質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第三〇号

日本の経済制裁によって影響を受けるロシア人の人権に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年三月十七日

羽田 次郎


       参議院議長 山東 昭子 殿



   日本の経済制裁によって影響を受けるロシア人の人権に関する質問主意書

 ロシアによるウクライナ侵略に対し、日本政府は、ロシアの暴挙には高い代償が伴うことを示していくとの考えで、強い経済制裁に踏み込んでいる。しかし、経済制裁は、子ども、高齢者、病人、低所得者、失業者など、社会的な弱者により大きなダメージを与える。通貨ルーブルの相場も大暴落しており、ロシア国内でも社会的弱者に大きな苦しみを強いているのは明白である。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 本年三月八日の参議院外交防衛委員会において、私が、「日本政府として、戦争を止めるためには、ロシアの一般国民に苦しみを与えることはやむを得ないという判断なのか。「人間の安全保障」を日本の外交の柱に据えるとした方針との整合性はどのように考えているのか。」、との旨質したところ、林芳正外務大臣は、「ロシアのウクライナ侵略は力による一方的な現状変更であり、国際秩序を揺るがす行為。秩序の根幹を守り抜くには、国際社会は結束して毅然と行動しなくてはならない。日本国民だけでなく、ロシア国民にも様々な影響が及ぶことは避けられない。大きな目的のため引き続き、G7をはじめとする国際社会と連携して適切に対応する」との旨答弁している。林大臣の答弁は、戦争を止めるという大きな目的を達成するため、ロシア人の生活、とりわけロシア国内におけるもっとも弱い立場の人々に影響が及ぶことに配慮をする余地はなく、それらの方々の人権侵害については関知しない、という姿勢であると受け取らざるを得ないが、政府の認識を改めて確認したい。また、戦争こそ最大の人権侵害であり、「人間の安全保障」を日本外交の柱に据える方針は、戦争を止める目的の前には棚上げするという解釈でよいか、政府の見解を示されたい。

二 同日の同委員会において、私が、「在日ウクライナ人やロシア人の話を聞いたところ、SNSではロシア人に対する差別的な言葉が増え、大きな不安を感じている。その一方で、在留ロシア人のSNSのサイトの一部には、日本に対する反感や、過激な言葉も散見される。もちろん、ウクライナ侵攻に反対しているロシア人も多いが、独裁的な指導者に反対の声を上げる恐怖と、ロシアを敵視する国際世論に反発しているロシア国民の声もあり、不用意に声があげられないと聞いている。さらに、ロシア国内では言論弾圧やメディア規制が始まっており、既に罰則付きの法制化もされている。また、早期にロシア軍による攻撃を終結させるには、ロシア国民が声を上げることも重要であり、善良なロシア国民に対しては「あなた方が敵なわけではない」というメッセージを送り、ロシア国民がロシア政府に反対の意思を示すことを、国際社会として支持する姿勢を示すことも必要だと考える。従って、日本政府として、特に日本国内に在留するロシア人に対する発信や取組はあるか。」との旨質したところ、外務省欧州局長から、「委員の指摘も踏まえ、日本国内のロシア人向けに何らかの発信をすることを検討したい。ロシア人一般に対するヘイトスピーチがSNSなどで拡散していることは憂慮しており、日本国民に対しても日本に居住する一般のロシア人に、ロシア人である理由だけで排斥することは控え、冷静に対応するように呼びかけたい。」との旨答弁があった。

 答弁を踏まえて、日本国内のロシア人にはどのような手段で、どのように発信し、どのような反応があったのか、具体的に明らかにされたい。また、日本国民に対しては、どのような手段で、どのような呼びかけを行ったのか、具体的に明らかにされたい。

  右質問する。