第208回国会(常会)
質問第四〇号 柏崎刈羽原子力発電所に適用される粗度区分及び設計基準風速の考え方に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和四年四月二十一日 浜田 聡
参議院議長 山東 昭子 殿 柏崎刈羽原子力発電所に適用される粗度区分及び設計基準風速の考え方に関する質問主意書 柏崎市を約六十年前に襲った第二室戸台風は、柏崎市の記録(https://www.city.kashiwazaki.lg.jp/material/files/group/19/shiryouhenn-1.pdf)によると、瞬間最大風速五十二メートル毎秒に達している。また、昭和三十六年十月二十日付の「とよさか広報」(http://opac.niigatacitylib.jp/shisei/koho/kita/koho_toyosaka/1961/611020/40_1.pdf)によれば、現新潟市北区である旧豊栄町において、「阿賀野川の泰平橋附近で瞬間最大風速五十六メートルを記録」とある。昭和三十六年十月十日の衆議院災害対策特別委員会においても、島本虎三委員が、新潟県における最大風速を「四六・二メートルの暴風」と報告している。これらを踏まえると、新潟県における第二室戸台風の瞬間最大風速は少なくとも五十二メートル毎秒であり、最大風速は四十六・二メートル毎秒と考えることが適当であろう。 ところが、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東電」という。)作成の「柏崎刈羽原子力発電所六号及び七号炉 設計基準対象施設について」(平成二十九年一月)によると、現行の柏崎刈羽原子力発電所(以下「柏崎刈羽原発」という。)において適用されている風荷重を算出する際において採用されている台風を想定した最大瞬間風速は四十五・五メートル毎秒速、最大風速は四十・一メートル毎秒であり、気象庁の観測記録を基にしている。これでは、最大風速を四十六・二メートル毎秒で計算した場合と比して、約一・三倍の風荷重を軽く見積もることになってしまう。 また、柏崎刈羽原発において適用されている、風荷重を算出する際の粗度区分においても、建築基準法関係法令・告示をそのまま採用し、粗度区分Ⅱとなっている。しかし、原発周辺の土地が遮るものが何もない海岸線近辺のロケーションであることを鑑みれば、特定行政庁が将来、粗度区分Ⅰを適用する可能性は十分にあろう。また、粗度区分Ⅰが適用され、最大風速を四十六・二メートル毎秒で計算した場合、現行と比して約一・五倍程度の風荷重を見込む必要がある。 右を踏まえて、以下質問する。 一 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和四十九年五月一日自治省告示第九十九号)第四条の十九によって、高さ十五メートルの地点において風速六十三メートルに耐えうる設計が求められていることについて 1 特定屋外貯蔵タンクにおいて、今でも高さ十五メートルの地点において風速六十三メートルに耐えうる設計を求める理由如何。 2 かつては発電用原子炉施設建設時の建築基準法施行令第八十七条にて、発電用原子炉施設の外部事象防護施設以外の設備においても、特定屋外貯蔵タンクと同様の基準を求めていたが、なぜこの基準を緩和したのか。特定屋外貯蔵タンクのように、個別に規制緩和しないとすることはできなかったのか。政府の見解如何。 二 特定行政庁である柏崎市長が、柏崎刈羽原発の住所地に対して、規則で粗度区分Ⅰの区域と設定することは可能であり、この場合、東電は、風荷重の再計算を強いられることとなる。 政府は、なぜ柏崎市長が粗度区分Ⅱをそのまま維持することを前提にした基準を策定し、風荷重の再計算による原発再稼働が遅れるリスクを負うこととしたのか。最初から粗度区分Ⅰを適用すればよいと考えるが、政府の見解如何。 三 風荷重の算出に当たり用いる観測記録等について 1 気象庁の観測記録のみを用いて、柏崎刈羽原発の風荷重を算出することに対し、政府の見解如何。 2 前述の島本虎三委員の報告にも残っている以上、柏崎刈羽原発の台風の風荷重を算出する際の最大風速は、四十六・二メートル毎秒とすべきではないか。政府の見解如何。 3 前述の柏崎市の記録や「とよさか広報」の記述を無視して基準風速を設定することで、地元の方々に対し余計な心配を与えることは想像に難くない。政府は、仮に瞬間最大風速五十六メートルの台風が襲来したとしても、外部事象防護施設のうち建屋等及びその他安全施設はこの風荷重に耐えることを強く周知すべきではないか。政府の見解如何。 四 外部事象防護施設のうち、建屋等及びその他安全施設にかかる風荷重が設計用地震力を上回ることはないが、たとえ外部事象防護施設以外の設備であったとしても、その設備が台風によって破損すれば原子力発電所の運転に支障が出ることは間違いない。現実論を考えれば、再稼働後、速やかに最大風速四十六・二メートル毎秒かつ粗度区分Ⅰで風荷重を再計算し、再計算された風荷重に耐えない設備があれば、都度補強するべきと考えるが、政府の見解如何。 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。 右質問する。 |