを総合的に勘案して、決定する」こととされた。

 その後、令和二年に実施された薬価調査の結果等を受けて、令和三年四月に薬価の中間年改定が初めて行われたが、改定対象品目は全品目の約七割にも達し、製薬企業、医薬品卸業者、医療機関、薬局等に対して極めて大きな影響を及ぼすこととなった。

 令和二年一月以降、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が続く中、日本国内の医薬品製造及び研究開発能力の維持・向上が日本の安全保障上、極めて重要な意義を持つことが様々な場面でクローズアップされてきた。しかし、薬価改定による薬価の引下げは、各製薬企業の医薬品の製造及び研究開発能力を奪い、日本国内で医薬品の開発・製造・販売の全てにおいてそのモチベーションを著しく低下させ、創薬によるイノベーションを阻害しかねないとして、国会においても与野党問わず毎年薬価改定の見直しを求める意見が示されてきたところである。

 また、医療機関及び薬局においても薬価の頻繁な引下げは、在庫となっている医薬品の資産価値の切下げにつながるため、各薬局は経営上の観点から必要以上の在庫を持たないよう医薬品の購入を絞ることとなり、結果として患者に対する医薬品の安定的な提供を妨げかねない事態につながっているとも聞く。

 さらに、政府においては、患者負担の軽減や医療保険財政の改善に資するものとして後発医薬品の使用を促進し、令和五年度末までに全ての都道府県で八割以上の使用割合を目指すことにしているものと承知しているが、そもそも低価格の後発医薬品の継続的な薬価の引下げは、赤字品目を拡大し、著しく利益の薄い商品を増加させる等、各後発医薬品企業は医薬品製造及び供給体制の維持に極めて厳しい状況に追い込まれていると聞く。

 新型コロナウイルス感染症の流行が続く中、新薬の開発や患者に対する医薬品の確実な提供は、国民が安心して日々の暮らしを送る上で極めて重要であることが明らかとなったが、今後の毎年薬価改定が製薬企業や薬局等の経営に甚大な影響を与え、国民の生活に影響を及ぼす事態につながることが深く憂慮される。

 さらに、新型コロナ感染症の世界的な蔓延により、医薬品生産国でありながら、我が国が最も不得意とする原料医薬品の輸入は極めて不安定となり、加えて、昨今の石油製品の値上がりや円安が製薬各企業の経営を圧迫することは誰の目にも明らかである。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 毎年薬価改定による薬価の頻繁な引下げが日本の製薬企業の継続的な医薬品製造や研究・開発能力を奪い、政府が掲げる創薬によるイノベーションを阻害する可能性があると考えるが、政府の見解如何。また、毎年薬価改定が海外製薬企業から見た日本の医薬品市場の魅力を低下させ、新たなドラッグ・ラグを生み出すことにつながる可能性があると考えるが、政府の見解如何。

二 毎年薬価改定は、薬価改定前に必要以上の在庫を持つことを避けようとして医薬品を買い控える医療機関及び薬局を増加させることにつながり、結果として患者に対する医薬品の安定的な提供を妨げることにつながる可能性があると考えるが、政府の見解如何。

三 低薬価である後発医薬品に対する過度な薬価の引下げが、後発医薬品企業の製造・供給能力を阻害し、更には、後発医薬品企業間の過当競争につながり、コスト削減等の結果として一部の企業が法令違反を行う背景の一つになったと考えるが、政府の見解如何。

四 毎年薬価改定は、医薬品製造力を阻害し創薬によるイノベーションや医薬品の安定的な供給を著しく阻害するものであり、直ちに見直すべきであると考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。